「アパレル販売員って底辺職ですよね?」昨日の授業で大きなショックを受けた話
昨日の授業で、ある学生がこう言った。
「アパレル販売員って、ぶっちゃけ底辺職じゃないですか?」
正直、めちゃくちゃショックだった。
でも同時に、
「なぜその子はそう思ったのだろう」
と考えさせられた。
なぜなら私は20年以上、ファッション業界や小売業に携わり、現在は専門学校でマーケティングや販売を教えているからだ。
そして何より、その言葉の背景にある職業観が気になった。
販売員は誰でもできる仕事なのか
おそらく学生たちの中には、
「販売員は誰でもできる仕事」
というイメージがあるのだろう。
確かに、販売員になること自体のハードルは高くない。
しかし、プロとして成果を出し続ける販売員になることは決して簡単ではない。
お客様の話を聞く。
悩みを引き出す。
言葉にならない気持ちを察する。
最適な商品を提案する。
信頼関係を築く。
ファンになっていただく。
そして売上につなげる。
これらは感覚だけでできる仕事ではない。
学び、経験し、磨き続けることで身につく専門性だ。
私は販売を教える立場として思う。
本当に優秀な販売員ほど、
「なぜ売れたのか」
「なぜ選ばれたのか」
を言語化できる。
再現できる。
だからこそ、それは技術であり、スキルなのだ。
給料が安い。休みが少ない。将来が不安。
学生たちからよく聞く言葉がある。
給料が安そう。
休みが少なそう。
土日に友達と遊べない。
将来が不安。
もちろん、その気持ちは分かる。
でも私は思う。
そんな不安が一切ない仕事は存在するのだろうか。
会社員も不安だ。経営者も不安だ。
公務員ですら将来への不安はある。
どんな仕事にもメリットとデメリットがある。
だからこそ大切なのは、
その仕事を通じて何を学べるか。
どんな力を身につけられるか。
ではないだろうか。
その職業観はどこから来たのだろう
SNSを開けば、
「好きなことで生きる」
「会社員では稼げない」
「副業で月収100万円」
そんな情報が次々と流れてくる。
実は、このNOTEの中にも少なくない。
もちろん、それ自体を否定するつもりはない。
挑戦することは素晴らしいことだと思う。
でも、その一方で地道に働くことが、まるでコスパの悪い選択肢のように語られることに違和感がある。
私自身、独立して初めて気づいたことがある。
それは、
1万円を稼ぐことの大変さだ。
会社員時代は毎月給料が振り込まれる。
でも独立すると、その1万円を生み出すためにどれだけの努力が必要なのかを思い知る。
価値をつくる。
信頼を積み上げる。
失敗する。
改善する。
その繰り返しの先にようやく売上が生まれる。
結局、お金は価値提供の結果でしかない。
だから私は学生たちに伝えたい。
地道に働くことは決して遠回りではない。
むしろ、その積み重ねこそが将来の自分を支える力になるのだと思う。
ファッション業界で生きるなら店頭は避けて通れない
最近の学生たちはよく言う。
「将来はブランドを立ち上げたいです」
素晴らしい夢だと思う。
でもそのたびに私は考える。
ブランドを立ち上げたいなら、
まず何を知らなければならないのだろう。
お客様を知らなければならない。
商品を知らなければならない。
売れる理由を知らなければならない。
そして、人を知らなければならない。
そのすべてが詰まっている場所が店頭だ。
お客様は何に悩むのか。
なぜ買うのか。
なぜ買わないのか。
どんな言葉に反応するのか。
どんな接客で心が動くのか。
店頭には教科書には載っていない学びがある。
私は今マーケティングを教えているが、その原点は間違いなく店頭にあった。
ファッションに携わりたいのであれば、店頭経験は遠回りではない。
むしろ最短距離だと思う。
なぜ販売職の価値が伝わらなくなったのか
ただ、学生だけの問題ではないとも思う。
業界にも原因はある。
いつからだろう。
販売員が「人材」ではなく「コスト」として見られるようになったのは。
売上が落ちれば人件費を削る。
人が辞めても補充すればいい。
経験やスキルよりもシフトが埋まることが優先される。
そんな環境では販売職の魅力は伝わらない。
学生たちが憧れを持てなくなるのも無理はない。
しかし本来、販売員は代替可能な存在ではない。
ブランドの価値を伝える。
お客様との信頼を築く。
ファンを増やす。
店舗の空気をつくる。
その役割は決して小さくない。
そして私は今になって思う。
私が以前、働いていた会社は、販売員をとても大切にしてくれていた。
販売員を単なる人件費ではなく、ブランドを支える存在として見てくれていた。
当時はそれが当たり前だと思っていた。
でも今振り返ると、それは決して当たり前ではなかったのだと気づく。
だからこそ私は、販売員という仕事に誇りを持てたのだと思う。
昔は販売員が憧れの存在だった
私が業界に入った頃。
販売員はもっと憧れの存在だった。
カリスマ販売員がいた。
その人に会いたくて来店するお客様もいた。
接客や着こなしに憧れて同じブランドを選ぶ人もいた。
いつからだろう。
販売職が
「誰でもできる仕事」
「最初にやる仕事」
「将来性のない仕事」
そんな扱いを受けるようになったのは。
でも私は思う。
人を理解する力。
伝える力。
信頼をつくる力。
提案する力。
これらはどんな仕事にも通じる力だ。
販売という仕事は、それらを最前線で学べる仕事なのである。
私が伝えたいこと
私は販売員になれと言いたいわけではない。
アパレル業界に入れと言いたいわけでもない。
ただ、仕事を知らないまま評価してほしくない。
職業の名前だけで価値を決めてほしくない。
どんな仕事にも専門性がある。
どんな仕事にも誇りがある。
そして、どんな仕事からでも学べることがある。
昨日の授業で大きなショックを受けた。
でも同時に、教育者として改めて考えさせられた。
仕事の価値は肩書きで決まるのではない。
年収ランキングで決まるのでもない。
その仕事を通じて誰に価値を届けるのか。
どれだけ真剣に向き合うのか。
そこで決まるのだと思う。
ブランドをつくりたいなら、まず人を知ること。
人を知りたいなら、店頭に立つこと。
私は今でも、それがファッションを学ぶ一番の近道だと思っている。
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筆者プロフィール
高渕 修|株式会社SUNNYDAYWORK 代表
WEBマーケター・服飾専門学校講師。
アパレル販売歴25年、店舗運営20年、EC運営10年。
ショップスタッフから店長、店舗運営、オンライン事業部長を経て独立。現在はEC事業者の運営支援・WEBマーケティング・ECコンサルティングを行うほか、服飾専門学校で店舗運営やEC、マーケティングを指導し、現場で活躍できる人材育成に取り組んでいます。
「現場で本当に役立つ知識を、わかりやすく伝える」をテーマに、店舗・EC・人材育成について発信しています。
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私は服飾専門学校で、店舗運営・EC・Webマーケティングを中心に授業を担当しています。
現場で培った経験をもとに、「現場で本当に役立つ考え方」を学生や企業の皆さまへお伝えしています。専門学校・大学での特別講義
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