2026.02.23 注目の海外スタートアップの資金調達3選
テクノロジー株が軟調な市場環境の中でも、インフラ・ヘルスケア領域への投資は着実に続いている。2026年2月23日、性格の異なる3社が同日に資金調達を発表した。宇宙通信のネットワーク制御を担うAalyria、都市インフラをAIで知能化するUbicquia、そして在宅小児療法のアクセス格差に取り組むCoral Care。それぞれの事業モデルと市場背景を整理する。
1. Aalyria——宇宙通信の「制御層」を担うGoogle出身スタートアップ
1-1. 調達概要と会社概要
カリフォルニア州リバモアに本社を置くAalyriaは、シリーズBで1億ドルの調達を完了し、評価額は13億ドルに達した。ラウンドはBattery VenturesとJ2 Venturesが主導し、DYNEらが参加した。
Aalyriaは、2022年、GoogleのプロジェクトLoon(高高度気球によるインターネット提供の試み)で開発されたネットワーク制御技術を引き継ぐ形でAlphabetからスピンアウトした。現在も GoogleはAalyria株を保有している。
1-2. 2つのコア技術
Aalyriaのプロダクトは大きく2つに分かれる。
ソフトウェア側は「Spacetime」と呼ばれるネットワーク制御プラットフォームだ。低軌道衛星を経由するデータ通信では、複数の衛星がリレー式に信号を中継する。Spacetimeはこのプロセスをリアルタイムで最適化・制御するソフトウェアだ。
ハードウェア側は「Tightbeam」という光通信端末だ。Tightbeamは最大100Gbpsのデータ転送速度を持ち、最大約200キロメートルの距離をカバーする。船舶・航空機などに搭載でき、光ファイバーに匹敵する通信速度を実現する。
1-3. 市場機会と競争環境
Battery VenturesのMichael Brown氏は「SpaceXのStarlinkが低軌道衛星市場を商業化したことで、他の衛星事業者は競争上の危機感を強めている。各社はStarlinkの代替を求めているが、複数の衛星コンステレーション間でトラフィックをルーティングすることは従来ほぼ不可能だった——Aalyriaはその課題を解く」と述べた。
CEOのChris Taylor氏はこう語る。「鉄道・通信・インターネットといった過去のあらゆるインフラ転換には、複雑性を規模でコントロールする『制御プレーン』が必要だった。宇宙も同じだ。私たちは数千の独立した衛星・航空機・船舶・光ファイバー・地上局をつなぐ普遍的な制御プレーンになる」。
今回の調達資金は、Spacetimeの商業展開加速と人員拡充(今後1年で現在の約90人から3割以上増)に充てられる。米空軍研究所・NASA・欧州宇宙機関・防衛省のDIUなど、官民を横断するパートナーシップはすでに確立されている。
2. Ubicquia——既存インフラを「知能化」するAIプラットフォーム
2-1. 調達概要と会社概要
フロリダ州フォートローダーデール拠点のUbicquiaは、シリーズDで1億600万ドルの調達を完了した。ラウンドは67 CapitalとMarunouchi Innovation Partners(丸の内イノベーションパートナーズ)が主導し、Hamilton Lane、ClearSky、GMS、Sercommが参加した。
2-2. 「新しく作らずに、賢くする」アプローチ
Ubicquiaのビジネスモデルの核心は、既存インフラへの後付けによる知能化だ。同社のプラットフォームは1日あたり35億件以上のデータセットを処理し、スマート照明・グリッド監視・公共安全の分野でリアルタイムの洞察を提供する。世界4億5000万基の街灯、5億個の変圧器、10億本の電柱に対応可能であり、すでに1,000超の電力会社・自治体に導入されている。
CEOのIan Aaron氏は「大手電力会社・自治体・企業のAI駆動型スマートグリッド・照明・安全ソリューションは実証済みだ。この投資でさらなるスケールが可能になる」と述べた。
2-3. 投資家が評価した背景
67 CapitalのCort Ahl氏は、「Ubicquiaは既存の都市・公共インフラをAI対応ネットワークに転換し、即座に運用・財務上の価値をもたらす能力で際立っている」と語る。
丸の内イノベーションパートナーズのIchiro Miyoshi氏は「街灯や変圧器などのレガシー資産のデジタル化は、コスト効率が高くグリッド強化に直結する。エネルギー転換を支援するという私たちのミッションと完全に合致している」と述べた。
調達資金はAI機能の開発強化、国内外での直販体制の拡充、インフラ・アズ・ア・サービスモデルの拡大に充てられる。
3. Coral Care——創業者の原体験から生まれた小児療法プラットフォーム
3-1. 調達概要と会社概要
ニューヨーク拠点のCoral Careは、シリーズAで1,300万ドルの調達を完了した。Haymaker Venturesが主導し、FCA Ventures、Peterson Ventures、Alleycorp、Reach Capital、Jefferson River Capital、Greymatter Capital、Mother Ventures、Charge Venturesが参加した。
2023年にJen Wirt氏が創業したCoral Careは、彼女自身が娘のために療法サービスを探す中で直面した、長い待機リスト・複雑な保険手続き・ネットワーク内プロバイダーの不足という課題から生まれた。
3-2. 在宅療法の構造的優位性
Coral Careが対象とする子どもの多くは自閉症やADHD診断を持つ。オンライン療法はスケールしやすい一方で、じっとしていられない幼児や自己調整に課題のある子どもには画面越しでは限界があるとWirt氏は説明する。「在宅ケアはローカル密度とペイヤーインフラが必要で構築が難しいモデルだが、この対象集団と専門性においては、よりよいエンゲージメント・持続的な改善・成果達成への道筋が生まれると確信している」。
3-3. 双方向モデルと拡大計画
Coral Careの独自ソフトウェアは、臨床家の管理業務を週最大15時間削減し、直接ケアに集中できる環境を提供している。ケア継続率も高く、75%以上の家族が4ヶ月以上サービスを継続している。
今回の調達により、ダラス・ヒューストン・シカゴ・フィラデルフィア・ピッツバーグへの新規展開が加速する。現在は400人超の有資格セラピストネットワークを擁し、マサチューセッツ・ニューハンプシャー・テキサス・イリノイ・ペンシルバニアで保険適用の在宅療法を提供している。
