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統計検定2級解説講座 第3回:散布図と相関係数

◆ このテーマが2級で問われる理由

ここまでは1つの変数を見てきましたが、実務でも試験でも「2つの変数の関係」を扱う場面の方が多いくらいです。今回学ぶ相関係数は便利な指標である一方、使い方を誤ると簡単に見誤る指標でもあります。数式の使い方と同じくらい、「何を測れて、何を測れないか」を正確に理解することが重要です。

◆ 散布図:2つの変数の関係を目で見る

2つの変数のデータを、横軸・縦軸にそれぞれ取って点を打ったグラフが散布図です。点の並び方から、次のようなことが読み取れます。

・右上がりに点が並ぶ → 一方が増えるともう一方も増える「正の相関」
・右下がりに点が並ぶ → 一方が増えるともう一方は減る「負の相関」
・点がまとまりなく散らばっている → 目立った関係は見えない
・点が直線に近い形で並ぶほど → 関係は強い
・データの集団から離れた点(外れ値)がないか

このあと相関係数という数値を計算しますが、実務でも試験でも、数値だけを見て判断せず、先に散布図で全体の形を確認する習慣をつけてください。理由は後半で説明します。

◆ 相関係数:関係の強さを数値にする

共分散:2つの変数がどれくらい同じ方向に動くかを表す指標が共分散です。
共分散 = Σ(x−x̄)(y−ȳ) / n
xとyがともに平均より大きい(またはともに小さい)ペアが多いと共分散はプラスに、逆方向に動くペアが多いとマイナスになります。

相関係数 :共分散はxとyの単位に依存してしまう(cmとkgのデータなら、数値の大きさが単位の選び方で変わってしまいます)ため、単位に依存しない指標にしたのが相関係数です。
相関係数 r = 共分散 / (xの標準偏差 × yの標準偏差)

これは実は、第2回で学んだ標準化と直接つながっています。xとyをそれぞれ標準化してから掛け合わせ、その平均を取ったものが相関係数です。標準化という考え方を知っていると、相関係数の意味もつかみやすくなります。

相関係数は必ず−1から+1の範囲に収まり、
・+1に近いほど強い正の相関
・−1に近いほど強い負の相関
・0に近いほど直線的な関係が弱い と解釈します。

目安として|r|が0.7以上を強い相関、0.4未満を弱い相関とする教科書もありますが、これは分野によって感覚が異なる、あくまで慣習的な目安である点には注意してください。

◆ 具体例で確認

5人の学習時間(時間)とテストの点数の関係を見てみます。

学習時間(x):1,2,3,4,5
テストの点数(y):50,55,65,70,85
x̄=3、ȳ=65
偏差の積:(−2)(−15)=30、(−1)(−10)=10、(0)(0)=0、
(1)(5)=5、(2)(20)=40  合計:85

Σ(x−x̄)²=4+1+0+1+4=10
Σ(y−ȳ)²=225+100+0+25+400=750

相関係数 r=85/√(10×750)=85/√7500≈0.98

非常に強い正の相関があり、学習時間が長いほどテストの点数も高い傾向がはっきり出ていることがわかります。

◆ 相関係数を読むときに外せない注意点

ここからが今回、最も重要な部分です。

①相関は因果関係を意味しない
「学習時間とテストの点数に強い相関がある」ことは、「学習時間を増やせば点数が上がる」という因果関係を証明するものではありません。両方に影響を与える別の要因(この例なら本人のやる気など)が背後にある可能性は常に残ります。相関係数はあくまで「一緒に動く傾向があるかどうか」を示すだけで、原因と結果の向きまでは教えてくれません。

②相関係数は「直線的な関係」しか測れない
相関係数が0に近くても、「関係がない」とは限りません。たとえば、xを−2,−1,0,1,2、yをxの2乗(4,1,0,1,4)とすると、xとyには「yはxの2乗」というはっきりした関係があるのに、相関係数を計算するとちょうど0になります(左右対称な形のため、偏差の積がプラスとマイナスで打ち消し合います)。相関係数は放物線のような曲線的な関係を捉えられないという、大きな限界を持っています。

③相関係数は外れ値の影響を受けやすい
共分散も相関係数も、すべてのデータを使って計算するため、集団から大きく外れた1点があるだけで数値が大きく変わることがあります。極端な場合、ほとんど関係のないデータに1つだけ外れ値を加えるだけで、見かけ上強い相関が生まれることさえあります。

④同じ相関係数でも中身はまったく違うことがある
統計学には「アンスコムの数値例」という有名な例があります。平均・分散・相関係数・回帰直線の式まですべて同じになる4組のデータを、実際に散布図に描いてみると、まったく違う形が現れます。ある組はきれいな直線関係、別の組ははっきりした曲線関係、また別の組は1つの外れ値のせいで数値上だけ相関が高く見えている、というように中身は様々です。数値だけを見て「相関係数が高いから直線的な関係がある」と判断するのは危険だと教えてくれる、統計学ではよく知られた実例です。

先ほど散布図を先に確認する習慣をつけてほしいと書いたのは、これらの理由からです。相関係数は便利な要約統計量ですが、あくまで「要約」であり、元のデータの形を完全には表現できません。

◆ 今回の要点

・相関係数は共分散を標準偏差で割って単位をそろえたもので、−1から+1の値を取る
・相関係数はあくまで「直線的な関係の強さ」を測る指標であり、曲線的な関係や因果関係は教えてくれない
・外れ値1つで数値が大きく変わることがあるため、相関係数を見る前に必ず散布図で形を確認する

◆ 次回予告

第4回では、カテゴリカルデータの解析(クロス集計表)と、単回帰分析の基本的な考え方を扱います。

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