自律航行の国際枠組み制定への動き(IMO-MSC110)
2025年6月後半にIMO(国際海事機構)で自律航行船の機能設計/運用方式/各国規制等に係る会議[MSC110(Maritime Safety Committee)]が開催、各国の最新状況/自律航行関連企業のプレゼンがシンポジウムで行われました。
シンポジウムでの議論は今後の国際協定のベースとなりますが、日本からは国土交通省海事局が出席して韓国からは産業資源通商部が出席。両国の比較と今後の影響を備忘までまとめてみようと思います。
1;全体論
近年、自律航行船(MASS)/自律航行機能の利活用が各国政府(主に海軍/海上保安部門)及び大型商船で広がっており、国際的な規制制定の必要性が取り沙汰される。
国際的な海事規制組織にはIMOがあり、構成組織の一つであるMSC(海洋安全委員会)でMASSに係る国際ルール作りが進み、2030年の強制コード採択/2032年の採択を目指して規制ロードマップが引かれている
-[規制スコープ特定=完了]
-[非強制コードの制定=段階的に進行
-[強制MASSコードの制定/導入=段階的に進行]
2;IMOでのMASS議論の現状
2-1;規制スコープ特定作業の完了
既存IMO条約のMASS運用への適用について、ギャップ/障壁を特定。作業を通じて、高優先度の課題([船長][船員][責任者]の定義明確化など)が特定されてMASSに関する新たな規則開発の必要性が認識された。
-海上安全条約(SOLASなど)=2021年のMSC103で完了。
-法務委員会管轄の条約=2021年のMSC108で完了。
-簡易化委員会管轄の条約に関=2022年のFAL46で完了。
2-2;MASSコードの制定(非強制/強制)
IMOはMASSの安全/持続可能な運航を確保するためのMASSコード制定に焦点を当て、まず非強制コードを制定し、その後に強制コードへ移行する計画を立てる。
(非強制MASSコードのロードマップ)
MASSの安全/持続可能な利用を地域から国際規模に拡大するための重要なステップと位置づけ、下記のスケジューリングが為される
-2025年:非強制MASSコードが自主的な使用のために準備
-2026年5月:非強制MASSコードの最終化/採択
(強制MASSコードのロードマップ)
非強制コードの運用状況や技術発展の度合いなどを加味して制定
-2026年12月:非強制コード採択後の経験蓄積期間の枠組を開発。期間中に、非強制コード適用で得た知見/課題を収集/分析、強制コード策定へ。
-2028年:非強制コード/蓄積期間の結果/関連小委員会レビューに基づいて、強制コードの策定を開始。同時にSOLAS条約の改正(新章の追加)も検討
-2030年7月;強制コードの採択
-2032年1;強制コードの発効
2-3;法的側面に関するロードマップ
IMOの法務委員会もMASSに関連する法的課題に対処するロードマップを承認、下記のように計画だてている
-2025年春;LEG112で最終化された非強制コードを評価、複数WGの検討成果に基づき、委員会管轄下にある条約の修正/解釈変更の必要性を検討。
-2026年春;LEG113で承認された強制コードを評価し、条約の修正/解釈変更の必要性を検討。
-2017年春;LEG114で管轄下の条約修正/解釈変更を採択/承認する
3;シンポジウムでの日本の発表
シンポジウムで発表された日本;国土交通省海事局の資料から読み取れる日本のスタンスは以下の通りとなる。
3-1;基本的な政策スタンス
MASSの推進目的として、事故防止(安全性向上)及び船上業務効率化による業界持続性を掲げる。[安全性=海難事故の約70%が人為ミスに起因、日本の水域における挟水道の多さへの対処][効率性;ワッチ業務などの船員負担軽減]
3-2;国内規制整備と商業化
国内では2030年をめどにMASS商業運行を実現する計画を引き、国内制度は実証結果をもとに整備してIMOに貢献。25/06時点での安全基準は下記を制定。
(自律航行の構成要素)
[1;状況認識(自船/他船/地理情報/通信など)]
[2;衝突/座礁回避(COLREG準拠)]
[3;航路実行/監視(離着岸/航海計画実行)]
(要請機能)
自律航行システム(ANS)の機能要件
遠隔支援設備の基準
リスク評価/安全管理要件
(管理体制)
陸上支援センターを活用した遠隔モニタリングや遠隔操作も試行。
システム状態管理は中央情報管理機能に統合し、船長による最終責任体制を確保することを定める
3-C;実証事業
MEGURI2040(Stage 2)では25/07から9か月間で4隻で実証運航を実施。官民53社の体制で技術開発/標準化/訓練/保守体制まで含めた包括的検討を実施
3-D;船舶業界全般への影響(特にシステム系)
1;国内制度への対応
25/06に出されたMASS向け安全基準に餡し、技術適合/ルール準拠等の対応が必要。自律運航に求められる機能(状況認識/回避/航行制御)をが明示されており、AutoPilot機能に関しては設計/説明での整合取る必要
2;運用体制の整備
中央情報管理/遠隔運用センターなどの実施体制の構成を明示、設備整備や設備支援システムの開発に商機
3;標準化動向への対応
日本発での国際標準への提案準備を国交省は推進、まだ適用対象でない小型船舶での標準策定については様々な企業が参画余地あり
4;シンポジウムでの韓国の発表
シンポジウムには韓国;産業通商資源部が出席してプレゼン。法整備/実証/事業化など様々な面で一歩先を行ってる感が。
4-A;政府方針
KASS(Korea Autonomous Surface Ship)プロジェクトを、2020年から韓国政府主導(産業通商資源部/海洋水産部)で進めており自律航行船のコア技術の開発を行う。
コア技術は4つ設定し、[自律航行システム][エンジン自動化システム][実証評価][運航技術確立/標準化]とする
4-B;法整備
24年に[自律運航船の開発および商用化促進法(MASS法)]を制定して25/01から関連法令/ガイドライン整備して施行。MASS法では以下の機能等について定める
-MASS/遠隔操作センターの法的定義
-MASSに係る基本計画/実施計画の策定
-自律船の性能実証制度
-人材育成/国際連携支援
-安全評価制度の導入(リスク管理/機能設計/サイバーセキュリティ対策)
5;日韓の政策まとめ
日本/韓国共に造船業/海運業で昨今注目を受けるが、従前から両国は自律航行システム/機能を開発して課題解決/付加価値向上につとめてきた。その中で、政府方針/社会構造などを鑑みて調べると下記のような分類が。
(共通)
-ルールメイキング;IMOの議論への積極参加
-実用重視;安全性確保/国際競争力強化を重要視
-試行錯誤;実証実験を通じた技術開発の推進。
(相違)
[重点領域]
日本は[社会課題解決(船員不足/環境負荷低減)]に重点を置く一方、韓国は[新産業創出/国際競争力の確保]を強調
[アプローチ]
日本に比べて韓国は政府主導で産学連携を推進(蔚山など)して事業補助も行うが、日本政府は基本的に民間任せで規制強化方針にある
[法整備]
韓国が自律航行に特化した法律を制定してグレーゾーンを無くして開発/機能実装の推進を図るが、日本は既存法の運用変更で急場をしのぐ
[技術開発]
韓国は強みを持つ造船分野での自律航行機能開発を進めるが、日本は造船を支える舶用機器と付随する機能の高度化に絡んだ自律航行機能開発が進む
