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膝枕外伝 いつかまた逢える日まで



まえがき

鈴蘭と申します。SNSのclubhouseのものがたり交差点ハウスと膝枕リレーハウスで毎日朗読をしています。
今回のお話は、自作の膝枕外伝【母は膝枕】シリーズの4つ目のお話になります。

膝枕リレーとは

SNSのclubhouseで脚本家今井雅子先生の短編小説『究極の愛のカタチー膝枕』(通称正調膝枕)を朗読と二次創作で繋ぐもので、2021年5月31日から1日も途切れることなく続いています。
2025年5月31日に4周年を迎え、7月8日には1500日になります。
今井雅子先生の正調膝枕はこちら。

【母は膝枕】シリーズは「膝枕」の二次創作です。
今井雅子先生、朗読や自由に二次創作をさせてくださりありがとうございます。



キャラクター紹介


美桜

心優しい女の子。森の中を散歩していろんな植物を見つけたり、薬草を煎じて薬を作り村のみんなに配っている。


旅人。趣味で星を撮っている。道に迷ってた時に美桜と出会う。
集落に滞在中は美桜と一緒に過ごしていたが、急に帰らなくてはいけなくなり、七夕に美桜と再会する約束をして集落を出ていく。


弥生

美桜の来世の姿
体は弱いが穏やかで優しく芯が強い。
美桜としての記憶が生まれた時からあり、いつも側にいる幼馴染の聡が前世では恋人だった司だと知っている。


司の来世の姿
正義感が強く曲がった事が大嫌い。
幼馴染の弥生のことは生まれた時から知っていて初めて彼女を見た時に守りたいと強く感じ、彼女を守るために合気道や空手教室に通っている。
実力は先生のお墨付き。
司の記憶はない。


ヒサコ

A I搭載箱入り娘膝枕。
雨の日に聡に拾われた。弥生の死後、聡と伊織(聡と弥生の子ども)を育てる。
弥生とは仲の良い友人。



まえがきが長くなり失礼しました。
それでは、本編スタート。


鈴蘭作 膝枕外伝 いつかまた逢える日まで


その娘は、村のはずれの森の近くに住んでいた。
名前は美桜。子どもの時から散歩と言っては森の中に入り、色々な植物やきのこを取ってきて育てたり食べたりしていた。

そのうち薬草にも詳しくなった美桜は、取ってきた薬草を煎じて薬を作り、村のみんなに配って歩くようになった。薬にはいろんな効能があり、その村には医者がいなかったので、美桜の薬はとても喜ばれた。

この薬を町へ売りに行こうと言う者もいたが、美桜は町へ行くことはなかった。

美桜 「私はみんなのために作ったの」

若者 「でもこの薬だったら金を稼げるんだぜ?」

美桜 「お金なんていらない」

若者 「変な奴だな」

若者は行ってしまった。

私はお金いらない。みんなが毎日元気で過ごせるお手伝いをしてるだけなんだから…

美桜は村のみんなが大好きだった。
一人暮らしの彼女を心配し、声をかけてくれたり森に入ろうとすると危ないからとついてきてくれたり、薬を持って行くと、抱えきれないくらいの野菜を渡してくれたり…
自分の娘のように心配してくれるおばさん。
山菜採りや釣りも楽しいぞと教えてくれたおじさん。
村のみんなの健康は私が守る!
そのためにやってることなんだから、お金なんていらないの。


司 「あれ?地図だとこの道で合ってるはずなんだけど…」

司は地図を取り出す。
方向は間違ってないようだが、周りは木ばかりで道らしい道がない。

司 「まいったなあ、迷ったか?」

さっきから同じ所をぐるぐるしてるような…
日が暮れる前に目的地に着かないとやばい。
もう一度地図を確認していると。

美桜 「なんかこっちから声が聞こえたような…」

草をかき分ける音と女の子の声!!

司 「ここです!!ここにいます!!」

司の声が聞こえたのか、こちらに向かってくるような音が聞こえ、やがて着物を着た少女が司の前に現れた。

美桜 「さっきの声はお兄さんですか?」

司 「そう!星を撮りに来たんだけど道に迷ってしまったみたいで…僕は司。君は?」

美桜 「美桜です。司さん、大分暗くなってきたので移動しましょう。こちらです。」

危ないからと手を繋ぎ、歩き続けること数十分。
太陽が傾き、辺りが暗くなる前に美桜の村に着いた。


村人たちは司をお客様として歓迎してくれた。
村長の屋敷でたくさんのご馳走とお酒を振る舞われ、色々喋ってる内に酔いがまわってきた司は、そっと部屋を抜け出し夜空を眺めていた。
美桜が部屋から出てくる。

美桜 「司さん、どうしましたか?」

司 「ちょっと酔ってしまってね、酔い覚ましに星を見てたんだ」

美桜 「そうでしたか。主役がいなくなったってみんなが騒いでたから探してたんですけど…みんなに知らせてきますね」

引き返そうとする美桜の手を掴む。

美桜 「司さん?」

司 「僕は美桜ちゃんと話したいな。みんなに知らせるのは後にしない?」

美桜は驚いたように司を見たが笑顔で頷いた。そして、恥ずかしそうに掴まれた手に目を移す。

美桜 「司さん、離してください。ちょっと痛いです」

司 「ご、ごめん!!」

司は慌てて手を離した。


司 「僕は趣味で星を撮ってるんだけど」

司は話し出す。

司 「今回は長い休みが取れたから来たんだ。ここの星を撮りたくて。そしたら予想以上に山の中でびっくりしたよ。美桜ちゃんに見つけてもらえなかったら遭難してたかも笑」

美桜 「ここはあまり知られた場所ではありません。なので道に迷う人は多いです」

司 「そうなんだ。美桜ちゃんには感謝だよ。ま、それは置いといて…この辺に旅館とか民宿みたいな宿泊施設ってあるかな?」

美桜 「ここを訪れる人は殆どいないので宿泊施設はありません」

司 「え、そうなの!?」

美桜 「はい」

「まいったなあ…」

宿泊施設がないというのは計算外だった。
どうしようか司が考え込んでると…

美桜 「私の家でよろしければ…いかがでしょうか?」

司 「え?いいのかい?」

美桜 「はい、私1人で住んでますので、気兼ねなくお過ごしいただけるかと」

司は迷った挙句、美桜の家に行くことにした。
村人たちは歓迎してくれたものの、誰も自宅へ招こうとはしなかったからだ。


司 「美桜ちゃん、気持ちは嬉しいんだけどいいのかい?君は一人暮らしの女の子、僕は得体のしれない通りすがりの男だよ?自分で言うのもなんだけど」

美桜の家に向かいながら話しかける司。
宿泊施設がないと知り、パニックになってつい、受け入れてしまったが、よく考えたらこの子は一人暮らし。やっぱり別の方法を考えないとまずいよなあ。

美桜 「いいですよ。司さんのお話は聞いていてすごく楽しいですし、もっとゆっくり伺いたいです」

司に微笑みかける美桜。彼女からは警戒や危機感などは感じられない。会ったばかりの男相手にここまで無防備で大丈夫なんだろうか。

司 「美桜ちゃんは僕のこと怖いとか思わないの?」

我ながら変なことばかり聞いてるな。
司の言葉にクスッと笑う美桜。

美桜 「司さんは怖くないですよ。私、勘が良くて。初めて会った人をいい人か悪い人かちょっと話しただけでわかっちゃうんです」

司 「本当に?騙されたこととかないの?」

美桜 「ないです」

司 「そうなんだ」

話してる内に美桜の家に着いたようだ。

美桜 「司さん、ここです。さ、入ってください」

平屋建てのその家は、シンプルな造りで中は広かった。



美桜 「お茶持ってきます。座っててください」

リビングに通された司。

目に優しいパステルグリーンのソファに腰かけようとしたが、網戸にした窓からは涼しい風がカーテンを揺らしている。
司は網戸を開けるとベランダに出た。
空を見上げると降ってきそうなくらいたくさんの星が輝いていた。

美桜 「司さん」

お茶を持ってきた美桜が声をかける。

美桜 「本当に星がお好きなんですね」

司 「ああ」

美桜 「美味しいお茶淹れました。冷めないうちにどうぞ」

司 「ありがとう」

司は普段は会社勤めだが、休みの度にあちらこちらにカメラを持って星を撮りに出かけるとのこと。
写真を見せてもらった美桜は美しい星空にうっとりしている。

美桜 「素敵な写真ですね。ここの星空の写真も楽しみにしています」

司 「ありがとう、美桜ちゃん。予定では七夕までここにいるつもりなんだけど」

美桜 「そうなんですか?七夕までは司さんと一緒にいられるのですね。嬉しい」

お互いの得意分野の話は興味が尽きる事なく、毎日話していても飽きることはなかった。
司が話をする時は美桜が膝枕して、美桜が話す時は司が膝枕する…いつの間にかお互いの距離はなくなっていた。

司 「美桜の膝枕は気持ちいいな。ずっとこうしていたい」

話終わると膝に顔を埋めながら囁く司。
そしてそのまま寝入ってしまう。
穏やかで優しい時間。
美桜が大好きな時間。
それは七夕の夜まで続くはずだった。



近江 「司さん、おはようございます。総務の近江です。今日は出勤になってますが…」

司 「え!?休暇は七夕までですよね!?」

近江 「いえ、昨日の7月4日までが休みですよ」

美桜と暮らすようになって5日目だろうか。
急にスマホのアラームが鳴り、出てみると職場から戻って来いとの連絡だった。

司 「いやいや、七夕の7月7日まで休暇申請出してます、ハンコももらってますよ!」

近江 「その書類探してるんですが、なぜか見当たらないんですよね…」

どうやら担当者のミスで有給は4日しか申請されてなかったらしい。

司 「…わかりました。でしたら、後3日有給申請します」

近江 「え〜っと…それはちょっと…」

部長 「もういい。代わってくれ」

近江さんの側で部長の声が聞こえた。

部長 「休暇中の所、申し訳ない。どうやら会社の手違いで4日までになってたようだ。仕事の予定が入ってるから帰って来てくれないか?」

司 「それは私が帰らないといけない案件でしょうか」

部長 「顧客が君を指名してるのだよ」

司 「そう…ですか。でしたら仕方ありませんね、戻ります。が、帰るための汽車の切符の手配が間に合わないので明日の始発で帰ります」

部長 「ありがとう、無理を言ってすまない。気をつけて帰ってきてくれ」

司 「その代わり、7日からは改めて有給休暇いただきます」

部長 「もちろんそれで構わない。じゃあ、よろしく頼む」

通話を切ると美桜が心配そうにこちらを見ていた。

司 「美桜、おいで」

腿に彼女の頭を乗せる。
司は美桜の頭を撫でながら通話の内容を話した。

美桜 「そんな…七夕まで一緒にいられると思ったのに」

美桜の声が震えている。

司 「僕もそのつもりだった。けど、担当者のミスで4日しか休めないようになってたんだ。あと僕しか出来ない仕事があるから戻ってこいって」

司はため息をつく。

司 「美桜ともっと一緒にいたいけど…とりあえず明日の朝イチの電車で帰るよ」

美桜 「だったら、駅まで送るわ。司は道、判らないでしょう?」

司 「昨日、散歩で美桜と駅までの道歩いて覚えたから大丈夫だよ」

次の日。
司は美桜が眠ってるのを確認し、集落を後にしたのだった。

司 「美桜、ごめん。七夕には必ず帰るから」


ヒサコ 「…で?」

ずっと聞いてたヒサコは、弥生に続きを促す。

弥生 「え?」

ヒサコ 「美桜さんと司さんは七夕に会えたの?」

弥生 「え〜っと…どうだったかしら」

ヒサコ 「そもそも美桜さんと司さんって誰なのよ?」

弥生 「…私の前世の姿が美桜なの」

弥生の言葉にヒサコは驚いた。

ヒサコ 「信じられない。自分の前世だってどうして判るの?」

ヒサコの言うことはごもっともだ。
弥生は苦笑する。

弥生 「私は物心ついた時から自分の中に誰かもう1人いるのをずっと感じてたの。それで…あれは高校生くらいの時かしら、怖くなった私は母に相談したのね。そしたら母は家系図を出してきて…調べたら美桜の名前があったの」

ヒサコ 「そんなことって…」

弥生 「嘘だと思うわよね。でも本当に名前があったのよ。私も見つけた時はびっくりしたわ」

困ったように微笑む弥生。

ヒサコ 「美桜さんが弥生さんの前世だってことは判ったわ。じゃあ、司さんは誰の前世なの?」

弥生はハーブティーを一口飲む。

弥生 「司さんは…聡さんの前世の姿」

ヒサコ 「嘘…どうして判るの?」

弥生は目を閉じる。

弥生 「美桜よ。彼女が教えてくれたの」

ヒサコ 「え?ちょっと待って、弥生さんは美桜さんと話せるの!?」

弥生 「ええ。…彼女はずっと司さんを探していたの。そして私が生まれた時にお母さんと一緒にお祝いに来た聡さんの中で眠ってる司さんを見つけたそうよ」

ヒサコ 「眠ってる?」

弥生 「ええ。聡さんには司さんの記憶はなかった。私は美桜に司さんを起こしたいから手伝ってって言われたわ」

ヒサコ 「…手伝うの?」

弥生 「ええ」

ヒサコ 「弥生さんはそれでいいの?」

弥生 「美桜の気持ちはすごく判るもの。ずっとずっと探してきて、やっと見つけたのよ。私は手伝うわ」

ヒサコ 「弥生さんがいいなら…私は何も言えないわね」


7月7日。
なんとか仕事を片付け、有給を取り直した司はあの集落へ向かっていた。

美桜はいつもとは違う着物を着ていた。
それは、身につけると願いが叶うという言い伝えがある不思議な着物で、いつも薬のお代としてたくさんの野菜をくれる女性から渡されたのだ。
女性は美桜の話を聞いて不憫に思い、「七夕に2人が再会出来ますように」とその着物を譲ってくれたのだった。
淡いピンク色のその着物は美桜にピッタリだった。

女性 「美桜ちゃん、よく似合ってるよ」

美桜 「おばさん、ありがとう」

女性 「今日は七夕。司さんはきっと来るよ」

美桜 「来てくれるといいなぁ」

女性 「あ、そうだ。大事なもの忘れてた」

女性は慌てて家に戻り、青地に白の柄が入った着物を持ってきた。

女性 「これは、司さんの着物だよ。持っておいき」

美桜 「司さんの分まで…ありがとう」

女性 「七夕の日に2人でこの着物着ると、そのカップルは結ばれて幸せになるらしいよ」

おばさんの言葉に涙ぐんでしまう。

美桜 「おばさん、ありがとう。もう戻るね。司さんが帰ってくると信じて待っとく」


太陽が西に傾き始める。

美桜 「もうすぐ夜だわ。司、早く帰って来て」

その時インターフォンが鳴った。

ピーンポーン。

慌ててドアを開けると、司が立っている。

司 「美桜」

美桜の瞳が涙でいっぱいになる。
そのまま司の胸に飛び込んだ。

美桜 「おかえりなさい、司」

司 「ただいま。遅くなってごめん」

離れてから改めて美桜を見ると、いつもと違う着物を着ていることに気づく。

司 「その着物初めて見たよ。美桜によく似合っててすごく可愛い」

司の言葉に美桜の頬がピンク色に染まる。

美桜 「ありがとう。司の着物もあるの。着てみて」

司 「僕の分もあるの?じゃあ、着てみるよ」

着てみるとサイズもピッタリだった。
美桜は着物を譲ってもらったことを話した。

司 「へぇ、そんな言い伝えがある着物なんだ」

美桜 「うん。いつも薬もらってるからそのお礼って。司…本当に帰って来てくれて嬉しい…」

司 「約束したからね。ちゃんと守れてよかった。美桜に七夕に会うために、仕事片付けて有給も多めにもらってきたんだ」

そのまま美桜にもたれかかる司。

美桜 「司?」

司 「あ〜、美桜の顔見たら安心して、な〜んか疲れが…」

美桜 「だ、大丈夫?」

司 「だから…」

美桜に頬を寄せて囁く。

司 「久しぶりに美桜の膝枕で癒して?」

真っ赤な顔で頷き、司の頭を腿に乗せる。
2日しか離れてなかったはずなのに、もっと長く離れてたような気がする。
司の頭の重みに幸せを感じながら夜は更けていく。
空には天の川が綺麗に見えていた。

                 終

あとがき

お読みくださりありがとうございました。
今回は伊織少年の母、弥生さんのお話…のはずだったのですが、弥生さんの前世の女性のお話になってしまいました。そしてキャラクター紹介に書かれてた聡さん。何故出てこなかったのか。それは次回のお話になるからです。
聡さんのお話は【母は膝枕】シリーズの最終章になります。
【母は膝枕】シリーズはこちら。

『母は膝枕』は伊織少年、『年下彼氏』は伊織くんの家庭家庭教師の葉月さん、『私は代理母』は箱入り娘膝枕のヒサコさん、それぞれの目線で描いた物語です。
楽しんでいただけたら幸いです。


タイトル画像について

タイトル画像はフォトギャラリーよりひいろさんの画像をお借りしました。
素敵な画像ありがとうございました。


朗読してみたい方へ

読みたいと思ってくださりありがとうございます。
clubhouseでの朗読(非営利)はお好きに読んでいただいて構いません。
私への連絡は必要ありませんが、読んだ後にお知らせくださったら喜んで聞きに行かせていただきます。
楽しんでいただけると嬉しいです☺️



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