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神は細部に宿る ~仕様について~ 介護サービスの品質4


1.品質は仕様に宿る

 子供仕様、大人仕様など、「仕様」という言葉がよく使われます。この「仕様」という概念はサービス業においても大切だと思います。

 仕様とは広辞苑によると「物事を行う方法。行動の手段。」とあります。英語で仕様はspecification ですが、普通は短縮して「スペック」と言われることが多いでしょう。スペックは材料・製品・サービスなどが明確に満たさなければならない要求事項の集まりです。

 サービスの品質はこの仕様次第しだいということになります。

 例えば、食事提供サービスでは、料理の味はもちろんですが、食事をどのような雰囲気の場所で、どの様なテーブルウェア[1](Tableware)で、どのような服装のスタッフが、どのような方法で給仕するのかで、その品質が決まります。
 ただ単に食事を提供すると言っただけでは、そのサービス品質は定まりません。
 よく、「神は細部に宿る: God is in the details」と言われますが、「品質は仕様に宿る」と言っても良いのではないでしょうか。

2.仕様書としてのマニュアル

 介護サービスでも飾りつけ、食事、入浴、着替え、整容、行事、レクレーションなどのサービス仕様について、その満たさなければならない要求事項が明確になっているかを再確認し、自らのサービス品質を明らかにした方が良いと思います。
 例えば、食事の時、テーブルクロスはあるのか、テーブルを飾る花(センターピース)はあるのか、ランチョンマットはあるのか、ナプキンやオシボリはあるのか、お水はあるのか、お茶はあるのか、どのようなお茶か、お茶の種類は選べるのか、テーブルウェアはどのようなものを使うのか等々、詳細を決めておく必要がありますし、それらの仕様が食事の基本的な品質を決めるのだと思います。

 この仕様が高級な有料老人ホームとその他の一般の施設とでは異なってくるのは当然です。(写真1参照)

食事の仕様について(写真例)

  仕様及び手順について定めるのがマニュアルです。
 食事マニュアルに介護福祉士のテキストのように食事の意義とか、食事介助の技術的な記載は不要だと思います。プロの先生方が書かれた介護の教科書、テキストがあるのですから。

 マニュアルはサービスの仕様書であって介護の教科書ではないと思います。

3.仕様とパターナリズム

 蛇足になりますが、施設の書画の展示で気になることがあります。
 書画の展示は、学校での子供仕様の展示と一般の書道教室の展示仕様は異なりますが、(写真2参照)多くの施設では子供仕様の展示となっている場合が多いのかもしれません。

書画の展示仕様例

 もちろん費用の問題もあるでしょうが、ここにもお年寄りを子ども扱いするパターナリズム(温情的庇護主義)の影響があるように思います。

 仕様にもパターナリズム(温情的庇護主義)が影響を与えるのです。

4.呼称など

 普段、介護施設内で当事者(入居者)のことを何と呼ぶのでしょうか。

 お客様、ゲスト、レジデント、ご入居者、入居者様、ご利用者、利用者様等々さまざまな呼称があるでしょうが、施設内では呼称についても皆で検討し統一しておく必要があるでしょう。

 入居者を〇〇「さん」と呼ぶのか、〇〇「様」と呼ぶのか、まさか、〇〇「ちゃん」はないでしょう。 

 また、普段の呼称と行事などの公的な場における呼称とは当然、違うと思います。普段、〇〇「さん」と呼んでいたとしても、公的な場では〇〇「様」とするのが普通ではないでしょうか。

 さらに、職員間の呼称も重要です。職員の呼称を役職者は「理事長」「施設長」「部長」「課長」「主任」「リーダー」などの肩書で呼ぶ場合もあるでしょうし、一律に〇〇「さん」と呼ぶ施設もあるでしょう。
 一般の職員に対しては〇〇「さん」付けするのが一般的でしょうね。
 国会議員のように「君」付けしている施設はきっとないでしょうね。

 私は、職員間も役職に関わらず全て「さん」付けで呼ぶ方が入居者に職場、組織を意識させることが少なくて良いと思っています。

5.「その人らしさ」(ベッド周り・個室)

 入居者の部屋、またはベッド周りに、「その人らしさ」が見られるかどうかは非常に重要なことです。
 ここでいう「その人らしさ」とは、その当事者の個人史[2]や家族の情報、文化的な好み、趣味などの情報のことです。

 入居者の身の回りに、例えば、家族の写真、若い頃の写真、好きな絵画や置物、お孫さんの絵や習字などを飾るのは、「その人らしさ」を表現することになります。
 また、個室であれば、好きなお香などもその人らしさの演出になりますし、好きな音楽を聞けるようにすることも大切なことです。

 私は、もしあるのであれば。特に入居者の若い頃の写真や、家族の写真は飾った方が良いと思っています。
 職員にとって入居者の若くて輝いていた頃の写真はその方の個人史に触れる良い機会となるでしょう。

 個人史に触れるということは、ただの「入居者」としてではなく、一人のかけがえのない、単称名辞・固有名詞が指し示す個別の人間との出会いにつながり、感情教育(朱喜哲・ローティ)につなげることができるのではないかと思うのです。

 感情教育については、以下の「6.感情教育の可能性」をご参照願います。

 このような個別性、個性、「その人らしさ」を表現すること、演出することはabuse/虐待を防止する効果があると思うのです。

 殺風景な個室やベッド周りは人の住むところではありません。パノプティコン、監獄と同じで、そこではabuse/虐待の臭いがします。

 尊厳は見えないけれど、尊厳が蔑ろにされているのは見えます。
 
サービスの仕様自体が尊厳が欠けたものになっていないか、見直しすることも必要だと思います。


[1] テーブルウェア(Tableware)とは、食卓に食べ物や飲み物を供するために使う食器類である。テーブルウェアにはフォークやナイフやガラス食器(グラスウェア)も含まれる。

[2] 個人史とは、個々人の歴史。その人の経歴、半生、生涯、といった意味。


 以下のnoteも併せてご笑覧願います。


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