ナレッジマネジメント|知が循環する組織はなぜ生まれにくいのか?
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。
[1] PROLOGUE|導入
テーマ概要
社会人として組織で働くうちに、改めて社会とは集団で成り立っていることを実感します。そして会社というのは、まさに集団プレーそのものだと体感します。
新人のころは、自分に任された仕事に意識が集中しがちです。しかし、経験を重ねて組織全体を俯瞰できるようになると、個々の仕事が独立しているように見えても、実は互いの連携によって支え合っていることに気づくようになります。
そしてこう感じるようになるでしょう。
「もっとみんなが連携すれば、パフォーマンスも上がるし、自分の負担も減るはずだ」と。
ナレッジマネジメント、すなわち知識創造経営という考え方は、何十年も前から存在しています。しかし人間はどうしても、自分の仕事をこなすことに意識が向きやすいものです。「自分の仕事さえ終わればいい」と、無意識のうちに思ってしまう人も少なくありません。
知識を共有し、助け合うことが自分のためになる。その単純な理屈を、人はなかなか“自分ごと”として捉えられないのです。
「情けは人の為ならず」古い言葉ですが、その本質はいまも変わりません。
本来は、仲間と知識を共有し支え合うことで、無駄な残業を減らし、自分自身の仕事もより良くできるはずです。にもかかわらず、それを「自分のためのこと」として実感できないことが、集合知を活かせない大きな要因なのでしょう。
今回は、ナレッジマネジメントの本質と、その重要な要点を一枚の図解にまとめました。「知が循環する組織とは何か?」その構造を紐解くための骨組みを示します。
参考資料
知識創造の経営、野中侑次郎
知識創造経営の実践(ナレッジマネジメント実践マニュアル)、河崎健一郎、アクセンチュア
個人と組織のナレッジイノベーション、マイクロソフト
[2] CORE|本編
思考回路 - 図解ツール
こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

図の解説 - 紙芝居形式
図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全12枚
組織の中で仕事をしていると、各メンバーは日々の業務を通して知識を獲得していく。それらは彼らの脳内に暗黙知として蓄積されていく。

組織がバラバラに動いている限り、この暗黙知は個人の中に埋もれたままになる。そして、ある個人がいなくなってしまうと、その人に蓄積された知識も同時に失われてしまう。

組織力とは、集団としての力である。だからこそ、個人に眠る暗黙知を表出させ、形式知として残し、組織知として蓄積・活用することが、組織を組織たらしめる。ナレッジマネジメントとは、まさに集団の知識を経営することである。
しかし「集団の知識」だからこそ、構造的かつ建設的に構築しなければ、ただの形骸化した活動に終わってしまう。

組織は仕事を遂行するために集まった集団である。だからこそ、現場の仕事の流れを構造化し、可視化することが欠かせない。組織がどのような仕事を包含し、その中でどのようなタスクが発生し、各タスクにどのような知識が必要なのか。
まずは全体を把握することから始まる。むしろ、それを把握していなければならない。そして、各タスクにどのような知識が求められているのかを明確にすることで、知識活用の目的が定まる。

そのうえで、個人が持つ有益な情報を抽象化し、標準化する。さらに、標準化した知が本当に価値あるものか、その質を判断できる人材も組織には必要である。

知識を保管し、活用するためには、現代においてIT技術の活用が不可欠である。システム基盤やワークフローとして構築し、仕組み化することで、メンバーが必要な知識に容易にアクセスできるようにする。

そして何よりも、組織知は一度構築すれば終わりではない。仕事は常に進化し、変化していく。だからこそ、メンバーが
能動的に活用する
活用せざるを得ない
活用したくなる
そのような仕掛けが必要だ。それは文化であったり、内的・外的な報酬制度であったりする。こうした仕掛けによって知識が活用され、更新されていく。
ナレッジマネジメントの目的は知識を蓄積することではない。知識を活用し、組織パフォーマンスを向上させることである。そのためには、投資に対してどれだけの効果が得られているかを算出・モニタリングできなければならない。

このように、組織知を個人が活用できることで、新たな知識が個人の内面に蓄積され、それが再び組織内で共有される。こうして知識が循環していく。

また、知識はシステム基盤を通じて循環するだけではない。組織内にしっかりとしたコミュニティが形成されていれば、その中でも知識が共同化され、循環が促進される。

このような全体の流れを構築できていない組織は多い。ある例では、「仕組みを導入すれば完成だ」「システムを整えればナレッジマネジメントは終わりだ」と誤解しているケースが見られる。
しかし、知識の構造化がなされていなければ、集められた知識は整理されず、やがて情報の山に埋もれてしまう。そうなると、メンバーは活用意欲を失い、知識を提供しようとも思わなくなる。その結果、システムはいつしか「死んだ仕組み」となっていく。

また別の例では、懸命に形式知を作り込んでも、それを管理する仕組みや、構造的に整理された土壌がないために、せっかくの努力が無駄になってしまう。時間も労力もかけて作り上げた知識が、やがて誰にも使われなくなる。

このように、ナレッジマネジメントの必要性は世の中で認識されつつあるが、依然として理解が浅い組織も多い。多くの企業は標準化や仕組み化ばかりに注目しがちだ。
しかし、構造化し、標準化し、仕組み化し、さらに仕掛け化することで初めて「生きた組織知」が生まれる。マネジメント層がこのことを理解できない限り、組織はいつまで経っても、個人知の集合体から抜け出すことはできない。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「組織力」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。
[3] INSIGHT|考察
図解をまとめての感想
集合知という概念には、昔から関心がありました。
たとえば組織の中で、自分がこれまで整理してきた知識やノウハウを部下にしっかり使ってもらいたいと思うことがあります。それによって部下のパフォーマンスが向上すれば、チーム全体に余力が生まれ、その余力が新たな付加価値を生み出すからです。
そして同時に、自分が知らないことを仲間から教えてもらいたいとも思います。そうすることで、自分一人で仕事や勉強をしているだけでは得られない視野の広がりや成長を期待できるからです。
このような関心の集大成が、「図解の本棚」という活動につながっています。知識を問いのインデックスとして構造化し、本棚のように世の中に共有する。しかし、その活用を広めるためには、どのように「仕掛け化」していくかが難しい課題です。
さて、組織におけるナレッジマネジメントについて改めて考えてみましょう。
私の経験から言えば、ナレッジマネジメント、すなわち組織の集合知を増大させるためには、何よりも「マネジメント層の深い理解」が欠かせません。ナレッジマネジメントを正式な業務として位置づけ、その推進者に権限を与えること。たとえば、現場メンバーを活動に参加させる権限などを付与すること。それができない限り、図解で示したような全体の仕組みを動かすことはできません。
これまで、転職前や転職後の職場、あるいは会社内での組織変更のたびに、ボトムアップでナレッジマネジメントに取り組んできました。しかし、権限の欠如や組織内での周知不足によって、どの取り組みも途中で尻すぼみに終わってしまった経験がいくつかあります。
多くの企業は「効率化」「利益拡大」「働き方改革」といったテーマを掲げますが、組織の集合知をどう増やすか、という点に意識が向いていません。あるいは、そもそもそのイメージを具体的に持てていないのかもしれません。
なぜなら、成功体験がないからです。人間は不思議なもので、経験したことのないもの、イメージできないものを目指すことはできません。
そしてそもそも現代の複雑化した組織、特に大企業では、組織全体の仕事の構造を誰も把握できていない。それこそが、ナレッジマネジメントが根づかない本質的な原因ではないか、私はそう考えています。
[4] NAVIGATION|関連情報
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