「残りは投資しない」という方針を1ヶ月で変えた理由
先日、一時貸付金による資産運用について次の記事を書いた。
約300万円を投資し、残りの約460万円は無理に投資せず、現金のまま返済するつもりだった。しかし、その後の中東情勢と為替相場の変化を受け、追加で投資することにした。現在の投資額は約610万円となり、借入金に対する投資比率は 39.6% から約 80% へ上昇している。
本稿では、この1ヶ月間における方針変更の判断過程を書いてみる。
財務ポリシーと運用期間の考察
個別銘柄に対する短期的利益を狙った資産運用は、次の記事で設計した当社の財務ポリシーに反している。
一方で経営セーフティ共済の保険に資金を預けた状態というのは、これからのインフレ時代において価値が毀損していく懸念がある。さまざまな資産がある中の、現金 (貯金) の保有比率をどの程度にするかは機会損失を避ける上で重要になっている。
また当社のような、ひとり会社における資産運用は個人の資産運用とは大きく異なり、長期運用に向きにくい。法人を維持するには毎年確実に経費がかかり、そのコストを考慮する必要がある。さらに会社を清算する可能性もある。たとえば20年後の利益を期待して途中の大きな価格変動を受け入れるような資産運用の戦略は取れない。
これらの事情を考えると、あながち短期的利益を狙うことにも合理性が出てくるかもしれない。一定期間内に利益が見込める局面において投資し、状況に応じて資金を回収する。なるほど。資産運用とは難しい。答えはない。
中東情勢の変化
冒頭で引用した記事で次のように書いた。
いま借り入れした資金の約40%を投資したわけだが、残りの60%はどうするのか?
実は投資せずにこのまま現金で保持しておくことを考えている。理由は先ほども述べた通り、なにに投資してよいか、私が理解できるロジックを組み立てられていないからになる。
この先なんらかのリスクが顕在化して、大きな調整や暴落がきたら押し目で買う可能性はあるが、このままとくに何も起こらないときは1年後に借りたお金を返すだけにする。今回は一時貸付金を借りて資産運用する経験を積み、その学びを得ることが第一の目的としている。本稿を書いていること自体もその1つといえる。市場の現状分析を私がよくわからない状態でリスクは取らないという方針で進めようと考えている。
当時は本当にそれ以上の投資をする気がなかった。もっと言うと、その時点での覚書の停戦合意が8月下旬 (60日間) であったことから、そのぐらいの時期になんらかのリスクが再燃するのではないかと私は考えていた。
私が信頼している中東情勢の情報源の1つとして齊藤貢先生のインタビュー動画がある。
齊藤先生がホルムズ海峡の問題は双方の利害が真っ向から対立していて年内では落ち着かないのではないか?と初夏の頃から話されていたように思う。齊藤先生の先見の通り、いまの状況にいたる。私もその見通しは説得力があると支持していた。
背景としては、7月上旬、イランによる航行中の商船への攻撃と、それに対する米軍の報復攻撃が続き、それまでの停戦合意が崩れ、戦闘再開が明確になった。今後どのように情勢が変化していくのか、私にはまったくわからないが、複雑な状況にあることは確かにみえる。
セクター投資戦略
マクロ経済の変化からその恩恵を受けそうなセクターを選択して次の銘柄に投資していることを先月の記事で書いた。
なぜこれらの銘柄を選択したかの最大の理由は「なにに投資してよいかが分からない」という消極的理由になる。
いまもそうだが、私がわからないため、現金を別の資産に変えるという意図でエネルギーや金融というセクターを選択して投資している。
いまの投資状況
6月末の時点で次の2つの銘柄に約300万円 (資金の 39.6%) を投資していた。上述した中東情勢の変化をみつつ、さらに追加の投資をした。その結果、セクター投資は約490万円 (資金の64.5%) まで増えた。
借り入れ金が 760 万円なので 760 - 490 = 270 万円が残りの資金となる。
また6月末の時点では、2つの銘柄を合算して -1.46% の評価損であったのも、現時点では 5.16% の評価益と改善した。これは私の想定に沿った値動きのようにみえる。
念のため、これらの銘柄選定や見通しは、一般的な投資判断として推奨しない。私はアナリストではなく市場分析も荒い。私個人の限られた情報における現状分析であり、あとでふりかえりをするときの記録のために書いている。儲かったらもちろん嬉しいが、今回の借り入れによる投資は利益よりも実際の運用経験を積むことを目的にしている。
自身の学びのため、過去にやったことのない取り組みの経験を積むことに大きな価値を置いている。1年後になにが起きるか、起きたことに対する分析やふりかえりができることを重視している。
為替介入と日米金利差の行方
先月、次のようなことも書いた。
もう1つ。借り入れのタイミングを外してしまい、投資を見送ったが、この先、政府の為替介入があったタイミングで余剰資金を外貨建て MMF に少し投資してもよいかなとは考えている。
ドル円が165円に届く・届かないといった状況で推移していた中、日銀の金融政策決定会合の1日目の夜 (30日の夜) という、サプライズな状況での為替介入とみられる急激な円高が起きた。
為替介入があれば米ドルの外貨建て MMF を購入しようと決めていたので7月31日に購入した。
投資額: 約120万円
取得為替: 160.98 円
税引前年率換算利回り: 3.3317 %
約270万円残っていた資金のうち、約120万円を外貨建て MMF の購入にあてた。残りの資金は 270 - 120 = 約150万円となっている。
7月31日の夜にも追加の為替介入との観測があったり、米財務省もレートチェックや協調介入といった話題も出ており、週明けはさらに円高が進む可能性が高いとみている。その状況をみながら、残りの資金も外貨建て MMF の購入にあてようと考えている。
戦略的に投資する
これまでの資産運用から学んだことが1つある。少し先の未来に対して、いくつかのシナリオを想定しておく。格好よく戦略と呼んでもよい。そして、その状況になったときに、あらかじめ決めておいた施策を取る。資産を買ったり売ったりする。これはとてもストレスが少ない。
なにか事件やニュースが起きる度に考えているのではなく、起きる可能性を想定した上でのシミュレーションを事前に済ませてある。今回の例で言えば、為替介入があれば外貨建て MMF を購入する、なければ何もしない。
いまこの記事を書いている時点で為替が157円になっている。31日に購入した後にさらに円高が進んだため、現時点での外貨建て MMF は -2.27% の評価損となっている。一見すぐに購入せずにもう少し待てばよかったのではないか?損をしているようにみえるかもしれない。
しかし、追加介入がある可能性も想定していた。そのため、残りの資金を31日にすべて投資していない。追加介入も考慮して段階的に外貨建て MMF を購入していく。これは私がこれからもしばらく円安に進むという見通しで戦略を立てていることに由来する。
念のため、為替がこの先どうなるかは誰にもわからない。自分が立てた戦略が誤っていればもちろん損をするだろう。しかし、それは現状分析や戦略を練った上での施策であり、あらかじめ決めていたシナリオであり、なにかの状況に当てられて右往左往しているわけではない。
経営者の感情で投資判断しない。あらかじめ対応を決めておくことで起きた状況に対する葛藤や逡巡を減らせる。この例で言うと、外貨建て MMF を購入した直後に円高が進み評価損になっても動揺せずに済む。今回の事例から私が学んだことといえる。
まとめ
ほんの1ヶ月前に「何もしない」と言っていたにも関わらず、残り資金の使途が大きく変化した。当時のしないという判断は、市場環境が大きく変わらないことを暗黙の前提としていたことに気付いた。
いま変化が起きている状況においては、あらかじめ用意していた戦略を適用して資金の使途を変えた。セクター投資では評価損益の改善はみられたが、外貨建て MMF では為替差損となっている。いずれも途中経過であり、これから想定に沿った値動きになるかどうかはわからない。
AI はこれらの戦略を練るときの、情報整理やシナリオの抜けや矛盾を確認する相談相手となる。過去の事例から導ける平均的で無難な資産運用の戦略も助言してくれる。しかし、決めるのもその結果に責任をもつのも人間である。実際に行動して得られる経験や知恵の価値に投資するというのが、いまの私の戦略になる。判断の基準と経緯をふりかえり可能な形にしていくのが、AI 活用の1つであると考えている。

