黄昏の君を探して|掌編小説
夕焼けの色が、あの日と同じに見えた。
オレンジと赤が溶け合って、世界の境目を少しずつ曖昧にしていく。私は校舎の屋上でひとり立ち止まり、胸の奥がざわつくのを抑えきれなかった。
中学の頃、初めて好きになった人がいた。笑う時に少しだけ目を細めるその顔を、私はずっと覚えている。
彼がいなくなったのは、本当に突然だった。転校でもなく、事故でもなく、ただ「消えた」という言葉が一番しっくりくるような、不思議な失踪だった。
それから夕焼けを見るたびに、彼のことを思い出す。まるで空そのものが、彼の残した影を閉じ込めているようで。
ふと、風が吹いた。誰もいないはずの屋上に、かすかな声が重なる。
――ここだよ。
振り向くと、夕日に透ける影があった。彼だった。笑顔も、声も、何も変わっていない。ただ、輪郭がゆらゆら揺れて、まるで空の一部みたいに儚い。
私は一歩近づき、言葉を飲み込んだ。初恋の時みたいに、胸が痛くて苦しい。
彼は微笑み、優しく告げた。
「君に会いたくて、夕焼けに宿ったんだ」
その瞬間、世界が赤に満ちた。私は涙をこぼしながら、彼の名前を呼んだ。
夕焼けは、答えるようにゆっくり夜へと沈んでいった。
(了)
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