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ロボティクスの「ChatGPTモーメント」は来るのか——Bessemer VPが語る2026年の6大予測

2025年末から2026年にかけて、ロボティクス業界への関心が急速に高まっている。毎週のように新たな資金調達ニュースが飛び込み、「これはバブルではないか」と疑問を抱く投資家も少なくない。

こうした状況の中、米大手ベンチャーキャピタルのBessemer Venture Partners(以下、BVP)は「Robotics Day」と題したイベントで、2026年に向けた6つの予測を発表した。Anthropic、Waymoなどへの投資実績を持つ同社のパートナーたちが語る内容は、足元の熱狂を冷静に整理しつつも、長期的な成長への確信に満ちたものだった。本稿ではその要点を整理し、投資家・ビジネスマンが押さえるべきポイントを解説する。


1. ロボティクスは今「GPT-2.5の瞬間」にある


1-1. LLMとのアナロジー

BVPは、現在のロボティクスを「GPT-2.5モーメント」と表現した。生成AIの世界でいえば、GPT-2から3への移行期——すなわち、モデルの能力が急速に向上しつつも、実用展開にはまだギャップが残っている段階だ。

Physical Intelligence(π)が公開したキッチン作業ロボットのデモは、「1年前には不可能と思われていた」水準のものだ。しかし、BVPは、「ラボの外に出ることが依然として難しい」と率直に認める。汎用モデルが、家庭や多様な現場で実際に動くようになるには、2026年中でも難しいとの見方を示している。

1-2. スケーリング則の萌芽

一方で、明るい兆しもある。PIやNVIDIAの「EgoScale」論文に代表されるように、より多くのエゴセントリックデータ(一人称視点データ)や遠隔操作データ、多様なデータと計算資源を組み合わせることで、スケーリング則の初期的な証拠が出てきている。

重要なのは、実世界データだけがスケールアップの手段ではないという点だ。ワールドモデルやシミュレーションデータの活用により、資本力のある企業だけでなく、新興スタートアップも競争に参加できる土台が生まれつつある。BVPのポートフォリオ企業であるWaymoは、ワールドモデルを用いて自動運転の品質を向上させた実績があり、同様のアプローチがロボティクスにも広がると予測される。

2. タレント市場の集中と「勝者総取り」の傾向


2-1. 人材の希少性

BVPが行った内部調査によれば、過去5年に設立され3000万ドル以上を調達した米ロボティクス企業の創業者のうち、半数以上がPhDを持ち、半数がわずか4校の出身者であることが判明した。AIロボティクスの人材市場は極めて集中している。

2-2. パワーロウの加速

この人材の希少性は、資本の集中を促す。BVPは、「ソフトウェアの時代に見られたパワーロウ(少数の勝者が市場を独占する傾向)が、ロボティクスではさらに顕著になる」と予測する。優秀な人材と資本が少数の企業に集まり、その差は時間とともに広がる可能性が高い。

3. ファンデーションモデルだけでなく「垂直統合」に価値が生まれる


BVPは、AnthropicやWaymo、Perceptronといったファンデーションモデル企業への投資家でもあるが、それだけでは不十分と見ている。

ラボで生まれたモデルを現実の環境で機能させるには、以下の要素が不可欠だ。

  • 特化型ハードウェアとエンドエフェクター(把持装置など)

  • データフライホイールの確立

  • 展開ロジスティクスの整備

これらの領域には大きな参入障壁(Moat)が生まれやすく、ファンデーションモデルを実装するバーティカル企業が大きな価値を生み出すと同社は考えている。ヘルスケア・ライフサイエンス、産業用ロボティクス、インフラなど複数の隣接領域にも注目している。

4. 防衛分野が最初の大型出口(イグジット)になる


4-1. 地政学的な追い風

BVPは、「今後2〜5年で、ロボティクス分野最初の大型成果は防衛領域から生まれる」と予測する。レーダー、GPS、インターネットといった技術が軍事ニーズから生まれたように、現代のロボティクスも防衛需要が技術革新を加速させている。

4-2. バリュエーションプレミアム

データが示すように、防衛系ロボティクス企業は、非防衛系の同業他社と比較して、各ラウンドで継続的にバリュエーションのプレミアムを獲得している。米国と中国がこの分野を「存在をかけた競争」と捉え、民間セクターへの支援を強化していることが背景にある。

5. 「バブル」ではなく「資金不足」——市場規模の再評価


5-1. ソフトウェアとの比較

毎週のように大型調達が発表されるロボティクス業界。「バブルではないか」という声に対し、BVPは真逆の見解を示す。

過去5年間、米国で3000万ドル以上を調達したロボティクス企業はわずか42社。同期間のソフトウェア企業と比べると、18倍の差がある。

5-2. 物理労働市場の規模

さらに、決定的な視点として、「世界の物理労働への支出総額はソフトウェアへの支出の30倍」という数字を挙げた。この市場規模を踏まえると、現在のロボティクスへの投資額はむしろ過小であり、資金はさらに流入すべきという論理だ。

6. 10年で100〜1000倍という成長シナリオ


BVPは、「過去10年でロボットの数は世界で約3倍になった。今後10年で50倍という予測も出ているが、それは過小評価だ」と述べる。同社の見立てでは、100倍、あるいは1000倍の成長も十分あり得るとしている。

もちろんこれは楽観的なシナリオであり、技術的・規制的な障壁が残ることは同社自身も認識している。しかし、その前提として、人材・技術・市場の三つの追い風が同時に吹いているという判断がある。

まとめ


BVPの2026年予測を整理すると、以下の6点に集約される。

  1. ロボティクスは「GPT-2.5モーメント」——ラボの外への展開はまだ途上

  2. スケーリング則の萌芽——資本力とデータ戦略が競争優位を決める

  3. 人材集中によるパワーロウの加速

  4. ファンデーションモデルだけでなく垂直統合に大きな価値

  5. 防衛領域が最初の大型イグジットになる可能性

  6. 「バブル」ではなく「資金不足」——物理労働市場の規模を踏まえた再評価

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