「顧客起点×AI投資」で成長を設計する──ServiceNow CFOの実戦リーダーシップ
ServiceNowのPresident & CFO、ジーナ・マスタントゥオーノは、会計士からグローバルCFO、そして、“AI時代の成長エンジン”を担う経営者へ──カーブを描くキャリアでスケールと変革を両立してきた。彼女の発言と実績から、「学習志向のリーダーシップ」「計算されたリスクテイク」「AI投資の意思決定」「チームづくりの新機軸」を読み解く。
1. 「学び続ける」カーブキャリアの設計図
監査(EY)からRevlon、Ingram Microを経てServiceNowへ。本人は“はしごではなくカーブの旅”と表現し、専門性に安住せずに職能の幅を広げたことが転機になったという。CFO Diveのインタビューでも、2010年代後半にIngramから2020年にServiceNowのCFOへ就任した経緯が語られている。
「ベストタレントを採れ。2〜3年後に自分の職務を担える人を」──この採用原則を貫くことで、自身は次の学びへ進め、組織は層を厚くできる。この姿勢は近年のFortune企画「Next to Lead」でも取り上げられている。
2. リスクは、“無謀”ではなく“設計”する
マスタントゥオーノは、産業や職務の“越境”を繰り返してきたが、いずれも「自分のツールボックスを埋める」ための計算に基づく挑戦だ。Revlonで国際CFO、Ingramでは、極薄マージン×巨大バランスシートの経営作法を体得──この“スケールの学習”が、後のServiceNowでの意思決定の基盤になったと語る(Fortuneの対談要旨)。
3. スケールを操る:売上100億ドル超と時価総額の跳躍
ServiceNowは、2024年に年商100億ドルを超え(前年比+22%)、“数少ないソフトウェア企業”の仲間入りを果たした。また、2023年に初のFortune 500入りを果たし、2025年も3年連続でランクインしている。
マスタントゥオーノは、「顧客価値の徹底追求」と「高収益の継続」を成長のドライバーに挙げる。Fortuneの対談でも、売上成長率とマージンの両立を背景に“時価総額2000億ドル超”規模へ躍進した軌跡を語っている。
4. 顧客起点を“制度化”するマネジメント
「ファイナンス、法務、HRに至るまで全員が定期的に顧客と会う」──顧客接点を組織作法に落とし込む。これにより、単なる“数値の報告”ではなく「数値が示す因果」を全社で共有し、次の四半期・翌年・3〜5年の打ち手へ翻訳する。対外発言でも“現場接点×分析”の往復運動が強調されている。
5. CFOが担うAI投資:優先順位とROIの再定義
AIは同社の成長戦略の中心にある。マスタントゥオーノは、「良いアイデアに“ノー”と言って、偉大なアイデアに“イエス”と言う」優先順位付けを強調し、先行投資と経営規律の両立をCFOの役割と定義する。実際にServiceNowは生成AI領域で大型M&Aや出資を進め、たとえば2025年にはAIアシスタントのMoveworks買収(28.5億ドル)を発表、AI機能基盤の強化を加速している。
一方で、外部エコシステムへの参画も進め、Anthropicの資金調達ラウンドへの参加を彼女自身が公表している(LinkedIn)。
6. “現代のCFO”に必要な素養:テック流暢性と人間力
彼女は、「全ての企業はテック企業になった」と言い切り、CFOを含む全リーダーに技術リテラシーを求める。同時に、AIが定型を置き換えるほど、洞察・創造性・共感といった人間的能力が差別化要因になると説く(Fortune対談)。
「AIは予測の一部で人間より優れる。だからこそ、人は“つなぐ力”で勝つ」──彼女が強調するのは、データから戦略へ“ドットを結ぶ”総合知だ。
結語
マスタントゥオーノの実践は、CFOを「数字の番人」から「成長の設計者」へと拡張する道筋を示す。学習志向・計算されたリスク・AIの選択と集中・人間力の強化──この4点を同時に回せる者が、AI時代の企業価値を押し上げる“次のリーダー”になる。
