未来の娘に綴る一枚図解|いじめに出会ったとき
このシリーズは、未来の娘に向けて、父として伝えておきたいことを今のうちに書き残すために作り始めました。生きる上で大切な考え方や社会の問題を、一枚図解で整理しながら、手紙形式で届けていきます。
小学5年生になった娘へ
だんだん成長すると、楽しいことだけでなく、悲しいことやつらいことも経験するようになるだろう。だから君の父として、そして人生を少し先に歩んでいる先輩として、伝えておきたいことを綴っておこうと思う。
今回のテーマは「いじめ」についてだ。
これを読んでいるころ、君のクラスはみんな仲がいいだろうか。今の君はまだ小学校低学年だから、クラスにいじめは存在していないと思う。君の話を聞く限りでは、やんちゃな男の子がいるくらいだよね。
小さいころは、みんな「友達」ではあっても「仲間」という意識はまだ薄かったと思う。でも小学校の中学年くらいになると、仲のいい友達同士の集まりが目立ってくる。そして少しずつ、クラスで目立つ子とおとなしい子が分かれてくるんじゃないかな。
そうやってクラスに「雰囲気」が生まれていくんだ。
楽しい雰囲気もあれば、嫌な雰囲気も出てくるだろう。その嫌な雰囲気こそが「いじめ」の始まりかもしれない。
その雰囲気にどう向き合うか、それがとても大切になるんだ。
君も普段、嫌な気持ちになることはあるだろう。父さんや母さんに「勉強しなさい」と言われたり、「ゲームをやりすぎないように」と言われたり、最近では「スマホを触りすぎないように」と言われたりね。欲しいものを買ってもらえなかったり、テストで悪い点を取ったりすることもあるよね。
でもそれは君だけじゃない。周りの友達だって、それぞれ君には見えないところで嫌な気持ちを抱えているんだ。お家の事情はみんな違うから、買ってもらえるもの、やらせてもらえること、家族の雰囲気も全然違うんだよ。

そんなとき君はどうやって気持ちを晴らしているだろう。好きな音楽を聴いたり、絵を描いたり、テレビを見たり、おいしいものを食べたり。仲のいい友達とおしゃべりをして嫌な気持ちを忘れることもできるよね。

でもね、クラスにこんな子はいないだろうか。意地悪をしたり、乱暴だったり、悪い言葉を使ったりする子。その子は、家などで嫌な気持ちをたくさん抱えていて、それを安心して話せないのかもしれない。

そんな中、クラスの中で目立つ子たちと、おとなしい子たちの集まりができていないかな。そうすると、目立つ子たちの雰囲気が「リーダーっぽい」「イケてる」という感じになって、クラスのみんながなんとなくそれに合わせようとしてしまうんだ。

すると「俺たち、私たちは偉いんだ」と考える子が出てくることもある。そういう雰囲気が出てくると「悪ノリ」が始まるんだよ。「あいつをからかってやろうぜ」ってね。もちろん、みんなが加わるわけじゃない。嫌だなと思える子もいる。でも「やめようよ」と声を出すのは難しくて、どうしても関わらないようにするだけになるんだ。

そういう悪ノリがエスカレートすると、たまった鬱憤を特定の誰かにぶつけようとし始めるんだ。「バイ菌扱いしようぜ」「無視しようぜ」とかね。ひどいときには、物を奪ったり傷つけたりもする。

そしてそれを本当に実行してしまう。人は集団になると強気になって、勢いで行動してしまうんだ。そうやっていじめが始まっていく。

いじめられる子が大人しかったり反抗しなかったりすると、いじめる側からすると「自分の思い通りになるオモチャ」のように感じてしまう。するとゲームのように「自分の思い通りの小さな世界」ができて、とても満足するんだ。でも、いじめられる子にとってはたまったもんじゃないよね。

もし反抗してくる子だったら、いじめる側は「逆ギレ」してくるだろう。ゲームで思い通りにならずイライラするのと同じだ。「思い通りにならなくても仕方ない」と考えられず、「自分の思い通りにさせないあいつが悪い」と言い訳をするんだ。

いじめは最初は本当に小さなことから始まる。ちょっと無視するとか、悪口を言うとかね。でも繰り返すうちに人間は慣れてしまって、同じことでは満足しなくなる。だからだんだん「もっとすごいことを」とエスカレートしてしまうんだ。悲しいことに、いじめをきっかけに命を絶つ事件も実際に起きている。

しかもいじめられる人は変わることもある。ちょっと前までいじめる側にいた子が、輪の中から外れてしまうと、今度はその子がターゲットになることもあるんだ。そしていじめは子どもたちの世界だけじゃない。大人の社会でも会社でも町の中でも起きる。先生同士の間でさえあるかもしれない。

クラスのように同じ人と毎日顔を合わせていると、そのクラスが世界のすべてに思えてしまうこともある。家と学校の往復だけになると特にそうだね。

本当は社会には法律や道徳があって、子どもたちを守るものなんだ。でもクラスの中では「法律違反だから罰せられる」という感覚はほとんどない。だから本当は「いじめ」ではなく「犯罪」なのに、学校に行かなきゃと思うと、その場から逃げられなくなってしまうんだ。たとえば人の物を盗むことは窃盗、怪我をさせることは暴行。これはもう立派な犯罪なんだ。

もう一度言うよ。人の物を盗んだり壊したり、人を傷つけたりすることは、もはやいじめではない。ただの犯罪だ。友達同士の小さな悪口とはまったく違う。でもクラスの中では「自分たちがルール」になってしまう子たちがいるんだ。

でもね、いじめをする子たち自身も、大人や兄弟から嫌な思いをさせられている場合が少なくない。大人になって振り返るとわかるよ。「自分は辛い思いをしたから、他の子にいじめをしてもいいんだ」と考えてしまう子もいる。でも、それはいじめていい理由には絶対にならないんだ。

だから彼らにとっては「自分たちのルール」が一番大事で、法律や社会の常識なんて関係ないのかもしれない。

最後に全体を見ておこう。人は小さなグループになるほど特別な「ノリ」が生まれやすい。そしてそれがいじめの発端になり、エスカレートしていく。でも世の中にはもっと大きな世界がある。だから嫌な場所からは逃げてもいいんだ。逃げることは負けじゃない。むしろ自分を守るための強い選択なんだよ。それだけは覚えておいてほしい。

どうだったかな。楽しい話ではなかったかもしれないね。
でも2つだけ、しっかり言っておきたい。
君は人をいじめるような人間になってはいけない。ただつまらない時間を過ごすだけだ。父さんは君を信じているよ。
そして何より、本当にもしものことがあったら、父さんや母さんに話してほしい。無理して学校に行くよりも、君が生きて笑っていられる場所でいてほしい。父さんも母さんも、ずっとそう願っている。逃げる場所はいくらでもあるんだから。
いじめは小さなことから始まるし、どこにでもある。父さんも子どものころ嫌なことをされたことがあった。でも今、元気に働いているよ。世界は広いんだ。
この続きを、いつかカフェででもゆっくり話せたらうれしいな。
ここまで読んでくれてありがとう。
父より
参考にした本や情報
いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか、内藤朝雄著、講談社現代新書
いじめの構造、森口朗著、新潮新書
いじめの問題に対する施策、文部科学省HP
この記事は以下の記事のリブートです。
娘へ綴った図解
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