文車妖妃のアルエさん①
アルエさんは文学少女。
いつも本を読んでて、なんでも知ってる。
呼び方のイントネーションは「サザエさん」と同じ。
学校では図書室にいて、休日は図書館にいることが多い。
ぼくのなかでは文車妖妃(ふぐるまようひ)っていう妖怪のイメージ。
アルエさんとの出会い
中学一年生になったとき、仲良くなった男の子が「幼馴染に面白い女の子がいるよ!きっとナマコと気が合うよ!」と言って連れてきたのがアルエさんだった。
三つ編みで眼鏡の完璧な委員長タイプで可愛いかった。

そのときぼくのなかに生まれた感情は「怒り」だった。
なんで!お前に!こんな可愛い幼馴染がおんねん!ふざけんな!
そんなことを考えながら、プリプリしてたのを覚えている。
ただ、その時はアルエさんと軽い雑談をしただけで、そこからしばらく顔を合わせることもなかった。クラスも違ったし。
アルエさんは天才
アルエさんは俗にいう「天才」だった。
IQテストか何かの結果がめちゃくちゃ高かったらしく、実際に塾にも行ってないのに学力は常に学年1位。そんなわけで、彼女は職員室でも話題の存在だった。市の交換留学みたいな制度でアメリカにも行ってた。

遊んでたら体育館の強化ガラスをぶち破って、職員室で正座させられてヤクザみたいな先生に説教されて、別の意味で話題になったぼくとは違うなあ……。

友達になった!
アルエさんとは、中学三年生のときに同じクラスになった。話してみたら趣味も合うし面白いし、仲良くなるのは一瞬だった。
仲良くなってみたら、確かにもの凄く頭は良いんだけどおっちょこちょいだし、オタクだし、意外と運動はできないし、ちょっとイメージが変わった気がする。




バレンタインデーには手作りのチョコくれた。
すごい手が込んでてめっちゃ美味しいやつ。
「アーモンドの香りがするけど青酸カリはたぶん入ってない」って手紙入り。うわあ、嬉しい。

間違いなく一番仲が良い女の子だったけど、ハッキリとした恋愛感情は生まれなかった。とんでもなく頭が良い人だから、恐れ多くて恋愛対象にできなかったのかも。
っていうか、ぼくがナマコだから種族的なアレかもしれない。
でも「ハーバード大出身のイケメン青年実業家」みたいな完璧超人しか釣り合わないでしょ、こんな人。

なんとなく、将来的にナマコのぼくでも誰かと結婚して娘が生まれることがあるなら「アルエ」って名前を付けたいと思った。
なんかすごい子になりそうだし。
でも、そんなささやかな夢は破れることになるのだった……。
(つづく)
