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経営セーフティ共済の一時貸付金で資産運用を試してみた

財務ポリシーを策定する過程で 経営セーフティ共済 についての財務の視点からの特性を過去に調べた。あくまで保険制度であり、これからの時代においてはインフレ耐性がないという特徴がある。

資産運用の一環として、インフレ時代に経営セーフティ共済を保持しても価値が毀損していく懸念がある。解約を検討していたときに税理士さんから一時貸付金制度というのもあるよと教えていただいた。感謝。

本稿では経営セーフティ共済の一時貸付金制度といまの投資戦略について紹介する。


経営セーフティ共済の解約と借り入れ

経営セーフティ共済の解約は全額を一括解約しかできない。そのため、経営において利益がある状態だと、過去に節税した金額を税金として支払うことになる。もともと節税していた税金を納めることになるので損をするわけではない。

昨年末あたりから AI バブルの懸念が高まっている。近い将来、AI バブルが弾けて景気後退の時期がやってくるとみられているが、それがいつやってくるかは誰にもわからない。2026年にはやってきそうにないし、2027年3月までみてもやってこない確率が高いのではないかと私は考えている。

経営において節税するのであれば、会社の売上が下がる年度に経営セーフティ共済を解約することが税務上は都合がよい。そんな中、解約を1年先送りしつつ、掛金の一部を借り入れすることで資金化できる制度があることを知った。

一時貸付金制度

借り入れできる限度額は掛け金の納付月数によって変わってくる。上限の800万円を納付していると、次の計算式で760万円まで1年間借り入れできる。

$$
8,000,000 \times 1 \times 0.95 = 7,600,000
$$

これだけの金額を金利 0.9% で借り入れできる。

借入期間: 1年(償還期日の約1か月前に、『償還金振込票』が送付されます)
利率: 金融情勢等により変動します。(令和6年4月1日時点の利率: 年0.9%)

一時貸付金の借入条件

資産運用の文脈で捉えれば、760万円を借りて自分で運用し、0.9% 以上の利回りがあれば得するという論理になる。昨年から資産運用に取り組み始めた私にとって、これはおもしろい取り組みだと感じた。もちろん、投資元本が減れば金利以上の損失が出る可能性がある。そのリスクの考え方は経営者次第になる。私は実験可能なリスクであると判断した。

なによりも、私自身が過去にやったことのない取り組みの経験を積むことに大きな価値を置いている。もっとうまくやればよい、なぜそんな失敗をするのか、世の中の出来事を傍からみていて思うときがある。しかし、自分で実際にやってみると、想定していなかった状況や制約があり、その結果として傍からみたときに滑稽な失敗をおかしてしまうことがある。自分が知らないこと、実践したことのないことを軽視しないという戒めも含め、できる限り初めての取り組みは重視しようと考えている。

経営セーフティ共済の一時貸付金制度を使い、自分で資産運用をする過程で考えることそのものに価値があると私は判断した。

1年で一括返済するだけでなく、「同額借換」という手続きをすれば、さらに利息を払って借り続けることもできるらしい。

一時貸付金の返済方法は、一括返済(期限一括償還)となりますが、『同額借換』の手続きを行い、借換後の借入額に対する約定利息をお支払いいただくことで、借入金額を返済することなく、手続きから1年後を約定償還日として新たに借入れることができます。

一時貸付金 同額借換

一時貸付金の資産運用

5月中旬に手続きを終えて1週間程度で指定した銀行口座に一時貸付金として 7,531,600 円が振り込みされた。これは金利 0.9% (68,400円) がすでに引かれた金額に相当する。

$$
7,600,000 \times (1 - 0.009) = 7,531,600
$$

投資銘柄の選定

一時貸付金を受け取ってから約1ヶ月の間に少しずつ投資して約300万円 (資金の 39.6%) を次の個別株に投資した。

念のため、これらの銘柄選定や見通しは、一般的な投資判断として推奨できるものではない。市場分析としても粗く、私個人の限られた現状分析と相場観に基づくものであり、あとでふりかえりをするときの記録のために書いている。そのことを注意して読み進めてほしい。

なぜこれらの銘柄を選択したかの最大の理由は「なにに投資してよいかが分からない」という消極的理由になる。あとで運用成績の評価をしやすいよう、意図的に投資信託とは別にしているのはある。

今回は投資したい目的があって一時貸付金を借りたわけではなく、一時貸付金を借りて資産運用する経験を積みたいと考えて借りたわけなので、借りてから思うことではあるが、このお金をどうしたらよいだろう?となってしまった。まさに傍からみると滑稽である。

AI・半導体銘柄に投資するのはもはや怖いし、市場動向もまったく読めていない。いずれやってくる AI バブルの崩壊も想定しつつ、あまり影響を受けない銘柄にしておこうといった程度の根拠になる。

中東情勢の地政学リスクの緩和により、原油プレミアムが剥落して原油価格が大きく落ちている。それにあわせてエネルギー銘柄の株価も下がっている。一方で中東の石油関連施設の被害やホルムズ海峡航行の不透明感は未だに燻っているようにも感じる。また 6月の米 FRB で年内利上げを見込む市場観測も出てきている 。これにより、日米金利差の縮小が遠のくことになる。

これらの分析を踏まえ、私は2026年中は原油価格は大きく下がらず、円安も当面は継続する可能性があるとみている。INPEX のような資源・エネルギー企業の利益に円安はプラスに作用しやすい。

銀行セクター ETF について、日本はこれからインフレに進むことを想定すると (そして原油高もインフレ圧力) 、日銀も徐々に利上げをしていく見通しが共有されつつある。一般論として金利上昇は銀行の利ざや改善につながりやすい。

いまの投資状況

2つの銘柄を合算して現時点では -1.46% の評価損失となっている。これが1年後にプラスになっていれば嬉しい。もしマイナスのままでも、このぐらいの金額であれば、投資信託を売却するか、事業運転資金から余剰にまわすか、さらに1年を同額借換するか、そのときの状況に応じた選択を考える。

最低限、金利 0.9% (68,400円) を稼がないと損失になる。しかし、現時点で金利分の見込みもある。投資した銘柄の配当金と分配金を、昨年と同じ金額であった場合を仮定すると約9万円になる。このまま何もしなくても金利をまかなえる見通しはたっている。

これからの投資見通し

いま借り入れした資金の約40%を投資したわけだが、残りの60%はどうするのか?

実は投資せずにこのまま現金で保持しておくことを考えている。理由は先ほども述べた通り、なにに投資してよいか、私が理解できるロジックを組み立てられていないからになる。

この先なんらかのリスクが顕在化して、大きな調整や暴落がきたら押し目で買う可能性はあるが、このままとくに何も起こらないときは1年後に借りたお金を返すだけにする。今回は一時貸付金を借りて資産運用する経験を積み、その学びを得ることが第一の目的としている。本稿を書いていること自体もその1つといえる。市場の現状分析を私がよくわからない状態でリスクは取らないという方針で進めようと考えている。

もう1つ。借り入れのタイミングを外してしまい、投資を見送ったが、この先、政府の為替介入があったタイミングで余剰資金を外貨建て MMF に少し投資してもよいかなとは考えている。

(2026-08-02 追記) 残りの資金の追加投資について

この後は資産運用とは関係ない、一時貸付金の申請をしているときに起きた余談を紹介する。

収入印紙という非日常感覚

一時貸付金の申請は、紙の申請書類を取り寄せて記入し、その申請書類に収入印紙を貼り付けて送付する必要がある。しかし、私が収入印紙の貼り付けを見落とし、収入印紙を送り直すことで手続きが1-2週間遅れてしまった。

私はもう7年ほど経営をしていながら収入印紙を意識したことがほぼない。法務局での手続きの過程で窓口で〇〇円分の収入印紙を買って提出してくださいと指示され、言われた通りにやってきたぐらいの認識しかもっていなかった。

一時貸付金申請における収入印紙

上限の760万円を借り入れするときは1万円分の収入印紙を貼り付ける必要がある。そして、1万円分の収入印紙はコンビニでは売ってなくて郵便局で購入する必要がある。

一時貸付金の収入印紙の金額

前節で金利 0.9% (68,400円) 以上の運用成績があればよいと書いたが、会社全体の損益で考えると収入印紙の1万円も加算して 78,400円以上と考える方が適切にみえる。

収入印紙の本質を理解していない

申請書類に目を通したときのチェックリストの一覧に収入印紙が書いてあり、読んだ記憶はあったが、後日、実際に書類を作成したときに収入印紙を購入して入れることを忘れてしまった。故意でも軽視でもなく、シンプルに私が収入印紙となんなのか、なぜ書類に貼り付けしないといけないのかを理解していないことに気付いた。

これはとてもよい機会だと思えたので収入印紙について調べておく。

印紙税という税金

印紙税という税金は1873年 (明治6年) に導入された。地租改正により、年貢 (お米) から税金 (お金) を納めるという改革の中、農民中心の税負担から商工業に関わる人々からも税金を徴収するために近代の早い時期に導入された。

印紙は紙の証書が取引の中心だった時代において、文書を作成する人が印紙を購入することで税金を納めることになるため、税務署が取引ごとの直接徴税せずに済み、徴税手段として合理的であった。いまも文書作成者が収入印紙を購入する制度が続いている。

明治初期においては収入印紙とは、印紙税を納めるための証票として主に使われた。その頃から印紙が使用済であることを表す消印もされていた。現代においては、複数の税金や手数料支払いの納付証票としての用途で収入印紙が使われている。

印紙税は何に対する税金なのか

明治初期の印紙税は、国家税収の約9割を農民に頼っていたのを商工業・金融・流通取引に広げる狙いがあった。そのため、取引や権利関係を証明する紙の文書に印紙を貼らせるという制度になっていた。近代的な商取引インフラに税を組み込むための制度であった。

その後、昭和42年に現行の印紙税法として大改正される 。現行の印紙税は次の課税文書に課せられている。

また財務省の説明では、文書そのものへの課税ではなく、その文書の背後にある経済的利益に対しての課税であると説明されている。

印紙税は、各種の経済取引に伴い作成される文書の背後にある経済的利益に担税力を見出し、負担を求める税です。

印紙税の概要

明治初期の徴税インフラとしての印紙税の在り方とは変わっている。しかし、ここまでは時代の変化にあわせ、それほど違和感もなく、いくつかある税金のうちの1つとして理解できる。

印紙税の課税対象に電子文書を含めない

前節で私は「収入印紙 (印紙税) をほとんど意識したことがない」と書いた。その背景は、印紙税の対象は明確に紙の課税文書のみを対象としていることにある。まったく同じ取引であっても、紙で契約をすると印紙税を納め、電子契約・電子署名などでやり取りすれば印紙税を納めなくてよい。

昨今は企業活動を取り巻く様々なプラットフォームやインフラが整ってきており、コスト削減や効率化のためにオンライン上で電子的に取引をすることが多い。分かりやすいものとして次がある。

  • 領収書

  • 請負契約書

  • 金銭消費貸借契約書 (一時貸付金制度の契約書がこれに相当)

これらは紙の書類でやり取りをすると印紙税を納め、電子文書・契約でやり取りすると印紙税は不要になる。

前節の財務省の説明では「文書の背後にある経済的利益に担税力を見出し」とあったが、まったく論理的に整合しない状況になってしまっている。契約は紙であろうと電子であろうと、背後にある経済的利益は同じだからである。

しかし、少し考えれば、この歪さや非論理的な状況は、社会全体において紙の書類による手続きから電子化への移行を進めたい政策によるものであろうと推測できる。印紙税を節約するために契約の電子化やシステムの整備を進めるためのインセンティブと成り得る。

収入印紙で納めるその他の税金や手数料

印紙税以外でも収入印紙を使って納める代表的な税金に次のものがある。

  • 登録免許税

    • 法務局で会社の登記や商標登録などをするときに納める

  • 自動車重量税

    • 自動車検査証の交付 (車検) のときに納める

税金ではないが、歴史的経緯で各種手数料にも収入印紙で納める手続きがある。

  • パスポート申請

  • 国家試験の受験申請

  • 許認可申請

  • 各種証明書の交付

これからは代替手段としてのキャッシュレスや電子納付へ移行していくように思える。手数料支払いに収入印紙を使う機会は減っていくかもしれない。

消印と割印は違うが、、、

一時貸付金の 請求書の記入方法 に3枚目に収入印紙貼付欄があると説明されている。複写式用紙の3枚目だったので目につかず見落としやすい。

請求書の3枚目の用紙

ここで「割印不要」と書いてある。収入印紙の再使用を防ぐため、印紙が使用済みであることを表すために文書と収入印紙にまたがって押印しないといけない。このことを消印と呼ぶ。郵便を受け取ったときの切手の消印をイメージするとわかりやすい。

本来、収入印紙に使う用語は「消印」であって「割印」ではない。消印と割印の違いは次のサイトを参照してほしい。

割印不要なら消印は必要かと ChatGPT に聞く限りではおそらく消印も不要だろうとのこと。割印と消印は俗に混同されがちであるため、おそらく消印も不要だという意図で書いてあるのではないかとのこと。私は収入印紙を貼り忘れたので別途郵送して、先方の担当者の貼り付けしてもらった (と推測される) 。その後、その担当者が消印したのかどうかは知らない。

まとめ

比較的低い金利で経営セーフティ共済の掛け金を一時貸付金として運用できることがわかった。解約に適したタイミングになるまで、同額借換でこの運用を続けていくかどうかはまだわからない。初めての取り組みなので1年間やってみて、そこで得た学びを次の施策につなげたい。

厳密には借金ではないが、お金を借りて資産運用するという仕組みそのものに、これまで取り組んだことのない財務について考える機会になっていておもしろく感じている。少なくとも収入印紙を貼り忘れたことで、私が「印紙税とは何か」を学ぶきっかけにはなった。

AI 時代に知識はいくらでも手に入る。しかし、実際に行動して得られる経験や知恵の価値が相対的に上がっているのではないかと感覚的に思うところがある。1年後、この取り組みがどういう結果につながるのか、ふりかえりを楽しみにしたい。


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