HSPの私は失礼な人間なのだろうか。
また、やってしまった。
その日はたまたま学校で説明会があり、
歩いて学校へ向かった。
横断歩道に差しかかると、
子どもの友達と、そのお母さんが話をしていた。
娘は、その子の家に何度か
遊びに行かせてもらっていて、
とてもお世話になっている。
以前、お礼を伝えるために
LINEをしたことがあったので、
連絡先も知っていた。
でも、
実際に会うのはその日が初めてだった。
「こんにちは。〇〇の母です。」
そう挨拶をした。
でも、信号待ちの間、
何を話せばいいのかわからなかった。
そのお母さんは、
学校の説明会のことを話してくれた。
私は、
「そうですよね。同じグループみたいなので、よろしくお願いします。」
そう挨拶だけ返した。
そして青信号になると、
そのまま足早に歩き出してしまった。
長く感じた、あの信号待ちの時間。
歩きながら私は、
「しまった。」
と思った。
あの去り方は、失礼だったのではないか。
挨拶だけで終わってしまったことを、
どう思われただろう。
もっと会話を広げればよかった。
もっと自然に話せればよかった。
そんな後悔ばかりが、
頭の中をぐるぐると回っていた。
私は失礼な人なのだろうか。
それとも、HSPの気質で、
ただ、考えすぎているだけなのか。
そんなことを考え始めると、止まらなくなる。
「あの時、もっと笑顔で話せばよかった。」
「何か一つでも質問をすればよかった。」
「急いで歩き出したから、感じが悪かったかな。」
家に着いてからも、
その場面を何度も頭の中で再生する。
相手はもう忘れているかもしれない。
それなのに私は、一人で反省会を始めてしまう。
若い頃は、
ここまで考え込むことはなかった。
でも今は、
誰かと話した後は、
必ずと言っていいほど、自分の言動を振り返る。
あの言い方で良かったのだろうか。
あんな表情をしなければ良かった。
余計なことを言ってしまったかもしれない。
逆に、
何も話さなかったことが
失礼だったのではないか。
気づけば、自分に減点ばかりしている。
歳を重ねるほど、
その反省会は長くなっていった。
経験を積めば楽になると思っていた。
でも実際は、
相手の立場や気持ちを
考えられるようになった分、
以前よりも、
あれこれ考え込んでしまうようになった。
きっと、
相手は私のことをそんなに気にしていない。
頭ではわかっている。
でも、心はそう簡単には納得してくれない。
私は、
人と話すことが嫌いなわけではない。
むしろ、話すこと自体は好きだ。
人の話を聞くことも好きだし、
笑い合う時間も好きだ。
だけど、「初めまして」が苦手だ。
本当はたくさんその人のことを知りたいのに、
「人見知り」という欠点が強すぎて、
結局何も話せなくなってしまう。
だから、後から後悔する。
もっと自然に話せる人を見ると、
心からすごいと思う。
天気の話をして、
学校の話をして、子どもの話をして。
その流れが、とても自然だ。
どうして私は、それができないのだろう。
でも、
ある日気づいたことがある。
私が「失礼だったかな」と悩むのは、
それだけ相手を大切に思っているからだ。
どうでもいい相手なら、こんなに悩まない。
娘が大切にしている友達のお母さん。
そう思うと、
「正しくしなきゃ。」と思って、
自分で自分を追い詰めてしまう。
嫌われても構わないと思う相手なら、
家に帰ってまで思い出したりしない。
「失礼だったかな。」
その言葉の裏には、
「ちゃんと関わりたい。」
「嫌な思いをさせたくない。」
そんな気持ちが隠れている。
だから私は、
自分を責めるだけではなく、
その気持ちも認めてあげたいと思った。
もちろん、次に会った時は、
もう少し話せたらいいなとは思う。
「この前はありがとうございました。」
「いつも娘がお世話になっています。」
そんな一言だけでも十分かもしれない。
会話が続かなかったとしても、
それで終わりではない。
人間関係は、
一度の会話ですべて決まるものではないから。
何度も挨拶を重ねて、
少しずつ言葉を交わして、
少しずつ相手を知っていく。
そうやって築かれていくものなのだと思う。
だから、自分自身に伝えたい。
そんなに自分を責めなくていい。
あの日の私は、ちゃんと挨拶をした。
相手の目を見て、
「よろしくお願いします」と伝えた。
それだけで十分な一歩だった。
完璧な会話なんて、
きっと誰にもできない。
私たちはみんな、不器用なまま、
人と関わることを少しずつ覚えていく。
だから今日も、
また誰かに会ったら挨拶をしよう。
少しぎこちなくてもいい。
言葉が続かなくてもいい。
その積み重ねが、
いつか「自然な会話」になる日が
来るかもしれない。
そう信じて、
私はまた一歩、
人の中へ入っていこうと思う。
もし今、
私と同じように、
「失礼だったかな。」
「変に思われたかな。」
そうやって、
一人反省会をしてしまう人がいたら伝えたい。
あなたのその繊細さは、
人を思いやれる優しさでもある。
だからこそ、疲れてしまう日もある。
でも、その優しさまで否定する必要はない。
相手を大切にしたい。
嫌な思いをさせたくない。
その気持ちがあるからこそ、
何度も思い返してしまうのだ。
もちろん、
次に生かせる反省は大切だ。
でも、
自分を責め続ける必要はない。
たった一度の会話で、
その人との関係が終わってしまうことなんて、
滅多にない。
あなたにも、
最初は苦手だと思っていた人や、
第一印象はあまり良くなかったけれど、
今では仲の良い友達や知り合い、
ママ友がいるのではないだろうか。
人との関係は、
たった一度では決まらない。
だから、どうか安心してほしい。
あなたが思っているほど、
人はあなたの失敗を覚えていない。
そして、
あなたが思っている以上に、
その優しさはちゃんと伝わっている。
今日も、ぎこちないままでいい。
笑顔で「こんにちは」と言えたなら、
それだけで十分。
そんな小さな一歩を、
これからも大切にしていこう。
私と一緒に。
