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新型エルグランドを徹底解剖!アルファードと何が違う?——技術目線の本音トーク

新型エルグランド(E53)が話題である。デザインも技術も、ライバルと差別化を差別化を図った個性的な仕上がりだ。今回は、この新型エルグランドについて、デザインの狙いから第3世代e-POWER、電動4駆「e-4ORCE」、アクティブサスペンション、プロパイロット2.0まで、技術的な切り口でアルファードとの違いも交えながら語り合った。


デザインコンセプトは"リニア"

サトー:新型エルグランド、非常に話題になっていますよ。コンセプトは「プライベート・マグレブ」。

マスヤマ:マグレブ……? マグレブって何すか?

サトー:マグレブっていうのはリニアモーターカーのこと。上海で実際に走ってる、あの静かで速いやつ。あれをイメージしたデザインコンセプトなんです。

マスヤマ:え、上海でリニア走ってるんすか? マジで?

サトー:そうそう、だいぶ前から走ってますよ。空港から市街地まで20分くらいで結んでる。

マスヤマ:速いから20分なんすね。

サトー:いや、実はそんなにスピード出してないんです(笑)。350km/hくらいで、新幹線も300km/h近く出てるから、マグレブとしてはそこまで圧倒的に速いわけじゃない。でも静かで速い、というイメージなんですよね。

デザイン面でいちばん特徴的なのは、サイドウィンドウがすごく直立していて、リアのDピラーもあまり寝ていないところ。真四角にすればするほど室内は広くなるけど、空力やデザイン的な見え方は苦しくなる。それでもうまく個性的にまとめてきたな、というのが第一印象ですね。

マスヤマ:写真だけ見るとかなり個性的に見えますけど。

サトー:実物もまあ個性的っちゃ個性的です(笑)。でも結局、アルファードにどう対抗していくかを考えたときに、トヨタと同じことをやっても仕方ない。だから個性を出す方向に振ったんだと思いますね。ホイールもかなり樹脂でカバーされていて、空力にはかなり気を使っている印象です。


第3世代e-POWER——教科書通りの「シリーズハイブリッド」

サトー:ここからは主に技術面、第3世代e-POWER、e-4ORCE、インテリジェントダイナミックサスペンション、プロパイロット2.0について、アルファードとの比較を交えて見ていきましょう。

まずe-POWERですが、これはトヨタのTHSとは仕組みが全然違います。日産がコンパクトカーのノートで最初に採用して大ヒットしたシステムですね。

これは教科書的な「シリーズハイブリッド」——エンジンで発電してバッテリーに貯め、その電力でモーターを回す、という一直線の流れです。

マスヤマ:エンジンは完全に発電専用ってことですか?

サトー:その通り。タイヤはモーターとしか繋がっていない。トランスミッションもありません。

マスヤマ:じゃあエンジンはオン・オフだけで、いちばん燃費のいい回転数で回ってるんですね。

サトー:理屈上はそうなんですが、実際はハイブリッド用バッテリーがそこまで大きくないので、充電しながら頑張って回すこともある。しかもエンジンって、効率のいい回転数と最大パワーが出る回転数が違うので、必要な発電量に応じて回転数は変わるんです。

一方トヨタのTHSは「シリーズパラレルハイブリッド」と呼ばれる方式で、エンジンとモーターの出力を常時ミックスしながら走る。市街地はモーター中心、高速はエンジン中心、というふうに無段階に変化していきます。

マスヤマ:THSもトランスミッションはないんですよね?

サトー:ないです。クランク軸とモーターの出力軸を「遊星ギア」でつないでいて、複数のギアをぐるぐる回しながら出力の割合を調整している。変速ではなく、出力配分の制御なんです。

マスヤマ:へえ、なるほど。もう全然別物ですね。

サトー:別物です(笑)。THSは非常にユニークな方式で効率も高いと言われている。エンジンとモーターの得意分野を無段階にミックスするので、無駄なく効率のいいところを使えるので、HVバッテリー自体が小さくて軽くて済む。

マスヤマ:メカオタク的には革命的なシステムってことですね。

サトー:そうなんです。ただ、フィールはあまり良くないという評もあって。モーターだけで走るピュアな出力の方がスムーズで静かなのに、THSはエンジン出力が入り込むタイミングが多い。だからちょっと独特の雑味というか、フィール的な評価は分かれるところですね。

ちなみにホンダや三菱の方式はまた別で、市街地はモーターのみ、高速はエンジン直結に切り替えるというやり方です。モーターは低回転で効率がいい一方、エンジンは5速だけみたいなギア比で高速道路で効率が上がるので、それぞれの得意な速度域を使い分けている。

マスヤマ:じゃあe-POWERは高速が苦手ってことですか?

サトー:その通りです。100%モーターでリニアな走りは気持ちいいんですが、課題は静粛性と燃費、特に高速側の燃費がずっと言われてきました。それが今回の第3世代e-POWERでかなり改善されたんです。


燃費改善のカラクリ——超高圧縮比とタンブル流

サトー:発電専用の1.5L 3気筒エンジンは、今回とくに燃費に振って開発されています。トルクのピークと効率のいいピークをできるだけ近づける、というのが開発コンセプトのひとつ。結果、WLTCモード燃費は16.8km/Lまで伸びました。

やり方としてはまず超高圧縮比の実現。ターボエンジンなのに圧縮比13まで攻めているそうです。

マスヤマ:めちゃくちゃ高いですね。

サトー:普通ターボは圧縮比を上げるとノッキングが問題になりやすいので、パワーを出そうとするとガソリンを濃く吹いて対策する。それが燃費を悪化させる一因なんです。でも発電専用なら過渡的な最大パワーを追わなくていいので、ここまで高圧縮比にできる。

もうひとつがタンブル流の活用。スパークプラグ周辺だけ理想空燃比にして、それ以外はEGRなどで薄めにする。縦渦(タンブル)でしっかり混合気を作って着火させる考え方で、これは最近どのメーカーもやってます。

自分のキックス(第1世代e-POWER)でもすでにすごく滑らかに走るんですが、あのアクセルの踏み代に対するリニアな出力特性は、日産がワンペダル制御を突き詰めてきた歴史があってこそ。日産のエンジニアに聞いた話では、アクスルのねじれまで計算して制御しているそうです。モーターからデフを通ってタイヤに伝わる、その機械的な構成要素の少なさの中にも微妙なロスやねじれが出るので、そこまで先読みして制御しているという。

マスヤマ:ワンペダルってメーカーによって出来が違うんですよね。

サトー:そうなんです。以前とあるドイツ高級車に乗ったとき、ワンペダルがギクシャクしてリニアじゃなくて、結局普通モードに戻しちゃったことがあって。他社にはすぐに追いつけないくらい、日産はこのあたりにこだわっています。


バッテリーの違い——リチウムイオン vs バイポーラ型ニッケル水素

サトー:バッテリー容量にも違いがあります。新型エルグランドは1.8kWhのリチウムイオン、対してアルファードは推定1.22kWhのニッケル水素です。

THS方式はバッテリー容量が少なくて済む一方、e-POWERはある程度の余裕が必要になる。今回1.8kWhとしたのはそのためですね。

マスヤマ:重さ的にはやっぱりリチウムの方が軽いんですか?

サトー:一般論ではそうだと思います。ただアルファードのニッケル水素は「バイポーラ型」という特殊な構造で、セルとセルの接続部分のロスを極限まで減らした設計。それで発熱やロスを少なくしている。ただ、そもそもニッケル水素はリチウムイオンに比べて体積エネルギー密度も重量エネルギー密度も大きく劣ります。リチウムイオンによる革命がなければ、EVはそもそも成立しなかったというレベルの差なので。

日産が容量の大きいリチウムイオンを積んでいるということは、それだけバッファがあるということ。負荷の少ないときに効率よく貯めておいて、必要なときに取り出せる。エンジンにそこまで負荷をかけずに済む構成になっています。


e-4ORCE——電動ならではの4駆の凄み

サトー:次は電動4駆。今、世界中のメーカーが技術力を競っている領域です。エンジン式4駆は動力源がひとつなので、前後配分にはどうしても制約がある。でも電動時代はモーターが前後に2つあるので、配分をかなり自由に変えられますし、出力制御の応答速度と精度も桁違いです。

機械式の4駆はエンジン→トランスミッション→プロペラシャフト→デフ→タイヤという経路で、機械的ロスも大きいし、0.1秒単位で出力をきっかり5%上げる、なんて制御はできません。電動ならそれができる。だから車の挙動を精度高く大きく変えられるんです。

将来的には4モーター化もあり得て、メルセデスGクラスなど一部の車種や中国メーカーではすでに実用化されています。ただコストの問題もあって、当面は前後2モーター+電子制御ブレーキによる4輪トルクベクタリングが主流。前後配分はモーター出力、左右配分はブレーキで片方をつまんでトルク配分をする制御で実現しています。

マスヤマ:日産はe-4ORCE、トヨタはE-Four、三菱はS-AWCとか、呼び方は色々ですよね。

サトー:そうです。日産はこの分野の歴史が意外と長くて、現行ノートにも大型のリアモーターが搭載されています。アルファードの電動4駆も一応ありますが、リアモーターは小さめ。エルグランドはリアにも大きいモーターを積んでいるので、前後配分の自由度が違います。

マスヤマ:アルファードの54馬力のリアモーターだと使える領域が狭くなる、と。

サトー:そうなんです。加速時にフロントが浮かないというメリットは54PSのモーターでもある程度出せますが、体感的なスタビリティの高さは、大きいモーターを積んだ日産方式の方がかなり上がるのではないかと。ノート4WDもリアに大きなモーターを積んでいますが、車高の低いノートですら違いが分かるくらいなので、車高が高いエルグランドだとその効果はもっと大きいはず。ここは実際に街中で試してみたいポイントですね。


インテリジェントダイナミックサスペンション——山場の"アクトライブ"疑惑?

マスヤマ:走行状態でダンパーの減衰力を調整して、不整路面では減衰を下げて振動を抑制、大きな入力がある路面では減衰を上げてボディの揺れを抑える、と。これ……もしかしてKYBのアクトライドなんじゃないですか?

サトー:電子制御サスはKYB以外もZFなども出していて、公式にはKYBの製品だとは明言していないものの、日産はKYBを純正採用しているケースも結構あるので、アクトライドの可能性もあるんじゃないかと。そしてこの手のアクティブサスペンションは、アルファードには搭載されていません。

マスヤマ:それって結構なアドバンテージじゃないですか?

サトー:そう思いますね(笑)。実際にどの程度体感できるかは、アルファードの乗り心地もかなり良いので比べてみないと分かりませんが、スペック上はアドバンテージだと思います。


プロパイロット2.0 vs アルファードの運転支援

サトー:最後はプロパイロット2.0。ここは機能的な差がはっきり出ています。高速道路で、制限速度+10km/hまでの範囲でハンズオフが設定可能です。

マスヤマ:制限速度は何で認識してるんですか?

サトー:カメラです。高速道の場合は地図データも併用しているかも。進路変更がない限りはずっとハンズオフを維持できる。責任は当然ドライバー側にありますが、これはホンダの「Honda SENSING 360+」と近い仕組みですね。

一方アルファードにはこの機能がなく、高速道路で40km/h以下限定——つまり渋滞時のみのハンズオフです。ここは明確な違いですね。

システム構成としては、日産のプロパイロット2.0はドイツのZFのモジュールを使っていて、ADASの認識部分は世界最大級のシェアを持つモービルアイのカメラ・チップ統合モジュールが担っています。ZFはそれをさらにシステムとしてまとめて自動車メーカーに供給する、いわばティア1サプライヤーですね。

セレナから採用されている3眼フロントカメラ+複数のミリ波レーダーの構成で、モービルアイの新しめの世代のチップが載っているはずです。ちなみにホンダはヴァレオ&モービルアイの組み合わせで、これも近い立場のサプライヤー構成。いずれにしてもHonda SENSING 360+はかなり出来が良くて、高速に乗って数秒でハンズオフできて、進路変更がない限りずっと維持できる。プロパイロット2.0もこれに近い使用感が実現できている。

アルファードはデンソーのADASモジュールで、渋滞時のみハンズオフなのは、単なる機能差なのかトヨタとしての考え方の違いなのか、そこは何とも言えませんが、少なくとも今の時点では明確に差があります。


まとめ——選ぶならどっち?

サトー:総合すると、運転支援も含めて「運転して楽しい」のはエルグランドの方かもしれない、という印象です。e-POWERの走行フィールの気持ちよさ、e-4ORCEの制御の高さを考えると、エルグランドは乗って楽しい車に仕上がっていると思います。街中での試乗も含めて、もう少し確かめてみたいところですが。

一方でアルファードにはPHEVという選択肢があって、街中ではほぼEV走行できてしまう。ここはアルファードならではの強みです。加えて、リセールバリューの高さもアルファードの武器ですね。

マスヤマ:値段的にはどうなんですか?

サトー:同じ仕様で比べれば結構近い水準です。ただエルグランドは4駆ハイブリッドのみのラインナップなのでその分高くなってますし、アルファードはガソリン車もあるので選択肢の幅で言えばアルファードの方が広い。ハイブリッドかつ4駆のみというエルグランドの構成には、アルファードとの差別化を強く意識した狙いが見えますね。

マスヤマ:真正面からぶつかろうという感じじゃないですよね。

サトー:その通りだと思います。保守本流のアルファードが圧倒的な存在感を持つ市場の中で、デザインでも技術でもしっかり特徴を出しにいっている。実際、受注も好調で初速は良いようなので、そういう個性を支持する消費者も一定数いるんじゃないかと思いますね。


※本稿は動画「新型エルグランドをアルファードと徹底比較/電動四駆の凄みとは/熟成のe-POWER/アクティブサス搭載」の内容をもとに、note用に再構成したものです。
https://youtu.be/yq84sCQecKE

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