五皿の蕎麦と、静かな贅沢——六甲道「花水木」で過ごす昼の時間
昼下がり、六甲道の路地を歩く。腹は減っているが、どこか軽いものをと思っていた。
しかし、暖簾をくぐった「花水木」で、その考えはあっさり覆る。
小皿に盛られた蕎麦が、次々と卓上に並ぶ。
静かな店内で、その数だけがやけに賑やかだ。
まずはつゆでひと口。
次に塩を添える。
すると、蕎麦というものの輪郭が、すっと立ち上がる。
とろろを落とし、卵を絡めるころには、同じ麺とは思えぬ変化がある。
こうして食べ進めているうち、いつしか無口になる。
横には、衣をまとった海老。
かじれば、さくりと音がして、油の気配はすぐに消える。
量は多い。
だが、不思議と嫌にはならぬ。
むしろ、食べ終えたあとに残るのは、満腹というより、満ち足りた感覚であった。
こういう昼飯は、悪くない。


