秘密の庭|掌編小説
高校1年の時、3日間のオリエンテーション合宿というものがあった。福島県にある自然の家で、敷地も建物もかなり広く、大きかった。
合宿で何をやったのかはほとんど覚えていないが、修学旅行気分で、まぁまぁ楽しかった記憶はある。
朝食の後に掃除の時間があり、グループごとに担当が決まっていた。僕のグループは本館と別館を繋ぐ渡り廊下の拭き掃除と掃き掃除。ちなみに、合宿は全部本館内で行われており、別館には一度も立ち入ることはなかった。
渡り廊下の窓から、別館の向こうに小さな庭が見えた。別館の建物に隠れてよく見えないが、小さな祠がある。
――神社が併設されているのかな。
自由時間に外に出て、何となくその庭に入る道を探したのだが、2メートルはありそうな高い生垣に阻まれ、中の様子を窺い知ることはできない。出入口があって、「立入禁止」と表示がしてあるわけでもなく、どう見ても出入口自体がないのだ。
別館から出入りするのだろうと思ったが、外と別館を繋ぐ出入口も見つからなかった。本館から延びた渡り廊下の別館側は、大きくて頑丈そうな木の板がしっかりとはまり込んでいる。
僕は合宿の間中、別館と小さな庭、そして祠のことが気になって仕方なかった。
――外界と隔絶されているようなあの場所に行ってみたい。
そう思っていた。
窓から見る限り、庭は綺麗に手入れされている。普段は人の出入りがあり、荒らされないように合宿の間だけ立入禁止にした可能性もあるが、やはり気になった。
合宿最終日の掃除の時間。僕は掃除の手を止め、窓から小さな庭と祠をぼんやりと眺めていた。
――結局、あの庭へ入る方法を見つけられなかったか……。
後ろ髪を引かれる思いで、窓から視線を外そうとした瞬間……。
――あ!
本当に一瞬だった。あの庭から、何者かが別館の陰にすっと隠れるのが見えた。
――誰だ?
人だった気がする。男性か女性かは分からないが、とにかく人だった。
僕は窓に張り付き、人影があった場所を凝視した。
「おーい! 終わったかー?」
友達の声で我に返る。
「終わったよー!」
大急ぎでほうきとちり取りを持って、友達の元へと走った。
一度だけ立ち止まり、窓から庭を見る。
小さな女の子が、別館の陰から半分だけ顔を出し、こちらを見ていた。不気味とか、怖いとか、そういうのではない。
そうか。
――人がむやみに立ち入ってはいけない場所。
きっとそうに違いない。
(了)
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