弁護士報酬とフリーランス法の支払期日(2)

前回の記事では、従業員を使用していない弁護士にはフリーランス法の適用があることを解説しました。

本稿ではまさに本論である、フリーランス法に従うと弁護士報酬の支払期日をどのように設定しなければならないのか、について解説したいと思います。

1.報酬支払期日の原則論ー役務提供日から60日以内

役務提供型の業務委託の場合、役務提供日から60日以内の出来るだけ短い期間内を報酬の支払期日として定める必要があります。

(報酬の支払期日等)
第四条 特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた日。次項において同じ。)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

【フリーランス法4条1項】

ここでいう「役務の提供を受けた日」とは、以下のように解釈されています。

役務の提供を委託した場合における「給付を受領した日」とは、特定業務委託事業者が特定受託事業者から個々の役務の提供を受けた日をいう。役務の提供に日数を要する場合には、一連の役務の提供が終了した日が役務の提供を受けた日となる。

解釈ガイドライン】20頁

弁護士の業務は様々であり、上記の基準を一律に適用して結論を出すことは難しい側面があります。以下、代表的な報酬について、「役務の提供を受けた日」、すなわち、報酬支払期日の起算点となるのはいつかについてみてみたいと思います。

2.弁護士報酬の種類

弁護士報酬の計算方法としては、

①着手・報酬金方式
②タイムチャージ方式
③手数料方式

が考えられます。

その他、

④顧問契約に伴う顧問料

もあります。

(1)着手・報酬金方式

ア 着手金
着手金はその名のとおり、事件の着手時に支払われます。これは、旧日本弁護士連合会報酬等基準(以下「旧報酬基準」といいます。)において、着手金の支払時期を、

「事件又は法律事務(以下「事件等」という)の依頼を受けたとき」

と規定していることによります。

フリーランス法上、事件報酬の支払時期は、上記のとおり役務提供日から60日以内であるとされていますが、事件の着手時には未だ役務の提供を行っていません。したがって、着手金は、報酬の一部を先払いされたものと考えることができます。

イ 報酬金
他方、報酬金は、旧報酬基準によると、

「事件等の処理が終了したとき」

に支払われるものとされています。

弁護士の仕事は、受任した業務を遂行することです。したがって、フリーランス法上の報酬支払期日に照らすと、報酬金の支払期日は、受任業務遂行完了日=「事件等の処理が終了したとき」から60日以内ということになります。

なお、例えば原告側の金銭請求訴訟において、報酬金の支払日を「被告からの金員を受領した日から60日以内」と設定することはできるでしょうか?

事件等の処理は、まさに訴訟が終結したときに完了しており、相手方から金員が入ったか否かは無関係です。したがって、原則として、実際に金員が入ってから60日以内の支払期日では遅すぎることになります。

もっとも、この問題は、委任内容の設計如何によって回避することができます。上記のとおり、原則として「役務提供日」が支払期日の起算日ですが、成果型の業務委託契約では、例外的に「成果」が上がった日を起算日とすることが認められているためです(フリーランス法施行令パブコメ回答2-2-8)。

すなわち、弁護士が執行手続や取立てをも委任されているような場合には、被告から回収できたことを「成果」とみて、被告からの入金日を起算日として、その日から60日以内に支払期日を設定することもできると考えます。

なお、交渉の場合には、交渉行為と取立行為を分けて考えることは実態に即しませんので、相手方から実際に金員が支払われた日を報酬金の起算日とすることは特段難しくはないと考えます。

(2)タイムチャージ方式

タイムチャージ方式の場合、個々の業務を細かく見れば、項目ごとに役務提供が完了しているとみて、項目ごとに60日以内が支払期日とみることもできます。もっとも、このような請求の立て方は非常に煩雑ですし、タイムチャージごとの業務を委託したというのは当事者の意思にも沿いません。

したがって、タイムチャージ方式の場合、上記解釈ガイドライン20頁の、「役務の提供に日数を要する場合には、一連の役務の提供が終了した日」に従い、「タイムチャージ方式によって算定される一連の業務が終了した時点」をもって起算日とすることになります。

(3)手数料方式

契約書のチェックや見解書の作成など、単発の業務に関しては、1件当たり〇〇円の弁護士報酬と規定されることがあります。

このような手数料方式を採用する場合、役務提供日は非常に分かりやすく特段疑義はありません。

例えば、契約書のチェックが完了してチェック結果を添付したメールを送信した日見解書を送付した日などです。

(4)顧問契約

顧問契約はやや特殊です。なぜなら、月稼働がない場合であっても顧問料が発生する仕組みとなっているからです。

厳密にいえば役務提供がなければ支払期日は永遠に訪れないことになりますが、この点は置いておきましょう。

フリーランス法上、毎月行った役務提供を月末に締め、翌々末日までに支払う支払方式が認められておりフリーランス法Q&A 48)、顧問契約の支払日は基本的にこの方式に沿って定められているといえます。

いかがでしたでしょうか。フリーランス法はお互い合意していればいいじゃないか、という論理が通じない法律です。

以上のとおり、現状の弁護士報酬は、基本的にはフリーランス法で要求されている支払期日よりも早めに設定されていることが多いです。

しかしながら、今後は、クライアント側だけでなく、弁護士側もクライアントに法令違反をさせないために、支払期日を定めるのは勿論のこと、適正な支払期日を提案する必要があると考えられます。

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