【中級講座】一行目を書こうとするのをやめたら、文章は最後まで書けるようになった。
朝の「とらねこ村」。
カフェひなたは今日もゆるく営業中。
……と言っても、お客さんはまだいない。
いるのは私と、みおと、クロだけ。
クロはお気に入りの窓辺で丸くなっている。
私はノートを開いたまま、三分くらい固まっていた。
ペンは持ってる。
頭の中には書きたいこともある。
なのに。
最初の一行だけが出てこない。
「ねぇ。」
みおがストローをくるくる回しながら聞いてきた。
「また止まってる?」
「うん。」
「何を書くか分からないの?」
「いや。」
「テーマは決まってる。」
「言いたいことも決まってる。」
「最後の締めも決まってる。」
「じゃあ何がないの?」
「最初の一行。」
みおは吹き出した。
「スタートだけ迷子なんだ。」
「そう。」
「ゴールテープは見えてるのに。」
私は机に突っ伏した。
「スタート地点が見つからない。」
その瞬間。
クロが私のノートの上に、どすんと寝転がった。
「ちょっと。」
「そこ書くところ。」
クロは薄目を開けて、
「にゃあ。」
と言った。
……絶対どいてくれない顔だった。
みおが笑う。
「クロの方が先に原稿を書き始めたね。」
「肉球で?」
「意外と名作かも。」
「タイトルは?」
『昼寝が最優先。』
「それ、私じゃん。」
二人で笑う。
でも笑いながらも、私は心のどこかで焦っていた。
毎日書いている人なら、この感覚が分かると思う。
書きたいことはある。
なのに最初だけ動けない。
書けない自分を見るたびに、
「今日はダメかも。」
そう思ってしまう。
すると、みおが急に真面目な顔になった。
「ひなた。一行目ってさ、誰のために書いてる?」
私は首をかしげた。
「読者。」
「違う。今のひなたは、自分のため。」
「……。」
「最初の一行で、上手って思われたい。」
「失敗したくない。」
「スキが欲しい。」
「そう考えてない?」
私は言い返せなかった。
図星だった。
一行目なのに。
全部を詰め込もうとしていた。
面白さも。
役立つ情報も。
感動も。
全部。
みおは笑う。
「お弁当箱に、カレーもラーメンもハンバーグも入れようとしてる感じ。」
「重すぎる。」
「フタ閉まらない。」
私は思わず笑った。
「だから開けられなかったのか。」
その一言で、肩の力が少し抜けた。
私はペンを持ち直す。
そして、こう書いた。
『今日は一行目が書けなくて、十分くらいノートを見つめていた。』
たったそれだけ。
でも、不思議だった。
二行目が出てきた。
三行目も出てきた。
文章は、急に歩き始めた。
私はその日、あることに気づいた。
一行目が書けない人には、共通する考え方のクセがある。
そのクセを知るだけで、書き始めるまでの時間は驚くほど短くなる。
私が収益化できた理由は意外とシンプルでした。
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