芯を感じる、素朴な味|創作大賞感想
ゆづさんの作品を読んだ。
ホッとするフードエッセイ。
私もゆづさんと同じく名古屋市民だ。濃い味付けの文化が根付いているこの地で育ったのに、ゆづさんは素朴で素材の味がするものが好きになった。一方私は、薄味も濃い味もイケる食いしん坊になった。味の好みは、文化圏もあると思うけど、影響が大きいのは育った環境だと思う。ゆづさんのご家族は、きっと素材の味を大切にする料理をたくさん作ってくださったのではないだろうか。
ゆづさんは「名古屋の民として失格」なんてご自身を責めているが、私はそうは思わない。好みは人それぞれで、誰かに強いられるものではないからだ。なので、途中、この文が出てきたときに、ホッとした。
私は、素朴で柔らかで、自分を包み込んでくれるようなあたたかい素材の味が好き。私の好みは私の中の芯としてちゃんとある。その事実が安堵をくれた。
生まれた土地の味付けに馴染めないと、確かに疎外感を感じるかもしれない。でも、自分の好きなものは好きと堂々と言えばいいと思う。ゆづさんの場合は、ご主人が分かってくださった。理解者がいると心強い。
ゆづさんが素材そのものを大切にするのは、料理だけではない。文章や音楽に対しても、素材を大切にしている。シーンが違っても一本芯が通っているゆづさんの姿勢が、私は素直に素敵だと感じた。
素朴なものの中にも、確かな栄養がつまっているのだ。
料理をするときも、音楽を奏でるときも、文章を書くときも。素材の良さを生かせるようなものを仕上げたい。そう思わされるフードエッセイだった。
本作を読んで、やさしい味の野菜のスープが飲みたくなってしまった。
