物語のような日常エッセイ#2 [もしも、電子レンジがしゃべったら]── 毎日、温玉と戦う、ちょっと生意気な相棒我が家の電子レンジは、とにかくいつでも騒がしい。
「ピーピーピー!よし、今から温めるぞーー!」
玄関まで聞こえそうな勢いで、毎回とにかく主張が激しいのだ。
私は温泉卵(温玉)が好きで、ほぼ毎日このレンジで作っている。
私が見つけ出した、理想のトロトロ加減になる絶妙な時間は「40秒」。
でも、この電子レンジは細かい時間調整が苦手だ。
だから私はいつも、「30秒」を2回に分けてボタンを押す。
まず、1回目の30秒。
「よし、一発目任せとけ!」
威勢のいい声に背中を押されるように、スタートボタンを押す。
庫内のターンテーブルが回る。静かなようで、どこかワクワクした空気が漂う30秒。
そして、問題の2回目。
ここからが、このレンジの本領発揮だ。
「おい、ここからが勝負だぞ。あと10秒!」
「9、8、7……」
脳内で勝手に、彼のハイテンションなカウントダウンが始まる。
「4、3、2、1……はい、今!ここ!いい感じ!」
まるでスポーツの実況中継みたいに、ひとりで盛り上がっている。
「ほら見ろ、完璧だろ?」
息ぴったりにボタンを止められた日は、最高に綺麗な温玉ができあがる。
でも、別の日。
私がほんの少し油断したときは、こうだ。
「5、4、3……あ、おい!2……1!」
チーン。
(あるいは、ピーピーピー!)
しまった、止めるのがコンマ数秒遅れた。
「あーあ、ちょっと固くなっちゃった。残念でした!」
気の抜けた電子音が、完全にこちらをからかって笑っているように聞こえる。
また別の日は、もっとひどい。
「5、4、3……2……1……はい、5秒オーバー!」
もう、完全にニヤニヤしながらいじってきている。
私は思わず、無機質なレンジの扉に向かって言い返す。
「そんなに分かってるなら、そっちで勝手に10秒で止めてよ!」
でも、返ってくるのはいつも同じ。
ピーピーピー。
「いやー、それは僕の仕事じゃないんでね」とでも言いたげな、そっけない音。
毎日まいにち、狭い庫内で私と温玉の攻防戦を繰り広げている。
うるさくて、正確で、ちょっと意地悪。
でも、なんだかんだ言ってご飯時のいちばん頼りになる相棒だ。
「はいよ、今日も戦うぞ!」
キッチンからそんな声が聞こえた気がして、私はまた、あの丸いボタンを押し込む。
今日も、私の家はちょっとうるさい。
この家の中で、静かに、でも愛おしくおしゃべりをしているモノたちの物語を、ひとつのマガジンに全部まとめてあります。
家事の合間に、あるいは夜眠る前のひとときに。
いつでもこの扉を叩いて、彼らに会いにきてくださいね。
前回のお話です
物語のような日常エッセイ#1 【もしも、ソファがしゃべったら】 ── 帰ってきた私を、いちばん最初に知っている場所
ちょっと、気になるのです🌹🫧🫶💕ご縁ありがとう🍀 | ゆらり🌸🫧🫶✨ | さんに掲載していただきました。ありがとうございます😊こちらです↓<3行日記 | 今日の天気、私の天気 17/07/2026>
