読書記録 2025.2
5月になってしまったが、ほとんどの感想は2月に書いたものである。
1.あるいは酒でいっぱいの海/筒井康隆
SF作家といえば、だれを思い浮かべるだろうか。私が思うに、多くの方は星新一を思い浮かべると思う。しかしながら、星新一とともに「SF御三家」と呼ばれる筒井康隆を忘れてはならない。(ちなみにもう一人は小松左京である。)
本作は筒井康隆の初期作品集である。それゆえ、氏の名作たちに比べると少し読みづらいこともあるのだが、ショート・ショートであることも相まってそれでも十二分に面白い。表題作が最初に掲載されており、それを読んだ時点で本書の面白さは担保されていると言って良い。
星新一と比べるとかなりブラックユーモアが強めなので、場合によっては星新一より刺さる方もいると思う。ぜひあなたも、筒井康隆の世界に飛び込んではいかがだろうか。
2.来世の記憶/藤野可織
あまりにグロテスクで、あまりにかわいらしく、あまりに人を選び、あまりに美しい物語を描く、それが藤野可織である。
藤野可織の描く世界はどれも普通ではなく、しかも普通ではなさすぎる。常人では決して思いつかないような設定で物語が進行していき、全く思いもよらない結末を迎える。それゆえ、かなり人を選ぶ作品が多いと思っている。
でも、だからこそ藤野可織の物語は抜群に面白い。私はまだ二作しか氏の著書を読んでいないが、完全に虜になっている。本書はそんな著者の短編がニ十篇収録されている。特に好きな短編は、強いて言えば「切手占い殺人事件」だが、正直選ぶことができないほどである。それほどすべての作品が私にとって魅力的であり、恐ろしくもあり、美しい世界を見せてくれる。
3.まず牛を球とします。/柞刈湯葉
三作続けてSF短編集を読んでいる。その中でも、最も新しい時代を描いているのが本書である。
物理学ではよく、問題を簡単にするために現実世界のものを単純化して考える傾向がある。たとえば高校までの物理の問題では空気抵抗を無視して考えたりそもそも物体を質点(質量を持つ点)として考えたりする。そのような単純化にまつわるジョークの一つに「球形の牛」というものがあり、本書及び表題作のタイトルはそのジョークからとられている。
柞刈湯葉の小説はかなりユーモアに満ちていると思っている。かなりぶっ飛んだ設定と科学的知識を含んでいる割に相当読みやすく面白い。一番好きだったのは『数を食べる』。多くの人間が詰まらないと感じる、夢と数学の話である。
4.恋する殺人者/倉知淳
最近のミステリで、「○○×ミステリ」という形をとっているものはそれなりに多い。その中でも本書は「ラブコメ×ミステリ」の形をとっている。ラブコメが土台になっているからだと思うが、本書は非常に読みやすく(そもそもページ数が少ないのもある)ミステリ初心者にもかなり読みやすい小説になっている。さらに、読みやすくもありながら驚くべき展開が待ち受けており、帯に書いてある通り本格ミステリとしても楽しむことができる。
とはいえ、ミステリを普段からたくさん読んでいるような方にとっては少し物足りないかなという気持ちもある。個人的にはもう少し長いと、私にはより楽しめただろうなと感じている。とはいえ、ライトミステリとして見ればかなり完成されていると思うので、先述の通り、特にあまりミステリを読んだことのない方にはお勧めの小説になっている。
5.ベーシックインカムの祈り/井上真偽
世の中が便利になってくるにつれて、ミステリは格段に書きづらくなっていく。アリバイ工作の難しさや、目撃証言のない犯罪などは、スマートフォンや監視カメラの普及によってほとんど封じられたといっていいだろう。
本書はそんな我々の世界よりもさらに近未来な世界での、SFミステリ短編集である。AIや遺伝子組み換えなど、今もあるが実用化には至っていない(少なくとも本書刊行時)技術が実用化された近未来が舞台の、本格ミステリがいくつか収録されている。
井上真偽の描く論理がかなり好きだ。論理学がテーマのミステリを書くだけあって、氏の論理はとても美しい。描きづらいはずの近未来での本格ミステリが、氏の技巧によって組み立てられてゆく様は非常に美しい。
特に好きだった短編は「言の葉の子」という短編。非常に読みやすくキャッチ―なうえに、いとも簡単に騙されてしまい、悔しさと感動が同時に押し寄せてきた。
6.夜の道標/芦沢央
本には二種類ある。厚い本と薄い本だ。二月はここまでかなり薄い本や短編を読んでいたのだが、分厚い本も久しぶりに読みたいと思い手に取ったのが本書である。
個人的に本書は芦沢央の最高傑作だと思う。芦沢央はかなり後味の悪い、いわゆるイヤミスの名手として有名だが、本書はそれをあまり感じない。道中ではかなり苦しい箇所もあるのだが、読み終わった時に浮かんだ情景は、確かに光に向かっていたような気がしている。
文庫化が近いこともあり、多くの人にネタバレなしで読んでいただきたい本なので、あまり詳細を書くことは控えるが、きっと良い読書体験を得られることと思う。
今月読んだ本の中でもかなり上位に入る面白さで、ミステリとしても単に物語と捉えても、非常に心を揺さぶられる物語である。
7.ガラスの殺意/秋吉理香子
「信頼できない語り手」というジャンルがある。
小説の主人公、語り手は小説の中の世界と私たちの世界を唯一繋ぐことができる存在である。したがって彼らが嘘をつくことはなく、私たちは彼らの見た世界が正確に彼らによって語られるという信頼関係のもとで小説を読む。
しかし、ごく稀にその信頼関係が崩されることがある。それが「信頼できない語り手」というジャンルである。
このジャンルの小説は、なぜ主人公が「信頼できない」のか、その理由が明白であることがほとんどである。本書では、主人公が事故に遭い、長期的な記憶を保持できないという理由で私たちは主人公の過去について、正しい理解が行えているか分からないのである。そして、主人公はどうやら人を殺したらしい、という描写から物語は始まる。
一度読み始めたら決して止まることのできない物語を、ぜひ楽しんでいただきたい。
8.死んだ石井の大群/金子玲介
デスゲームが好きだ。そこには理不尽さと、知力と、少しの希望と、絶望がある。
本書の主役は333人の石井である。たくさんの石井が、なんの意味があるのかも分からずに殺されていく。そのテンポの良さには、不謹慎な爽快感が伴うほどである。果たしてこの行為には意味があるのか。あるとすればなんなのか。読者はたくさんの石井同様「主催者」に振り回されることになる。
本書は「死んだ山田と教室」の続編的立ち位置であるが、前作を読んでいる必要はないし、次作「死んだ木村を上演」ともおそらく繋がっていない。むしろ前作とはジャンルも何もかも違う小説のような感じがする。そのため、どちらが好きとか優劣をつけるのは非常に難しいのだが、どちらかといえば私は本作の方が好みである。どちらもおすすめであることに変わりはないので、好きな方からお楽しみいただきたいと思う。
9.いなくなった私へ/辻堂ゆめ
自分が死んだらどうなるのか、よく考える。
ひょっとしたら天国や地獄のようなものがあって、自分が生前に行った数々を元に所属が振り分けられるのかもしれない。ひょっとしたら次は猫となって、生まれて育てられて飼われて捨てられて……みたいなことが起こるのかもしれない。ひょっとしたら、自分ではない何者か、別の人間として一生を遂げるのかもしれない。そうして私たちは人間であることをやめられないのかもしれない。
本書の主人公は、有名人だった。「だった」、というのは当然、今は違うということなのだが、主人公自身は自分を有名シンガーソングライター、上条梨乃だと思っている。しかし、周りの人は全員自分を上条梨乃だと知覚できない。しかもニュースでは自分が飛び降り自殺したというニュースが流れている。
本書において、上のあらすじのうちいずれかの記述が誤っている、または登場人物の勘違いのようなことは一つも起こっていない。すなわち、この明らかにおかしい超常的な現象に対して、少なくとも本書の中では限りなく論理的な帰結を与えている。この点において本書は凄まじい完成度を持っている。非常に長い物語なのだけれど、それを感じさせない筆致はお見事である。
10.わたしと一緒にくらしましょう/尾八原ジョージ
人は生きていれば必ず衣食住が必要になってきて、否が応でもそこにはある程度の金額をかける必要がある。ある程度の生活を望む人は、そこにある程度の金額をかけて、ある程度の服を着てある程度の食べ物を摂取し、ある程度の建物に住まうことになる。それらが「呪われている」という事態に直面するわけにはいかない。幸いにもこの世には、「呪われている服」も、「呪われている食べ物」も、ほとんど存在しないのだけれど、しかししばしば「呪われている家」というのは存在している。
本書は、そんな家が怖い系のホラーである。大体ホラーというのは「最終的に怖いのは人間だよね」系か「やっぱりお化けでした、呪いは怖い!」系かのどちらかが多いと思っているが、本書はそのハイブリッドというか、どちらでもないというか、とにかくあまり見たことのない形だったので良かった。
私が一番面白いと思った箇所があるのだけれど、ネタバレになるので言うことができない。読んでください、話したいことがあるので。
余談だけれど、この本を読み終わった瞬間から、家で定期的にラップ音が鳴るようになった。無闇に入って良い場所ではなかったのかもしれない。
11.掃除屋/東真直
本を読んでいると、本を書きたいと思う瞬間がどうしても出てくる。大抵は書き始めてみて、完成しないことが多いのだけれど、偶に書き終わる時があり、さらにごく稀にそれが続くこともあり、そうなってくると本を出してみたくなり、大抵は自費出版で本を出すことになる。
本書はそんな自費出版で出された本である。作者は動画で物語を作っている方らしく、明快かつ軽快なストーリーテリングがそれを物語っている。その作り方もあって非常に読みやすい中編だった。
特に出てくるキャラクターのほとんどがとても魅力的だ。さまざまな殺し屋が出てくるのだけれど、まるで漫画を読んでいるかのように絵が浮かぶし、それぞれの個性付けが非常に上手だと感じた。
正直にいうと個人的には少し物足りなさを感じたのだが、面白い箇所がかなり多く、何よりサクッと読めるのが素晴らしいと思うので、ぜひ多くの人に読んでいただきたいし、私も著者の他の作品をさらに読みたくなった。
12.銃とチョコレート/乙一
子供向けの小説というのは、大人になってから読むとまた違った良さが出てくるものだが、本作は少し異なる。
本書は乙一が子供向けに書いたミステリである。本書を開くと、そのひらがなの多さからもその事実を感じ取ることができる。しかしながら、内容はかなりビターなストーリーであり、むしろ本当に子供向けなのか疑ってしまうレベルである。それゆえに、非常に読みやすい文章で、本格的なミステリを味わうことのできる良書となっている。
特にクライマックスの展開は圧巻で、その結末には大変驚かされた。個人的には乙一作品を読んでいるときに感じるあの仄暗さが少ないので、乙一の作品を読んでいるという感覚はあまりないが、それでも一つの物語として大きな完成度を誇っている。
また、登場人物の名前が全員チョコレートの名前というのも面白く、その点でも児童書であるというコンセプトは一貫している。(個人的には、名前とキャラクターがしばらく一致せず、混乱したのだが。)
13.樹海伝説: 騙しの森へ/折原一
私がミステリを、特に「どんでん返し」と呼ばれるミステリを好むようになった一つの要因に、折原一『倒錯のロンド』がある。人によってはどんでん返しである、ということを明かすこと自体禁忌であるとすることも多いのだが、こと折原一に関しては、作者がどんでん返しを得意としていることが広く周知されており、おそらく作品のほとんどがどんでん返しなので問題ないと思う。
私は折原一の大ファンであり、見つけた本は大体買って読んでいるのだが、本書もそんな中の一冊である。正直に言ってしまうと、氏の本はすごくハマるときとあまりハマらないときが顕著であり、本書は個人的には後者だった。どんでん返しもあるが少しわかりやすく、少し物足りなさを感じた。本書は中編であることも寄与しているのだと思う。
ミステリというよりはホラーとして読むとよいのかもしれないが、やはり傑作を書いてしまった作家はその後の作品のハードルが上がる分難しいのだろうと思う。
14.波上館の犯罪/倉阪鬼一郎
「伏線」という言葉が、近年使われすぎている。これは果たして伏線なのかというものを伏線としてあげたり、伏線ありきの展開が含まれるコンテンツが多く生み出されていたり、枚挙に暇がない。特に、「伏線の多さ」を謳うものも最近は多く、玉石混交であると感じているのだが、本書の伏線の多さには劣ってしまうだろう。
というのも、本書は「書いてあるすべての言葉が伏線」である。意味があまりわからないと思うが、この売り文句に偽りはなく、確かにすべての文章が伏線となっている。この作品を完成させて見せた筆者の胆力には、目を見張るものがある。
と、ここまで褒めたのだが、実をいうと私はこの作品を楽しめてはいない。なぜなら、私はこの作品を「ミステリ」だと思って読んだからである。本書にミステリ要素を期待して読むのは少し難しいものがあり、肩透かしを食らう可能性がある。それよりも、一つの作品として読むのが良いのかなと思っている。私は完全にミステリだと思って読んだため、正直あまり面白さを感じることができなかった。
また、本書にはある大きな「仕掛け」が施されているのだが、それも正直10ページくらい読むと分かってしまうので、拍子抜けしてしまった。
やっていることはものすごいのだが、それにとどまってしまったのが少し残念であった。作者の別の作品『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』は評価されているとのことなので、読んでみたい。
15.殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス/五条紀夫
『走れメロス』は、かの有名な太宰治の作品の中でも群を抜いて有名で、国語の教科書に採用されていることなどからも、多くの国民が一度は読んだことのあるであろう傑作である。
本書は、そんな『走れメロス』をほぼ全文引用したうえで、連作ミステリに仕立て上げた怪作である。
まず、一点注意なのだが、場合によっては本書に相当な怒りを覚える方もいることだろう。なぜなら、捉え方によっては本書は『走れメロス』を馬鹿にしているからだ。これが『走れメロス』から生まれたとは到底信じがたいほどのバカバカしさは、読中何度も声を出して笑ってしまうほどである。
ただし、この作品を『走れメロス』から着想することは並大抵の努力では難しいと思う。作者が相当原作を読みこんだのだろうということがうかがえる。
しかも全体を通してしっかりとミステリになっており、ストーリーも(これは太宰治がすごいだけかもしれないが)面白く読者を飽きさせない。決して出オチになっていない点もお見事である。
鬼才・五条紀夫による「新釈:走れメロス」(といっていいのだろうか?)を、ぜひ堪能していただきたい。
16.生存者、一名/歌野晶午
本書は、生存者が一名しかいない。そういう小説である。
祥伝社文庫では、過去に「400円文庫」というシリーズを作っていたらしく、中編の小説をいろいろな作家の方々に書いていただいていたようである。本書もその中の一冊であり、孤島での連続殺人が描かれている。
最初に書いたように本書はタイトルがその結末を表しているタイプの作品である。このタイプの小説で、私が知る限り最も有名なのが、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』である。この小説も最終的に「誰もいなくなる」のだが、本書は歌野晶午版『そして誰もいなくなった』というべき小説である。中編なので、ほかの歌野晶午作品に比べるとあっさりとしているのだが、それでも驚くべき真相にはうならされる。途中に挟まる新聞記事も、この幻かと疑ってしまうような島での出来事が真実であるということを裏付ける良いスパイスになっている。
思えば、今までに読んだ歌野晶午作品は、どれも面白かったように思える。外れだと思ったことは今までなく、作者の筆力を物語っているように思う。ほかの作品も、楽しみだ。
17.短くて恐ろしいフィルの時代/ジョージ・ソーンダーズ
独裁者、と聞くと、私は怖いというイメージを抱く。それはドイツの歴史を学んだことが起因していると思うのだが、もっと原点に立ち返ると、ドラえもんの『どくさいスイッチ』を読んだ時からその感覚を持っているような気がする。
本書もそんな独裁政治にまつわる小説である。しかし、上記の話から生まれる鬱々とした話ではなく、物語の根本は非常にユニークな、ギャグとも取れる文章で進んでゆく。
タイトルにある「フィル」が独裁政治を行う張本人なのだが、彼を含めた登場人物の全員が抽象的な見た目をしており、その姿かたちを想像するのが非常に困難である。そんな登場人物たちを、フィルは強引に支配していく。非常に皮肉が効いていて、それでいてユーモラスに話が展開されるので、非常に読みやすく楽しい読書ができる。
訳者も素晴らしく、おそらくアメリカで出版された方の中でもかなり癖の強い文体であるだろう原文をここまで魅力を損なわずに訳しているその腕にうならされた。
このようなユーモラスな文体は私の大好物なので、ソーンダーズの他の作品も読んでみたいと強く感じる。
18.山手線が転生して加速器になりました。/松崎有理
私が本を購入する理由は色々あり、それはあらすじの面白さはもちろんのこと、装丁の綺麗さや帯の売り文句など多くあるが、タイトルもその中の一つである。本書は紛れもなく、タイトルを一目見て即購入した作品である。
舞台は今から数年後の日本。しかし、現在と異なっているのはコロナウイルスの与えた影響である。本書の舞台では、東京などの大都市がウイルスの影響で完全にその機能を失ってしまっている。そんなディストピアで描かれる、様々な人物の生活が収録された短編集である。
ディストピアと聞くとなんだか暗いイメージがあるが、本書はその荒廃した世界と対比するように、非常に愉快な人物や山手線が登場する。その面白さは、「こんな世界も悪くなかったのかもな」と思わせられるほどである。
表題作は、文字通り山手線が主人公。しかも、改造されて加速器となっている。加速器とは簡単に言うと、荷電粒子をほとんど光速に近い速度にし、それを衝突させて莫大なエネルギーを生む装置である。(間違っていたら申し訳ない。)山手線だったときの意識を持ったまま加速器に転生した主人公?の物語である。
全体を通して数学や物理学の知識が散見されるのも本書の面白さの一つであり、魅力である。様々な難解な知識をうまく物語に溶け込ませ、そんな物語をいくつも生み出してしまう作者の知識には驚かされる。そのような理系要素を嫌厭される方であっても、作者の知識のかみ砕き方が素晴らしいのできっと楽しめると思う。
19.puzzle/恩田陸
本書も上述「400円文庫」の一冊であり、これも『生存者、一名。』同様、孤島でのミステリが描かれる。
初めの章では、いくつかの新聞記事のようなものが並べられる。それだけで章が終わってしまうので、読者としては全く意味が分からず、何が伝えたいのか、これからどのような展開が待っているのかが全く分からない。正直に言うと私もまったく意味が分からず、読むのをやめようかと思ったほどだ。
しかし、次の章に移ると物語は一気に進みだす。第2章に入ってからあっという間に読み終わることができた。
中編なので、やはり少し物足りなくはあるのだけれど、最初に提示されたピースがうまく解決されてゆく様は題通りパズルのようで心地よい。ただ、正直完全な解決が行われているのかというとそうではなく、少し強引な部分もある。だから本書も、本記事に出ているいくつかの本同様に、本格ミステリとして楽しむには少し不向きなのではと思っている。
それなりに多くのミステリを読んできたのだけれど、このような形のミステリは読んだことがなかったので個人的には非常に楽しめた。非常に短い物語の中で、かなり大きく広げた風呂敷をうまくたたんだその筆力には感動した。
