【閑古鳥雑貨店のプク】ガジェットポーチを眺めてあくびをする猫と、珈琲と腹話術|Anker Smart Pouch
雷の朝、晴れた午後。
グレーのポーチと、看板猫プクと、腹話術みたいな独り言。
今日も、静かな一日が過ぎていきます。

9月のはじまりは、なんとも気まぐれです。
朝はごろごろ雷が鳴って、ガラスが少し震えるほどだったのに、
いまは雲の切れ間から、そっと光がのぞいています。
まるで、夏と秋が「まだ帰らない」と言い合っているような空。
「プク、そろそろ雨が来るかもよ」
カウンターの下でおなかを出して寝ていたプクが、
ぴくりと耳だけ動かしました。
でもやっぱり起きる気はなさそうで、
ごろりと寝返りをうって、またふかーく息を吐きました。
店内は、プクの寝息と、コーヒー豆を挽く音だけ。
それだけで、ちょうどいい静けさでした。

そんな午後のこと。
ドアの鈴がちりん、と鳴って、お一人のお客様がいらっしゃいました。
三十代くらいの男性。
たしか、以前にも雨の日にふらりと立ち寄られた方です。
いつもの席に座って、注文はホットコーヒー。
湯気のたつカップをそっと置いて、ふと目をやると、
お客様の手元には、グレーのすっきりとした形のポーチがありました。

「それ、素敵ですね。文房具みたいな雰囲気で」
声をかけると、やわらかく笑って、
「Ankerのガジェットポーチなんです」
「Ankerって、こういうのも作ってるんですね」
「はい。実はKOKUYOとの共同開発で、ガジェットも文具も、
いろいろ入るんですよ」
そう言って、ポーチの横のボタンを固定すると、
ふわりと開いて、そのままテーブルの上にすとんと立ちました。
まるで、小さなテントが立ったみたい。
その姿に、私も思わず「おお…」と声をもらしてしまいました。

「プク、見てごらん。立ったよ、ポーチが」
「……にゃーん?」
寝ぼけまなこのプクが、のそのそと起き出して、
お客様のほうへぽてぽて歩いていきました。
テーブルの脚まで来て、ちょこんと座り、
じーっとポーチを見つめています。
好奇心だけは人一倍…じゃなかった、猫一倍。
「猫ちゃん、気になるのかな」
そう言いながら、お客様はポーチの中から
Ankerの充電器をすっと取り出して、
店内のコンセントにそっと差し込みました。
「僕、移動が多くて。営業とか、出張とか」
「なるほど。だからこういうの、使い勝手いいんですね」
「そうなんです。中に仕切りがあるので、
ケーブルがぐちゃぐちゃにならなくて。
あと、この薄さ。バッグに入れてもかさばらないんですよね」

ふむふむ。なるほど。
お客様がポーチをすっと鞄に戻すその動きも、なんだかきれいで、
ぴたりと吸い込まれていく様子に、私は少し見とれてしまいました。
プクも、それをじーっと見届けて、
「ふぅ」とため息のようなあくびをひとつ。

お客様が帰ったあと、
ほどなくして、またぽつぽつと雨が降ってきました。
「プク、あのポーチ、ちょっとかっこよかったね」
テーブルを拭きながら私がそう言うと、
カウンターの下から、かすかに声が聞こえたような気がしました。
「……プクも、ちいさなポーチ、ほしい……おやつ入れたい……」
もちろん、プクがしゃべるはずがありません。
声の主は、わたし。
誰もいない店内でついついやってしまう、腹話術まじりの独り言。
「……はいはい。おやつはまた今度ね」
そう言うと、プクはまたくるりと丸くなり、
すやすやと寝息を立てはじめました。

たったひとつのポーチが、ぽつりと会話を咲かせる午後。
こういう静かな時間って、贅沢だなぁと思います。
きょうのお客さまは、ひとりだけ。
プクと、私と、その方と——それだけの一日でした。
それでも。
そのひとりが、やさしくて、静かで、
こんなふうに丁寧にポーチを扱う方だったから。
今日は、それでじゅうぶんでした。
あしたは、もうちょっとにぎやかになるといいな。
プクも、看板猫らしく働いてくれると、いいな。
——そう思いながら、
ぽたぽたと屋根を打つ雨の音を、しばらく眺めていました。
きょうも、読んでいただいて、ありがとうございました。
朝から雨、雷、晴れ、くもり、と変な天気でした。
またいつでも、ふわりとお立ち寄りくださいね。
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