海を見に行こう|掌編小説
朝起きた瞬間、何だか身体が重くて、心もどんよりしていた。仕事も人間関係も、全部めんどくさくなって、布団から出たくなかった。
寝返りを振った時、ふとスマートフォンの壁紙が目に入った。夏に行った海の写真。空の青と海の青がまじり合って、何とも言えない不思議な色をしていた。
「……よし、行こう!」
着替えて、リュックに水とパンだけ詰めて家を飛び出した。電車に揺られて2時間。窓の外に海が見えた瞬間、心が少しだけ軽くなった。
駅から歩いて海辺に着くと、潮風が全身を吹き抜けた。生きてるって感じがする。
靴を脱いで、波打ち際まで走ってみた。思ったより水が冷たくて「うおっ!」と叫んだら、近くにいた子どもが笑って手を振る。
ちょっと元気が戻ってきた。
海ってすごい。何も言わないけど、全部受け止めてくれる感じがする。
「よし、明日から、またやってやろう」
自分に言い聞かせて、胸を張って帰路についた。ポケットの中には、小さな貝殻ひとつ。
それが、今日の証拠。
(了)
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