【4/4 - 4/10】注目の海外スタートアップの大型資金調達
2026年4月4〜10日の米国スタートアップ資金調達ランキングには、10億ドルの単一メガラウンドこそなかったものの、半導体・航空宇宙・バイオテック・AIインフラ・フィンテック・医療機器・ロンジェビティという幅広い産業に資本が分散した。最大案件は、RISC-Vという開放標準でArmに挑む半導体設計スタートアップSiFiveの4億ドルで、CEOが「IPO前最後のラウンド」と明言したことで注目を集めた。
1. SiFive——4億ドル・「IPO前最終調達」と明言するRISC-V半導体設計
1-1. Armへの挑戦という構造
サンマテオ(カリフォルニア)拠点のSiFiveは、Atreides Managementが主導する4億ドルのSeries Gを完了した。SiFiveが手がけるのはチップの「設計図(ブループリント)」だ。Alphabetをはじめとする企業が社内チップを開発する際に使うアーキテクチャを、RISC-Vというオープン標準をベースに提供する。
RISC-Vは、Armが維持する独自規格(プロプライエタリ)とは異なり、誰でも使えるオープンソース的な命令セットアーキテクチャ(ISA)だ。Armは、スマートフォンからデータセンターまでのチップ設計で圧倒的なシェアを持つが、ライセンス料の高さや設計の自由度の制約から、Google・Alibaba・Western Digitalなどが自社チップ開発にRISC-Vを採用し始めている。AIアクセラレータやエッジデバイスでの採用も広がっており、SiFiveはこの流れの中心にいる。
1-2. CEO「IPO前最終ラウンド」発言
CEOのPatrick Little氏は、Reutersに対し、今回の調達を「IPO前最後のラウンドになる見通し」と述べた。具体的な上場時期は明言しなかったが、SiFiveのIPO計画が具体化しつつあることを示唆する発言だ。SpaceX・Anthropicのような超大型IPOが予定される2026年、SiFiveが、「半導体設計×RISC-V×AI需要」という文脈でどのタイミングで上場するかは、半導体セクターへの資本流入に影響を与えうる。
2. Hermeus——評価額10億ドル・「世界最速の無人防衛機」を目指す航空宇宙スタートアップ
2-1. Khosla Venturesがリード・RTXも参加
エルセグンド(カリフォルニア)拠点のHermeusは、Khosla Ventures主導で2億ドルのエクイティ調達に加え、1.5億ドルの負債調達も実施し、評価額は10億ドルに達した。他の投資家には、Socium Ventures・RTX Ventures・Karman Ventures・Founders Fund・IQT・Cox Enterprisesが名を連ねる。
RTX Venturesは、Raytheon TechnologiesのCVC部門で、防衛・航空宇宙の主要コングロマリットが直接投資したことは、Hermeusの技術への産業界の信頼を示す。
2-2. 「世界最速の無人防衛機」という差別化
Hermeusが開発するのは、「世界最速の無人防衛機」とされる自律軍用機だ。詳細な技術仕様は公開されていないが、超音速または極超音速(ハイパーソニック)域での飛行能力を目指していると見られる。Shield AI・Saronic・Performance Drone Worksと同様に、「有人機に代わる自律システム」への需要が軍事予算の中で高まっている流れを受けている。
3. バイオテック二題——がん治療のSidewinder・精密医療のStipple Bio
3-1. Sidewinder Therapeutics(1.37億ドル)——先週詳報の続き
Sidewinderについては先週の資金調達まとめで詳細を紹介した。Frazier Life SciencesとNovartis Venture Fundが共同リードする1.37億ドルのSeries Bで、累計調達額は1.62億ドル。次世代バイスペシフィックADC(抗体薬物複合体)を開発しており、2026年末のIND申請に向けて臨床開発を進める。固形がん(肺がん・大腸がん・頭頸部がん)を主な対象とする。
3-2. Stipple Bio(1億ドル)——a16z Bio+Healthが主導する精密がん治療
ケンブリッジ(マサチューセッツ)拠点のStipple Bioは、Andreessen Horowitz(a16z)のBio+Health部門・Nextech Invest・RA Capital Managementが共同リードする1億ドルのSeries Aを完了した。Stippleの目標はがん細胞を選択的に攻撃しながら正常組織へのダメージを最小化する「高度に標的化されたがん治療」の開発だ。
Sidewinder(ADC)とStipple Bio(精密がん治療)が同週に大型調達を実施したことは、「がん治療の精度向上」という市場への投資家の関心の高さを示している。従来の化学療法が「がん細胞も正常細胞も傷つける」という副作用の大きさから、ADC・精密医療・CAR-Tなど選択性の高いモダリティへの移行が加速している。
4. Aria Networks・Starfish Space——AIインフラと宇宙サービシング
4-1. Aria Networks(1.25億ドル)——データセンター最適化AIのSeries A
パロアルト拠点のAria Networksは、Sutter Hill Ventures主導の1.25億ドルSeries Aを完了した。データセンターのパフォーマンスを監視・分析・最適化するAI駆動のネットワーキングプラットフォームを開発している。
AI関連のデータセンター需要が急増する中、その「インフラ効率化」を担うレイヤーへの投資もまた活発だ。ThinkLabs AI(電力グリッドAI)・Dash0(エージェント観測AI)・Aria Networks(データセンター最適化AI)という三社は、「AIが生み出す過負荷を管理するAI」という逆説的な市場ニーズを体現している。
4-2. Starfish Space(1.117億ドル)——衛星の「宇宙救急サービス」
シアトル拠点のStarfish Spaceは、Activate Capital Partners・Point72 Ventures・Shield Capitalが主導する1.117億ドルのSeries Bを完了した。軌道上の衛星にドッキングして整備・移動を行う自律宇宙機を開発している。役割を終えた廃衛星やスペースデブリの除去も担う。
Shield Capitalは、Shield AI(先週20億ドル調達)の関連投資家であり、防衛・宇宙の両セクターにまたがって積極的な投資を続けている。衛星サービシング市場はAstroscale(日本)・ClearSpace(欧州)なども参入しており、軌道上資産の維持・管理というニーズが商業・軍事双方で高まっている。
5. Chapter・Modus・Endovascular Engineering・Life Biosciences——4社の概要
5-1. Chapter(1億ドル)——メディケア選択支援プラットフォーム
Generation Investment ManagementがリードするSeries Eで1億ドルを調達したChapterは、シニア向けの医療保険(メディケア)ナビゲーションプラットフォームだ。XYZ Venture Capital・Maverick Ventures・8VCも参加した。米国の高齢化とメディケア加入者数の増加を背景に、保険選択の複雑さを解消するアドバイザリーサービスへのニーズが高まっている。
5-2. Modus(8,500万ドル)——CPA事務所×AIの会計監査プラットフォーム
フィラデルフィアのModusは、Lightspeed Venture Partners主導のシード+Series Aで8,500万ドルを調達した。CPA事務所を買収し、AIによる監査ツールで高品質な監査を提供するという「テックイネーブルド・ロールアップ」モデルを採る。Comma CapitalとYC元代表のGarry Tan氏も参加した。
5-3. Endovascular Engineering(8,000万ドル)——静脈血栓塞栓症デバイス
メンロパークのE2は、Gilde Healthcare・NorwestがリードするSeries Cで8,000万ドルを調達した。2025年12月にFDA承認を取得した静脈血栓塞栓症(VTE)治療デバイス「Hēlo」を持つ。承認直後の成長資金調達として典型的なパターンだ。
5-4. Life Biosciences(8,000万ドル)——「老化細胞を若返らせる」ER-100のヒト試験へ
ボストンのLife Biosciencesは、Series Dで8,000万ドルを調達し、「細胞若返り療法」ER-100のヒト試験を進める。老化した損傷細胞を若い状態に戻すことを目指す「細胞リプログラミング」と呼ばれるアプローチで、Altos Labs・BioAge・Retro Biosciences(Sam Altman氏が出資)などとともにロンジェビティ(長寿命化)医療の最前線にいる。投資家は非開示だが、過去にはLongevitytech.fund・Alpha Wave Ventures等が出資している。
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