22. グループカラオケ計画【すっとんきょうな出来事 〜精神科に入院した私の記録〜】
※この記録は実体験をもとに書いています。登場人物はすべて仮名とし、個人が特定されないよう、一部の設定や時系列などの細部を変更しています。
おはようございます。
スットンキョウと申します。
OTでの楽しみは、何と言ってもカラオケ。
火曜日の午後と土曜日の午前しかチャンスはありませんが、
入院生活の中では最高のストレス発散でした。
ある日、病棟の荒井姫(立ち居振る舞いがとても上品で、繊細な方だったので「姫」と呼ばれていました)と話していると、
「仲のいい人たちとならカラオケしたいな。」
という話に。
どうやらカラオケが好きなようです。
通常のOTカラオケは誰でも参加できるので、
いつも気心の知れたメンバーになるとは限りません。
普段からラウンジではなく自室で食事をしている荒井姫。
理由を聞いたことはありませんが、
人と食事をすると気を遣ってしまうなど、
何か事情があったのかもしれません。
そんな姫のご要望なら、応えないわけにはいきません。
私は「グループカラオケ計画」を始動しました。
まずはメンバー集め。
「荒井姫もやりたがってるんだけど、
一緒にカラオケしない?」
と声を掛けると、みんな意外にも乗り気。
「実は興味あった。」
とのこと。
やっぱり、誰がいるか分からないカラオケより、知っている人と一緒の方が安心しますよね。
若手を中心に声を掛けると、
8名ほど集まりました。
ところが、ここで問題発生。
外出や外泊の予定が重なり、
なかなか全員が集まれる日がありません。
一番近い火曜日は、なんと荒井姫が外出。
うーん。
姫がいないと意味がない。
その次の土曜日は病院のイベントで
カラオケがお休み。
さらにその次となると少し先になり、
誰かが退院しているかもしれません。
精神科急性期病棟では、
退院日が前もって決まっていることは少なく、
その日の状態によって急に決まったり
延期になったりします。
悩んだ末、
「今回はプレカラオケパーティーという位置付けで、本番に向けた練習をしよう。」
という結論に。
みんないつまで病棟にいるか分かりません。
機運が高まっている今、できる時にやってしまおう。
姫に事情を説明すると、
「気にせず楽しんできてくださいね。」
と嫌な顔ひとつせず送り出してくれました。
さすが姫です。
さぁ、候補日とメンバーが決まったら、
次はOT担当の白石先生との交渉です。
特定のグループでカラオケルームを使わせてもらえるのか。
交渉力の見せどころです。
OKをもらうため、戦略を立てました。
時間は30分。
OT全体は2時間なので、4分の1なら受け入れてもらいやすいでしょう。
それに初めてのメンバーでのカラオケ。
最初は恥ずかしがって盛り上がらない可能性もあります。
(まぁ、この私がいればそんなことは起こらないのですが。)
みんなの疲れも考えると、30分がベストと判断しました。
時間帯は最後の30分。
最初ではなく後半にしたのは、
他の患者さんが先に自由にカラオケを利用できるようにしたかったことと、
ほかのOTで気持ちを高めてから臨めると思ったからです。
日時と参加者を書いたメモを持って、
すーっと白石先生のもとへ。
「先生、少しご相談が。」
少し身構える白石先生。
事情を説明し、メモを見せると、
「なるほど。了解です。
他の患者さんには後半30分は使えないことを
私から伝えておきますね。」
とのこと。
やったー!
交渉成立です。
るんるん気分でメンバーに報告しました。
ここまで来たら、
次は当日のイメージトレーニング。
なんせ30分しかありません。
開始と同時に動けるよう、
・椅子を準備する人
・ドリンクを準備する人
・デンモクで曲を入れる人
・タンバリンを準備する人
と役割を決めました。
30分しかないので、基本はAメロとサビまで歌ったら次の曲へ。
もちろん、一番最初に歌うのは私。
最初は誰でも嫌ですからね。
完璧な段取りです。
誰か本当に、
私に宴会カラオケ係を発注しませんか?
そこまで決まれば、次はお楽しみの選曲。
年代もバラバラなので、盛り上がりそうな曲をリサーチします。
歌ってくれる人を確認すると、
8名中2名が「歌ってもいいよ」と。
他の人は「聴いてるだけで十分」とのこと。
いいです、いいです。
私を入れて3人いれば上等です。
相談しながら、最初の3曲を決めました。
ダンスホール/Mrs. GREEN APPLE
→スットンキョウ
夏祭り/Whiteberry
→川上リーダー
Pretender/Official髭男dism
→ツモツモちゃん
なかなか良いラインナップです。
ダンスホールは、
るるかちゃんからのリクエスト。
私は歌ったことがなかったので、
スマホタイムを使って毎日練習しました。
ミセスの曲は難しいですが、
ダンスホールなら何とか歌えそう。
さすがミセスファンのるるかちゃん、
歌いやすい曲を選んでくれたようです。
最後の仕上げは、手書きの招待状。
一人ひとりに手渡しました。
こうして準備万端で当日を迎えます。
OTが始まると、なんだかみんなソワソワ。
時間が近づくにつれ、
「そろそろ?」
なんて声も聞こえてきます。
いよいよ時間。
カラオケルームへ向かうと、みんな事前に決めた役割どおりテキパキ準備。
私はマイクを握り、
「さぁ始まりました! なでしこ病棟カラオケパーティー! 盛り上がっていきましょ〜!」
と前口上。
タンバリンとマラカスが鳴り響きます。
一曲目。
ダンスホール。
イントロがなく、初挑戦の曲なので緊張しましたが、何とか歌い切りました。
二曲目。
川上リーダーの夏祭り。
えっ、めっちゃ上手い。
一気に会場のテンションが上がります。
三曲目。
ツモツモちゃんのPretender。
えっ、これまた上手い!
三人連続でカラオケ上手という奇跡。
(自分で言うな。)
会場は最高潮。
三曲目以降は決めていなかったので、曲が途切れないか少し心配でしたが、それは杞憂でした。
川上リーダーやツモツモちゃんにつられて、
「歌わない」と言っていたメンバーまで
デンモクを手に取り始めます。
よし!
軍事マニア君には、軍歌の定番「同期の桜」を歌ってもらいました。
誰も知りませんでしたが。
こうして初めてのグループカラオケは、大成功で幕を閉じました。
途中で様子を見に来た白石先生にも歌ってもらおうとしたのですが、うまくかわされました。
これは次回のミッションです。
何より嬉しかったのは、みんなが心から楽しそうにしてくれたこと。
歌を口ずさみながら、
「次のカラオケも楽しみだね。」
そんな話をしながら、閉鎖病棟へ戻ったのでした。

本当は川上リーダーは女性です
あとみんなお揃いのパジャマだよ
目次
次の記事
いいなと思ったら応援しよう!
わぉ、こんなスットンキョウな私にチップを贈りたいと思ってくれたんですね。その気持ちだけで十分です。すみませんカッコつけました、チップぜひお願いします(土下座)