ちょっとした日記 後編
作業おつかれさまです。
訪れたのは、社長の奥さん。
この会社は、社長と奥さんの共同経営のようなものだけど、全くと言っていいほど連携がとれていない。
こんなに遅くに何やってるんですか?
なにって、来週のプレゼン資料作ってるんだけど、そっちは終わったの?
えっ?それって、社長が作るんですよね?
わたしたちは何も作ってないですけど。
そっちはそっちで作ってもらわないと困るんだけど。
僕はそっちのこと知らないよ。
夫婦喧嘩が始まってしまった。
こんな深夜に喧嘩するなよ...。三人は同時に思っただろう。
そして、そのとき事件は起こった。
じゃぁ、他の部署の資料今から作る?
勝手にすれば。
感情的になった社長は投げやりな返事をした。
時間は午後11時30分。
今から他の部署の資料を作る?ただでさえ今の資料ができずに困ってるのに、さらに他の部署の資料を今から作る?
わたしは他の二人を招集し、作成フローの見直しをした。
ふたりは今の資料を終わらせて。他部署の資料はわたしが作るから。
これはとんでもないことになった...。と、絶望の淵に立っていたとき。
他部署の資料は、今作ってる資料のコピーでいいよ。あとは画像だけすりかえればいい。
画像は持ってるんだよね?だったら、後はひとりでやってくれ。
社長の棘ある発言が妻に飛ぶ。
ソファーに深々と座った奥さんは、ティーテーブルに足を置いてふてくされていた。そして何やら物思いに老け込むこと十数分。
何かを思い立ったように、スマホとパソコンを取り出して編集の準備を始めた。
深夜12時。
とらねこさーん。画像編集したことないから教えてよー。
奥さんからお呼びがかかる。仕方なしにシブシブ駆け寄ってみると、さっきの喧嘩はどこにいったのか、そこには子どもみたいな笑顔があった。画像編集の方法をひと通り教えると、奥さんが小声でわたしに耳打ちした。
ごめんね。こんな時間まで。あの人いい出したら利かないのよ。悪い人じゃないから支えてあげてほしい。ひとりで抱えちゃうタイプだから。
作業が終わったのは午前2時。
奥さんは眩暈がするとのことで帰宅。社長はもう少し作業があるから残るとのこと。
わたしたち三人はすぐに退社して次の日に備えた。
三人とも次の日は6時起き。
三人とも疲れ切ったようすで出社。
昨日はヤバかったね...。昨日じゃなくって今日か...。
第一声がこれだ。
だけど、疲れを見せる訳にはいかないのがこの三人だ。
一日三時間睡眠。これがもう七年ほど続いている。健康被害は今のところはまだない。
ポックリ逝ったらそのときはその時か。
終わり
