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尊敬される人の正体は「能力」じゃなかった。その正体とは?

カフェひなたの窓際で、私はストローをくるくる回していた。

目の前には、親友のミオ。

そして足元には、いつものように黒猫のクロがいる。

クロは今日も偉そうに丸まっていた。

いや、本当に猫っていいよね。

寝ているだけで「かわいい」って言われるんだから。

私なんてソファで寝転がっていたら、

「まただらだらしてる」

って言われるのに。

「ひなたって、普段はやる気なさそうなのに、たまにすごいこと言うよね」

ミオが笑った。

「たまにって失礼じゃない?」

私はカフェラテを飲みながら言った。

「私はいつでもすごいよ」

「自分で言うんだ」

「だって誰も言ってくれないから」

クロがこちらを見る。

まるで、

『そこは自分で言っちゃダメだろ』

と言っているみたいだった。

まあ、クロはだいたいいつも冷たい。

でも、そんなクロもなぜかカフェのお客さんには人気がある。

不思議だ。

私は首をかしげた。

「でもさ、クロって誰にでも態度変えないよね」

「猫だからじゃない?」

ミオが言う。

「いや、そこ結構大事だと思う」

私は窓の外を眺めた。

とらねこ村には、いろんな人がいる。

毎日来てくれる常連さん。

初めてカフェに来る人。

少し話すのが苦手そうな人。

急いでいて余裕がなさそうな人。

でも、クロは誰に対しても同じだった。

誰かがおやつをくれるから近づくわけでもない。

誰かが偉い人だから特別扱いするわけでもない。

ただ、いつも同じ距離感で接している。

「人間も、こういうところ大事なんじゃないかな」

私が言うと、ミオが少し驚いた顔をした。

「ひなたがそんな真面目なこと言うなんて」

「失礼すぎる」

「だって昨日、宿題やるって言って昼寝してたじゃん」

「……それは忘れて」

クロが小さく鳴いた。

たぶん笑っている。

たぶん。

でも、私は本当にそう思っている。

尊敬される人って、特別な才能がある人だけじゃない。

誰に対しても丁寧に接する人だと思う。

なぜなら、人は意外と細かいところを見ているから。

例えば、お店の店員さんに横柄な態度を取る人。

目上の人には優しいのに、立場が弱い人には冷たい人。

そういう人を見ると、

「この人は相手によって態度を変えるんだな」

って感じる。

逆に、どんな相手にも、

「ありがとう」

「お願いします」

「大丈夫ですか?」

と言える人は、それだけで安心感がある。

派手なことをしていなくても、

「あの人って素敵だよね」

と言われる。

結局、人から信頼されるのは、小さな行動の積み重ねなのかもしれない。

「でもさ、ひなた」

ミオが言った。

「丁寧に接するって、疲れない?」

私は少し考えた。

たしかに、いつも完璧に優しくするのは難しい。

眠い日もある。

機嫌が悪い日もある。

何もしたくない日だってある。

ちなみに私は結構ある。

「今日なんて朝起きてから、布団と友達だったし」

「それ自慢することじゃないよ」

「でもね」

私は続けた。

「丁寧って、無理して笑顔を作ることじゃないと思う」

相手を見下さないこと。

相手を雑に扱わないこと。

たったそれだけでも、十分丁寧だと思う。

疲れている日でも、

「ありがとう」

と言う。

何かしてもらったら、

当たり前だと思わない。

小さなことでも、

相手の存在をちゃんと認める。

それが、人との距離を少しずつ近づけてくれる。

「つまり、ひなたもクロを見習えってこと?」

ミオが笑った。

「え?」

私はクロを見る。

クロはカフェの椅子で堂々と寝ている。

「いや、クロの場合は丁寧というより自由すぎる」

「でも人気者じゃん」

「……確かに」

悔しいけど、クロは正しい。

自分らしくいながら、相手を大切にする。

それが一番自然なのかもしれない。

私は完璧な人間じゃない。

部屋は散らかる。

やる気が出ない日はある。

ソファから動けない日もある。

でも、ひとつだけ意識していることがある。

誰に対しても、雑にならないこと。

相手の立場で態度を変えないこと。

なぜなら、丁寧さは相手のためだけじゃなく、自分自身の価値を作るものだから。

「あ、この人なら安心できる」

そう思ってもらえる人は、どこに行っても大切にされる。

大きな結果を出す人だけが尊敬されるわけじゃない。

毎日の小さな優しさを積み重ねる人も、ちゃんと尊敬される。

カフェひなたには、今日もいろんな人がやってくる。

私は相変わらず、少しだらだらしている。

クロと一緒に昼寝もする。

でも、お客さんが来たらちゃんと挨拶をする。

「いらっしゃいませ」

「来てくれてありがとう」

その一言が、誰かの一日を少し明るくするかもしれないから。

ミオが帰ったあと、クロが私を見る。

「なに?」

クロは尻尾を振った。

「褒めてる?」

たぶん違う。

でも、私は勝手にそう思うことにした。

今日もカフェひなたは、ゆっくり時間が流れている。


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