統計検定2級解説講座 第2回:標準化・変動係数・時系列データの処理
◆ このテーマが2級で問われる理由
第1回では、1つのデータ群の「中心」と「散らばり」を捉える指標を学びました。今回はその応用編です。単位や平均が違うデータどうしを比較する方法、そして時間の流れを持つデータ特有の処理を扱います。地味に見えて、実務でもそのまま使える内容です
◆ 標準化:単位の違うデータを比較できるようにする
なぜ必要か ?:たとえば「英語のテスト(平均60点、標準偏差10点)で80点を取った」のと「数学のテスト(平均70点、標準偏差20点)で85点を取った」のでは、どちらが「相対的によくできた」と言えるでしょうか。点数の単純比較ではわかりません。ここで使うのが標準化です。
計算方法: 標準化した値(z得点)は、次の式で求めます。
z = (x − x̄) / s (xは個々のデータ、x̄は平均、sは標準偏差)
平均からどれだけ標準偏差何個分離れているかを表す値になり、単位のない(無次元の)数値になります。標準化したデータは、平均0・標準偏差1という共通の物差しに揃うため、異なる試験・異なる集団のデータどうしでも比較できるようになります。
先ほどの例で計算すると、英語は z=(80−60)/10=2.0、数学は z=(85−70)/20=0.75。英語の80点の方が、集団の中では相対的に高い位置にあったとわかります。
【身近な例:偏差値】
模試などで見る「偏差値」は、このz得点を10倍して50を足したものです(偏差値=10z+50)。z=0(ちょうど平均)のとき偏差値がぴったり50になるように設計されています。先ほどの英語の例(z=2.0)なら偏差値70、数学の例(z=0.75)なら偏差値57.5です。標準化という考え方は、実は身近なところですでに使われています。
◆ 変動係数:平均の異なるデータの「ばらつきやすさ」を比較する
標準化が「個々のデータの位置」を比較する道具だったのに対し、変動係数は「データ全体のばらつきの大きさ」を、平均の異なる集団どうしで比較するための指標です。
計算方法 :
変動係数(CV)=標準偏差 / 平均値
で表すこともあります。
たとえば、あるクラスの身長(平均160cm、標準偏差5cm)と体重(平均50kg、標準偏差8kg)では、そのまま標準偏差の大きさ(5と8)を比べても意味がありません。単位も基準となる平均の大きさも違うためです。変動係数にすると、身長はCV=5/160≈0.031(3.1%)、体重はCV=8/50=0.16(16%)となり、体重の方が相対的にばらつきが大きいと比較できます。
【注意点】 変動係数は平均値で割るため、平均が0に近い、またはマイナスの値を取りうるデータには使えません(気温(摂氏)のように0が「何もない」ことを意味しないデータが典型例です)。身長・体重・金額のように、0が「何もない」ことを意味する比率尺度のデータで使う指標だと覚えておいてください。
◆ 時系列データの処理
移動平均 :毎月の売上のように時間とともに変化するデータは、短期的な変動(ノイズ)に埋もれて全体の傾向(トレンド)が見えにくいことがあります。これを見やすくする代表的な方法が移動平均です。一定の期間(たとえば3か月)ごとにデータを区切り、その区間の平均を順にずらしながら計算していくことで、短期的な増減をならして全体の流れを見やすくします。
成長率と幾何平均 :ある量が期間ごとに何倍になったかを表すのが成長率です。成長率は「前の期に対する比率」で決まるため、複数期間の平均的な成長率を求めるときは、通常の算術平均ではなく幾何平均を使います。
たとえば売上が1年目に1.5倍、2年目に2倍になったとします。2年間の平均成長率は(1.5+2)/2=1.75倍ではありません。実際の2年間の成長は1.5×2=3倍なので、これを2年間均等に割った平均成長率gは g²=3 を満たす必要があり、g=√3≈1.73倍が正しい平均です。掛け算的に増えていく量は、足し算的な平均(算術平均)ではなく、掛け算的な平均(幾何平均)で扱う、という原則を覚えておいてください。
◆ 具体例で確認
ある店の月間売上(万円)が、4月100、5月120、6月140、7月110、8月160だったとします。
3か月移動平均
・4〜6月の平均:(100+120+140)/3=120万円
・5〜7月の平均:(120+140+110)/3≈123.3万円
・6〜8月の平均:(140+110+160)/3≈136.7万円
月ごとの売上は上下していますが、移動平均を見ると120→123.3→136.7と、ゆるやかな増加傾向にあることが読み取れます。
◆ 今回の要点
・標準化(z得点)は、平均・標準偏差が異なる集団のデータを、共通の物差しで比較できるようにする。偏差値もこの考え方の応用
・変動係数は、平均の異なる集団の「ばらつきやすさ」を比較する指標で、比率尺度のデータにのみ使える
・時系列データは移動平均で短期的な変動をならし、複数期間の平均成長率は算術平均ではなく幾何平均で求める
◆ 次回予告
第3回では、2変数データの整理として、散布図と相関係数を扱います。
