【現地報告】「ゾウの悲しみ」から辿り着いたクアラルンプール:国際会議で見えた日本でRSPOラベルが消える「構造的な理由」
私たちの情報発信活動は、2023年に訪れたマレーシア領ボルネオ島の森の記憶に深く根ざしている。
当時、私が目の当たりにしたのは、人類の飽くなき需要と、地球の限界が激しく衝突する悲劇の光景だった。
広大な熱帯雨林がパーム油農園へと姿を変える中で、住処を追われたボルネオゾウの群れや、オランウータンの絶望に満ちた瞳は、パーム油問題の深刻さを、理屈ではなく、種の存亡をかけた無言の訴えとして肌で感じさせた。
この衝撃的な体験は、私にとっての「パーム油問題」の核心を決定づけた。
それは、「環境と経済が対立する、矛盾に満ちた現実」そのものだ。
ボルネオから帰国して以降、私たちはこの矛盾を直視し、理想と現実の間に立ち、妥協点を探り続けることを活動の主軸に据えた。
私たちは、問題を知らない、あるいは無関心な生活者に対し、この複雑な現実を伝え、具体的な行動を促すための橋渡し役となることを決意した。
ボルネオから帰国した4か月後にはクラウドファンディングを実施し、その活動資金を元手に、全国各地でパーム油問題やRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)の普及啓発に力を入れてきた経緯がある。
日本におけるRSPO普及の夜明け

私たちの活動の道を照らしてきたのが、長年のパートナーであるサラヤの存在だ。
サラヤは、ヤシノミ洗剤を発売した1970年代から、製品開発における環境・社会問題に警鐘を鳴らし続けてきた。
その倫理観は、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)が設立された2005年に、決定的な行動となって表れた。
サラヤは、日本に籍を置く企業として初めて、RSPOの初期メンバーとして参加するという、孤高の決断を下したのだ。
これは、「自社の製品が地球環境を破壊する一因であってはならない」という、創業以来変わらない強い倫理観に基づいている。

以来20年、サラヤは日本市場でRSPOの認知度が極めて低い時期から、認証パーム油の利用を進め、消費者に対しその重要性を発信し続けてきた。
彼らの活動は、まさに日本市場における持続可能なパーム油の「夜明け」を築いてきた歴史に他ならない。
この活動の流れの中で、2025年11月、私たちはサラヤから声がかかり、マレーシアのクアラルンプールで開催されたRSPO RT2025に取材目的で参加することができた。
この国際的な会議の現場で、私たちは日本の市場が抱える課題の深刻さを痛感することになった。
パーム油の功罪:なぜ「完全な悪」ではないのか?

私たちがこの国際会議(RT2025)で得た知見や、日本市場が直面している危機の深刻さを理解するには、まず
「パーム油問題の本質は何か?」
「RSPOという仕組みが何を達成しようとしているのか?」
という土台を共有しなければならない。
この基本を知ることで、初めて、私たち一人ひとりが、なぜこの問題に当事者意識を持たなければならないのかが明確になる。
皆さまには、ぜひ、この問題の根源に改めて目を向けていただきたい。

私たちが日常的に使うパーム油は、世界で最も利用されている植物油だ。
その理由は、大豆油や菜種油と比べて桁違いに生産性が高いからである。
しかし、その圧倒的な効率性の裏側で、深刻な問題が起きている。
それは、パーム油を作るために熱帯雨林が広範囲に破壊され、野生動物の生息地が失われること、そして生産地での人権や労働に関する問題だ。
「ボイコット」が引き起こす環境負荷の転嫁と現地貧困の加速
一方で、「パーム油をボイコットする」という選択は、正しい理念(環境保護)だけを追い求めるあまり、現実の問題解決から逃げてしまう行為だと捉えている。
これは、「地球上の問題を、他人事ではなく、自分の問題(当事者意識)として捉える」というサステラの基本的な哲学に基づいており、ボイコットという安易な手段を肯定しない理由は、主に以下の2点にある。
■ボイコットを肯定しない理由①「環境負荷の転嫁」

すでにお伝えした通り、パーム油は、他の植物油(大豆や菜種など)と比べて圧倒的に生産性が高い。
そしてもしパーム油の消費をやめた場合、同じ量の油を代替するために、より広大な土地の森林を破壊しなければならなくなる可能性が高い。
これは、パーム油生産地の問題を解決するのではなく、環境破壊の負荷を他の国や地域に単に押し付けているだけであり、地球全体で見た環境保護にはならない。
■ボイコットを肯定しない理由②「現地の貧困加速」

パーム油産業は、世界中の小規模農家の暮らしを支えている。
これらの農家は、アブラヤシの栽培を主な、あるいは唯一の収入源としており、その数はインドネシアとマレーシアだけで合計300万人以上に上ると推定される。
パーム油は、彼らにとって貧困から脱するための重要な経済的手段となっている。
したがって、安易なボイコットは、彼らの収入源を奪い、現地の貧困をさらに深刻化させることを意味する。
RSPOとは何か?「不完全さ」を内包する現実的で粘り強い仕組み
RSPO認証パーム油は、私たちに「環境に配慮した選択肢」を提供する、極めて重要な役割を担っている。
しかし、このRSPOという制度は、設立当初から厳しい批判にさらされている。
■批判されるのは「矛盾」を内包しているから

RSPOが批判を受けるのは、以下の利害が相反する多様な関係者が話し合って作り上げた仕組みだからだ。
国・企業(経済的な利益を優先したい)
NGO(環境保護と人権を徹底したい)
数百万の小規模農家(生活の安定を最優先したい)
このように、利害が正反対の人たちが集まっている以上、「すべての人を完全に満足させる」ルールを作ることは不可能であり、必ずどこかで「妥協点」が生まれる。
RSPOは、まさにこの避けられない矛盾を抱え込んだシステムなのだ。
■大切なのは「改善を続ける姿勢」
私たちは、RSPOの現時点での不完全さを責めるのではなく、「理想に向かって改善を続ける姿勢と推進力」に注目すべきだと考える。
実際、RSPOは批判を無視せず、「泥炭地(湿地)の開発規制を強化する」ことや「温室効果ガス(GHG)排出量の計算を義務付ける」など、外部の声を取り入れてルールを粘り強く改定してきた経緯がある。
RSPOは「完全無欠な最終解決策」ではない。
しかし、この矛盾を認めつつ、国際的なルールの中で持続可能性のレベルを引き上げようと努力する、最も現実的で効果的な枠組みなのだ。
RT2025の現場から:生産者にとっての持続可能性と変革のうねり

マレーシアをはじめ、アジアやヨーロッパで毎年開かれる「持続可能なパーム油に関する円卓会議(RSPO RT2025)」は、パーム油を作る人から使う人まで、世界中の関係者(ステークホルダー)が集まる重要な国際会議だ。
この会議では、単に「森を守る」という環境問題だけでなく、「どうすれば農家の暮らしを守りながら環境を守れるか」という、経済的な利益と倫理的な責任の矛盾を解決する方法が話し合われる。
具体的には、小規模農家をどう支援するか、製品がどこから来たか(サプライチェーン)をどう透明にするか、といったことが議論される。
クアラルンプールの会議場では、特に小規模農家を支援する団体(Wild AsiaやFORTASBI)との対話に心を動かされた。
そこで見えたのは、彼らにとっての持続可能性が「生きるための問題」であるという切実な現実であり、また、生産地の若者たちがこの問題を「他人事」ではなく「自分たちの課題」として捉え、変革を始めている希望の兆しだった。
RSPOは農家の「命綱」:尊厳ある生活を支える認証の重み

パーム油を生産する農家にとって、RSPO認証は単なる環境マークではない。
それは彼らの「命綱」だと言える。
RSPO認証は、農家が持続可能な方法で生産し、それを市場に高く評価してもらうことで、安定した収入を得ることを可能にする。
これは、彼らが貧しさから抜け出し、子どもに教育を受けさせ、人間としての誇りや尊厳を持って生きるために不可欠なシステムなのだ。
ゾウと農家:二つの対立を結ぶ「新たな社会契約」
この問題の根源には、相反する二つの現実がある。
ゾウの悲しみ(環境): 利益を最優先して森を切り開いた結果、絶滅の危機に瀕した野生動物が負った、許されないダメージを指す。
農家の生きる権利(経済): 貧しい農家が、家族を養うために最も効率よくお金になる作物(パーム油)を限られた土地で育てるという、切実な生活の現実を指す。
この「環境保護」と「生活維持」という二つの対立を、無理に「どちらかが悪い」と切り捨てるのではなく、共存させる道を探るのがRSPOの最も重要な役割だ。
RSPOが試みているのは、この矛盾を解決するために、以下の二つの責任を果たす仕組みを作ることである。
「環境」側の責任:新規の森林破壊を禁止し、ゾウなどの生息地を守る。
「経済」側の責任:公正な労働条件を保証し、農家に技術支援と安定した収入を与える。
認証パーム油を購入するという消費者の行動は、単なる環境貢献ではない。
それは、生産地と消費地の間で「ゾウと農家、どちらの未来も守るための費用を負担します」という「新たな社会契約」を結ぶことに他ならないのだ。
RSPOは、この複雑な経済と環境の矛盾を、具体的なルールと市場の力で解消する道筋を探し続ける、粘り強い努力の場である。
世代間の断絶:未来を憂う生産地の若者たちの挑戦

RT2025の取材で明らかになった重要な問題は、パーム油を作る生産者の間で、親と子という世代間の考え方に大きなズレが起きていることだ。
親世代の考え: 親世代にとってパーム油生産は、「家族の生活と農園という家業を守り抜く」ための切実な問題だ。生活の安定が最優先である。
若者世代の葛藤: 一方、学校教育などを通じて環境問題や森林破壊を知った若い世代は、「このままでは環境を壊してしまう」という倫理的な理由から、家業を継ぐことに抵抗を感じる人が増えている。
この親子の間に生まれている意見の衝突や沈黙が、パーム油産業全体の未来を根本から不安定にしている。
こうした危機感を抱いた生産地の農家、特に若い世代は、単に家業を拒否するだけでなく、新しい動きを始めている。
彼らは、TikTokやInstagramなどのSNSを活用して、「パーム油産業は悪者だ」という外部からのイメージを変えるため、自分たちが直面する課題や、持続可能な生産に向けた努力を積極的に発信している。
彼らの目標は、パーム油産業を「未来に誇りを持てる持続可能な産業」に変えることだ。
この変革を支えるには、私たち消費者の力が不可欠だ。
RSPO認証のパーム油を購入するという行為は、生産地の若者たちに「あなたたちの持続可能な努力は報われる」という経済的な意思表示をすることであり、彼らが希望を持って家業に取り組めるようにするための支援に他ならない。
日本市場の「三重の危機」:国際的な潮流から取り残されるリスク

長年にわたりRSPO普及に尽力してきたサラヤの活動は、今、国際的に大きな成果として認められ始めている。
RT2025では、サラヤのコミュニケーション活動が、アワード「Communicating for Good」にノミネートされた。
これは、彼らが20年間、RSPOへの参加を通じて「消費者との対話」を重視し、パーム油問題の「自分事化」を日本市場で地道に続けてきた結果である。
そして、このサラヤの粘り強い発信が、国内のサプライチェーン全体にポジティブな影響を与え始めた。
サラヤと同じくRSPOの設立初期から参加している不二製油はもちろん、会場で交流した三井物産のような大手商社がRSPO普及に積極的な姿勢を見せはじめ、日清食品やポーラといった日本企業も国際的な潮流を無視できなくなりつつある。
これは、企業がようやく問題の「自分事化」を始めつつある証拠だ。
企業の苦悩:なぜ「マスバランス(MB)」に留まるのか?
現在、日本のパーム油を扱う企業が抱える問題は根深い。
これは、企業側の「コストを抑えたい」という事情と、「RSPO認証システム」自体が持つ構造的なジレンマが背景にある。
RSPOの認証油には、大きく分けて4つの種類があり、それぞれ「トレーサビリティ(追跡可能性)」と「コスト」が異なる。
アイデンティティ・プリザーブド (IP): 特定の農園の油だけを完全に分けて管理する。トレーサビリティが完全。最もコストが高い。
セグリゲーション (SG): 複数の認証農園の油を分けて管理する。トレーサビリティが高く、IPに次ぐ。
マスバランス (MB): 認証油と非認証油をタンク内で混ぜることが許される。トレーサビリティは低いが、コストが低く、導入が容易。
ブックアンドクレーム (BC): 物理的な油は非認証だが、認証された権利(クレジット)だけを購入する。

現在、日本企業の多くが採用しているのが「マスバランス(MB)方式」である。
企業がMBを選ぶ最大の理由は、コストの低さと導入の容易さにある。
MBは、SGやIPのように油を分けて管理する必要がないため、製造設備を大きく変えずに済み、追加コストが圧倒的に抑えられる。
これは、日本の消費者がまだ「環境配慮のための追加料金(プレミアム価格)」を支払うことに積極的ではない市場環境において、企業が「環境への配慮」と「経済性の維持」という板挟みを解決するための「現実的な落としどころ」となっているのだ。
しかし、このMB方式こそが、「結局、認証されていない油が混ざっているではないか」というRSPO認証への批判の的となり、企業の「持続可能性への本気度」が問われるポイントでもある。
日本の企業は、この批判とジレンマを乗り越えるため、混ざり物を許容するMBから、より追跡可能性の高いSG(セグリゲーション)方式への切り替えを真剣に検討し始める段階に来ている。
これは、サプライチェーンの透明性を高めるための、次の重要な一歩となる。
日本国内でラベルが消える理由:企業ではなく「消費者の無関心」という構造問題
今回RT2025の会場を取材する中で、私は一つの看過できない現実に直面した。
それは、同じ日本企業であっても、海外向けに販売する商品には積極的にRSPO認証マークを付けるのに、日本国内向けの商品にはそのマークを付けないケースが非常に多いという現実だ。

この違いは、市場の「原理」が原因だ。
【海外(欧米など)】 パーム油問題やRSPO認証への理解が深く、認証マークが「常識」となっている国では、ラベルは消費者の「買う理由」になる。逆に、認証マークがない商品は「環境に配慮していない」と見なされ、環境意識の高い消費者から購入対象として外されてしまうリスクがある。
【日本】 日本では、この市場原理が働かない。多くの消費者がパーム油問題やRSPOについて知らないため、ラベルが付いていても、付いていなくても、消費者の購買行動に影響を及ぼさない。企業にとって、ラベルを付けることは「単なる印刷コストや管理コストの増加」にしかならないのだ。
この状況は、企業の倫理観が低いと単純に責めるよりも、日本の消費者の間でパーム油問題やRSPOへの理解と関心が欠けていることに根本的な原因がある。
企業が「わざわざコストをかけてまで環境への配慮を示す」という経済的なメリットが日本市場には存在しないことが、日本が抱える深刻な構造的な問題だと言える。
この意識の低さの背景には、これまでのRSPOの国内発信力の弱さと、それによる情報不足がある。
幸い、今年からRSPOの日本担当者が配置され、状況は変わりつつあるが、この「無関心」の壁を打ち破るには、私たち情報発信者の粘り強い努力が不可欠である。
日本が直面する「三重の危機」の正体

このまま、日本が国際的な潮流に乗り遅れ、「RSPO後進国」という現状を放置し続けた場合、以下の三重の危機が日本企業に迫る。
■危機①:国際法規制による「責任の強制」
ヨーロッパ連合(EU)では現在、「EU森林破壊防止規則(EUDR)」という法律の施行が進んでいる。
この法律は、パーム油や木材など、森林破壊に関わるリスクのある原材料をEU域内で売買するすべての企業に対し、その原料がいつ、どこで、どのように生産されたかを徹底的に調査し、森林が破壊されていないことを証明する手続き(デューデリジェンス)を義務付けている。
これは、企業に対して「あなたの会社が扱うすべての製品について、その背景にある環境リスクを他人事ではなく、自社の責任として徹底的に調査しなさい」と強制する、極めて強力な国際的な圧力である。
したがって、RSPO認証のような信頼できる確固たるトレーサビリティ(追跡可能性)を証明できない日本企業は、このEUDRの基準を満たせず、巨大なEU市場から強制的に締め出されるリスクが極めて高まっているのだ。
■危機②:国際基準を満たさないパーム油の「負の遺産の集積地」化
RSPO認証パーム油は、環境意識の高いヨーロッパやアメリカといった市場へ、優先的かつ高値で取引され供給されている。
その結果、日本市場は相対的に認証油への需要が低いため、国際的な環境基準や人権基準を満たさない「低品質で倫理的な問題がある非認証パーム油」が行き場を失い、最終的に日本へと集中的に流れ込んでくる可能性が極めて高くなる。
この状態が続くと、日本のサプライチェーンは世界が避けるべき高リスクな原料の「最後の受け皿」となってしまう。
その結果、私たちは知らず知らずのうちに、森林破壊や児童労働といった人権侵害に間接的に加担し続けるという、重大な倫理的責任を負うことになるのだ。
「日本の製品には問題のある油が含まれている可能性が高い」
というイメージが定着すれば、世界と取引のある国内の食品や化成品メーカーは、国際社会における信頼と競争力を急速に失墜させるだろう。
■危機③:未来の消費者からの拒絶
問題は「国際社会からの信頼」だけにとどまらない。
生産国で若者たちが家業の倫理を問い始めているように、日本の若い世代(未来の消費者)もまた、学校教育やインターネットを通じて環境問題に対する高いリテラシーを培っている。
彼らは、消費における倫理的な基準を「当然のこと」として捉える層だ。
そのため、企業がこの問題から目を背け、対策を放置する姿勢を決して見逃さないだろう。
これは、単なる企業のイメージダウンにとどまらない。
倫理観を欠いた企業は、やがて来る消費の中心世代から拒絶されることとなり、国内の消費構造自体が企業の不利益となるという、市場からの極めて手厳しい警告であると認識する必要がある。
ボルネオの記憶から未来の希望へ。「自分事化」が市場を変える

ボルネオの森で私が見た、悲しみに満ちたゾウやオランウータンの瞳の記憶。
それは、私たちがパーム油問題の発信活動を始めた原点であり、今なお、行動を促す血の通った叫びである。
RT2025を通じて明らかになったように、日本市場の「無関心」を放置することは、あの生産地での悲しみに加担し続け、国際社会での信頼と未来の消費者からの支持を失うことを意味する。
私たちのサステナビリティの哲学は、「不完全さを認め合いながらも、理想の実現を諦めないこと」にある。
この複雑な矛盾を直視し、より良い未来を目指す最も現実的な選択肢が、RSPOを通じた内部からの関与だ。
残念ながら、世界が直面する複雑な課題に、「白か黒か」という単純明快な答えは存在しない。
むしろ、不完全さや矛盾をはらんだ仕組の中で、少しずつ磨きをかけていくことでしか、世界の課題を解決する道はないのだ。
日本市場のギャップ:私たちが埋めるべき「声」の不在
現状、日本のRSPO認証パーム油の利用は進んでいるものの、認証ラベルが表示された一般消費者向け製品の普及率は、欧米諸国に比べると極めて低い。
これは、企業が主にトレーサビリティの低いマスバランス(MB)方式を採用し、コストを優先して消費者とのコミュニケーション(ラベル表示)を避けているためだ。
私たち消費者がRSPO認証を求める「声」を発しなければ、企業はコストをかけてでも、よりトレーサビリティの高いセグリゲーション(SG)モデルに移行したり、ラベルを表示するインセンティブを持てない。
この悪循環こそが、私たちが埋めるべきギャップである。
いますぐできる行動:RSPOラベルを探す「未来への投資」

この悪循環を断ち切り、日本市場に変化をもたらすのは、私たち消費者の意識、すなわち「自分ごと化」という力にほかならない。
その具体的な第一歩として、手にする製品の裏面を確認し、まずは「RSPO認証ラベル」の有無を探すことから始めてほしい。
あるいは、SNSを活用し、パーム油問題やRSPOの重要性について積極的に情報発信することも有効な手段である。
こうした消費者の「声」が、ソーシャルメディアでの発信や購買行動を通じて増え続けることこそが、企業に対し「日本の消費者はRSPOを明確に求めている」という強力な市場のシグナルとなる。
このシグナルこそが、企業がコストをかけてでも、より積極的に製品にRSPO認証を表示・採用する決定的な動機となるのだ。
日本の企業、消費者、そして私たち情報発信者全員が、この国際的な流れと日本の課題を直視し、行動を起こす転換期にある。
この記事を最後まで読んでくださった皆さまには、ぜひ知っておいていただきたい。
あなたの手にする商品一つ、発信する一つの声が、遠い生産国の未来と、周回遅れにある日本の市場を変える力を持っていることを。
いいなと思ったら応援しよう!
noteでの活動は、皆さまのスキやコメント、そして温かいご支援に支えられています。
「応援したい!」と思ってくださった方は、ご支援いただけますと幸いです。
いただいたご支援は、今後の記事制作や活動資金として大切に使わせていただきます。
一緒に持続可能な社会を実現していきましょう!