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第一章|仕事が速い人は「考える前」に設計している

仕事がうまく進まない原因は、能力や根性ではなく、
多くの場合「考える前の整理不足」にある。

この章では、時間・思考・伝え方を“設計する”という視点から、
仕事の前提を整えるための考え方をまとめる。


基本が一番大事|すべての前提になる話


―― 小手先のフレームワークより、結局ここに戻ってくる話

大きな石から

ある程度社会人経験のある人は当然ご存じのことと思うし、学校で勉強したかもしれないが、物事は大きな枠から考える。そして徐々にカタマリを小さくしていく。

有名なバケツの例えで言えば、一つのバケツがあったときに、まずは大きな石を入れる。そして次に小石を入れ、砂を入れる。この順番を間違えると、砂でバケツに余裕がなくなってしまい、大きな石や小石の入る余地がなくなる。これを心に置き換えれば、まずは自分の進むべき道という大きな石を入れて、一か月や一週間といった小さな粒にブレークダウンする。この説明は、全世界で3,000万部を発行した「7つの習慣」に書かれている説明だ。


優れた社会人になるために

特に社会人1年目のあなた。IT関連企業が初めてのあなた。経験を重ね、転職してきたあなた。社会人としてのスキルアップには、一方の車輪で仕事というものを考え、もう一方の車輪で技術やノウハウというものを磨く。どちらかが欠けても前には進まない。そう言う、社会人として適切なことを伝えたいと思い、このテキストにしたためる。思いが届くことを切に希望している。


車の両輪

社会人としての新たなスタート。ここはいっちょ、気合を入れて頑張ろうと思っている人も多いのではないか。その気持ちは忘れないで欲しい。慣れてくると、不平不満が口をついて出てくるのが人間の弱さだと思うが、言霊というコトバに表されるように、マイナスのコトバを口にすると、知らずのうちに気分もマイナスになる。初心忘るべからず、だ。初日からマイナスな人はあまりいないのにいつの間にか・・・。ことわざというのは実に端的に状況を教えてくれる。

何を頑張ったらいいのか、そこに頭を悩ます人は多いと思う。ITが世界のインフラとなって久しいし、生まれた頃にはすでにパソコンが家庭にあったという世代の人も多いだろう。世の人が一人一台のスマホを持ち、日々大量の情報の渦に巻き込まれている。世の中には、会計のプロとしての公認会計士や税理士がいるし、法律のプロとしての弁護士もいる。ではITのプロという「資格」なんて存在するだろうか。日本では、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公的な資格(という名前での免状のようなもの)をいくつか出しているし、それについては別章で説明するが、挑戦する前に立ち止まって考えていただきたい。それは人生の目標を達成するための手段であって、目的ではない。まずは大きなものを心に定め、そこからブレークダウンした勉強の一環、成果の発露として、資格取得を目指す。この流れを意識して欲しい。

よく面接などで、学生・生徒から、「何を勉強したらいいですか?」と尋ねられるが、そこに果たして適切な回答などあるのだろうか。

これから様々な社会人、ひいては大人、を相手にするあなたが考えることは何を勉強したらいいか、よりも前にある。

一丁目一番地は、相手にとって「伝わる」ということが何かだ。今後、メールや電話、プレゼンテーション、資料作成スキルなどを磨いていくにあたり、あなたの家の書棚がパンクするくらい、ノウハウ本は溢れている。やれ会議の進め方だ、仕事の効率アップだ、説得力だ、地頭力だと枚挙にいとまがない。それはプロ社会人としては身につけておくべき事柄のゴールの一部であるから、いきなり各論に飛びつかないことが肝要だ。

考えが行き詰まったら、自分で考えていい時間か、それともネットなどを検索して答を得ようとする時間なのか、自分で決める。餅は餅屋と言うではないか。専門家や、説明がうまい人に教わった方がわかった気になる事象も多い。ありがたいことに、あなたが気になる情報の当面の回答は、ネットが教えてくれる。

英語の勉強を考えてみる。

赤子のころから英語に浸っている外国人と違い、日本人にはそれなりの学習法が確立されている。英単語、文法、音読。これが最短との意見が多い。

ITの世界に飛び込んだからには、わけのわからない3文字略語や、主語-述語-目的語がわからない会話に辟易する。英単語と同様に、ITの世界には、どうしても日本語よりも伝わりやすい業界用語がある。さらに、ビジネス用語も同様にアルファベットだったりカタカナだったりする。そこに飛びついてネット検索を繰り返すのは対症療法であって、根本の治療にはならないことを忘れないことだ。

基礎を掴んだらさあ、講義の始まりだ。あなたが優れた社会人になるための文字通り1ページとなる。

1.このテキストのテーマを共有する|使い方と拾い読みのすすめ


ーープロマネ技術論以前に、まず何を大事にするかという話

ものごとは大きな枠からとらえる

プログラマ(技術者)としてデビューし、システムエンジニアやインフラエンジニアなど、適性に合ったコースをたどり、将来を思い描く。0章で示したように、車は両輪があって前に進む。技術を磨くことは片輪だ。では同じような直径の車輪のもう片方はどういうことか、それは優れた社会人であるということだ。こういう言い方をするとき、あなたは頭にベン図を思い浮かべなくてはならない。優れた社会人は、即座にベン図を描く。

ベン図でハッキリ

ベン図が描けるようになること、それが社会人の第一歩だ。説得力とは、抽象的な概念を具体化することと認識して欲しい。くどいようだが、何かの事象が起こった際に、どういう枠組みなのかを知らずに手をつけても、頓珍漢な方向にボールは飛んでいく。へたっぴのゴルフのようであり、打った瞬間はたった10度のズレであっても、落下地点ははるかに逸れてしまう。

同時に、私たちは日本にいるので、日本語が適切に話せることの重要性を理解して欲しい。とかくビジネスマンは横文字を使いたがる。予算をバジェットと言ったり、経費をエクスペンスと言ったりしてもよくなるには、先に基本を身につけてからだ。社会人1年目ならば「微笑ましく」見える横文字羅列も、年齢を経ていくにつれ、本質がわからないとダメになる。もしあなたがITの世界を経験したことがあるのであれば、3文字略語やカタカナ用語に辟易した経験はきっとあるはずだ。説得力を養うのに、相手を辟易させては本末転倒だ。

メールの書き方一つとっても、個性はある。個性があるから人間は面白いのだが、気を付けるポイントはたくさんある。

タイトルで伝えたい事が言い切れているか、何度も往復しているメールで「Re:Re:Re:・・・」となっていないか、(転送)とか(周知)
とか(依頼)とか(確認)などの言葉をタイトルに付け加えるだけで、相手の理解のスピードは全く異なる。優れた社会人になりたいのであれば、日本語に気を付けることが何より肝要である。

誤字脱字は、社会人であれば禁止である。配慮するとか留意するではない。禁止である。

あなたがパワーポイントを駆使し、大変努力した作品(資料ではなく敢えて作品と呼ぼう)を作ったとしよう。気を付けるべきは、作品の並び順であり、言いたいことが伝わるかどうかだ。

あなたは頑張って相手に説明する。昨日遅くまでかかった作品だ。説明していると、相手もうなずいてくれているし、時折ペンを走らせてメモを執っているように見える。あなたは益々「今日の説明はうまくいくぞ」という気持ちになって、頑張る。

しかしたいていのお客様は、あなたの作った作品を二度目の読み返しはしてくれない。メモを執っているかのように見えるのは、ただのアリバイ作りである。試しに、あなたの作り上げた作品が相手のデスクに放置してあったら。盗み見するとよい(もちろん内緒で)。メモに見えたペンの文字はすべて誤字脱字の訂正である。せっかく作ったのにこれは悲しい。あなたは少なくとも、作品の文字校正を依頼したのではないので、誤字脱字について校正して欲しかったのではないはずだ。

これはIT化の悪しき文化とも言える。あなたの作る作品(以下資料という表現に戻す)は、少なくとも一から作ることはこのIT 社会では少なく、多くの資料は使い回しをする。週次の報告書だって前回の使い回しだ。IT化はコピーペーストで次の資料を生み出せるという非常に便利なものであるが、同時に日付であったり連番[1]であったりといううっかりミスを多く生み出す元凶ともなっている。

優れた社会人は、ミスをしない。あるいは何度もチェック・推敲してミスを見せない。それは、伝えたい相手に言いたいことを伝えたいという気持ちそのものの発露だ。優れた社会人の第一歩は、誤字脱字をしないこと、「てにをは」が適切であること、これに尽きる。

誤字脱字の他にも、使いまわした資料は数値のミスなどが多発する。日報の左上の日付を前日のままにしてしまった、などはまだ注意すればフォローアップできるが、プロジェクトの週次報告を発表する際に「数字が反映できていないんですけど」というのは、関係ステークホルダー向けの資料ということを考慮に入れると、けっこうまずい。言い訳を、我々は一体何回聞いたであろうか(社会人なり立ての人は、これからいやというほど聞くことになる)。

伝えたい数字は反映されていて初めて意味を持ち、意思をもつ。定量的/定性的という二つの対になるコトバを、頭に叩き込んで欲しい。言いたいことは最初に伝えなければ意味がない。頭の働かせ方は、定量の数字を見て、分析してから定性的な事実及び客観的な結論を考える。それを書き起こす順番としては➀結論②事実③根拠となる数字、の順に記載し、報告する。順序を考えることは社会人にとってかなりプライオリティが高いスキルである。

(昨今は新聞も縁遠い媒体になってしまったが)新聞の社説は読みやすいのに一面のコラム欄が読みにくいのはなぜであろうか。言いたいことが最初に来ていないからだ。そして、コラムには表題が付いていないからだ。新聞の一面と二面を読んで、そういう普遍的な事実を見出すことは日常生活でできる。社会には気づきがあふれている。我々は仕事をしているのとほぼ同等の時間、オフタイムの日常生活を送っているのだから、普段から思考トレーニングができる。ジムに行かなくたってトレーニングは可能なのだ。

知識は、例えば英語であれば単語のように、ある程度は必須である。IT業界であれば、このテキストで記載するような社会人のお作法的知識と、技術的知識などは必須だ。OJTであったり、座学であったり、手段は様々だ。その底辺を支えるもの、それは日本語力である。枝葉末節にとらわれず、例えば資料作成を依頼されても、9割以上の事項は日本語で書かれるので、ビジネスマンかぶれをする六本木あたりの住人になる前に、日本語をしっかりしよう。

せっかく作った作品だ

資料は、あなたの考えの出力形態(アウトプット)の一つであって、断片的に散在している事象を、相手に分かりやすく説明するためにある。仮にあなたが言葉だけで相手を説得できるならば、資料は不要だ。しかしそんなスーパーマンはなかなかいない。

資料は、枚数を多くすることによって努力したことを見せるというメタ的(形而上的)な意味合いも持つし、資料があれば、お客様が何ら覚えていなくても、決定権者にその資料を持って行って、査読してもらえば、お客様が自ら説明できたことになる。資料はお客様がサボっていないことの証明にも使われる。

世の中がそうであるならば、それを活用しない手はない。プレゼン用の資料と、配布用の資料、えらい人向けの要約(サマリー)資料を場面に応じて作ろう。そして作った資料をもとに、ときには説得し、譲歩を引き出し、意図的に反対させ、またあるときは噛んで含めるように教えてあげよう。それこそが日本語を駆使する優れた社会人だ。


問題解決の4方向

色々な方向から相手に説明できるようになれば、社会人としては一端のモノだ。どんなものでもそうだが、ベースがしっかりしていない建物は倒れる。子供の頃の積み木から我々は学習しているのだ。


ベースが弱い社会人


ベースのしっかりした社会人

図はベースがしっかりしていない社会人と、しっかりしている社会人の素養をイメージ化した。外から力を加えられる(これをビジネス用語では外部環境の変化と呼ぶ)倒れてしまうのはどちらだろうか。一目瞭然である。

方法論やテクニックという話が出たので、いい機会なので少し付け加える。方法論(例えばマインドマップのようなフレームワークや、片付け方としてのGTD、プロジェクトマネジメントにおけるTOCなど)に関しては、世の中に書籍も沢山あり、とっつきやすいし身になるものである。ビジネス書籍に関しては、好みもあるので、何かを読んでないとモグリであるかのようなことは言わない。大事なのは、多くの書籍を読むことではなく、その書籍から何を学んだかである。学ぶ受け入れ態勢が出来ていないにも関わらず、知識を詰め込むと結局頭でっかちになり、その名の通り、頭がでかいので倒れやすいものである。

社会人になったからといって、すぐにそういう役立つ方法論を教えてくれるわけではない。教えてくれても、センパイたちがエラそーに語る内容は、どっかの本や現場の受け売りである。そんなんだったら本屋か図書館に行けば情報は手に入るではないか、そう考えてくれて構わない。

世の中に、画期的で即効的なノウハウなんて存在しない。書籍は知識が体系的にまとめられたものであり、断片的な知識を整理してくれる。古今東西の学者たちが知恵を出し合い、ときにはトヨタ自動車の大野耐一さんのように企業人も知恵をまとめてくれる。

学者は、過去のあらゆる研究を精査し、初めて自分の発見や発明を世に出せる。そのために彼らは道具としての外国語を取得し、全ての関連研究を網羅する。数学界で有名なフェルマーの最終定理に至るまでに、アンドリューワイルズは日本人の立てた定理・予想をもとに、寝食を忘れて研究をした。一部の天才であっても、過去の叡智を集約しなくてはならないのだ。

我々は幸か不幸か凡人なので、過去の叡智を活用することで日々の様々な問題を解決しようと試みる。画期的なことは恐らく自分では生み出せない。画期的と思った理論には、きっと過去の学者が付けた名前がある。そのことを意識して、道具として使おう。そのための学習の仕方は人それぞれであろうが、行き着くところは同じだ。それでよいのである。ちなみに道具のことを、社会人は好んでツールと呼ぶ。

我々は、過去の叡智を道具として使う。道具の使い方がうまい人が、優れた社会人だ。釘を打つのにトンカチとカンナがあったとして、どちらでもまあ、釘をたたくことはできる。しかし、釘を打つときはやはりトンカチの方が効率的だなと思えること、カンナしかなかった場合は、付け焼刃ではあるがカンナの固い面を使って釘を打ち、次回はトンカチを忘れないようにしようとすること。こういうことが応用できれば、優れた技術者に成長する一方で、優れた社会人としても成長を遂げている。

あなたのセンパイも、そうして大きくなった。断片的な知識を総動員して、お客さんに怒られて、上司に怒られて。そしてあるとき、知識を体系的に捉える手段を知り、そのアウトプットを小出しにして、今のセンパイになっているのだ。

2.タイムマネジメントの重要性|時間が足りない理由を言語化する


―― 「忙しい」を言い訳にしないための前提整理

時間は止まってくれない

当たり前すぎるタイトルだが、時間は止まってくれないし、少なくともサラリーマン・社会人である以上、過ぎた時間には見える見えないに関わらず、コスト(費用)がかかっている。あなたがボーッとネットサーフィンをしている時間も、考え事をしている時間も、打ち合わせをしている時間も、金銭が発生している。優れた社会人になろうとするのであれば、時間の感覚は人並み以上に研ぎ澄まし、あなたの持っている時間は有意義に使うべきだ。あなたは外部の人間から見れば少なくともITのプロなのだから、時間を費やしてやるべきこと、体調を整えて集中してやるべきことを明確に区別するべきである。

その辺りはプロのスポーツ選手に近い。3時間で集中してするべきことがあるならば、その3時間を産み出すことに全力を傾ける。締め切りが2日後(一日8時間労働として16時間後)であるならば、3時間で作ってしまって、残りの13時間は誤字脱字のチェックや、言いたいことが伝わっているかのチェックに費やすべきだ。繰り返すが資料作成は副次的なものである。全員にまごうことなきように伝わるなら資料はゼロ枚でいいがそうはいかない。社会人である以上、根本的に時間の使い方をマスターして欲しい。

どんな技術者、また将来的には管理者・マネジメントなどをやる、やらないに関わらず、企業は会議や打ち合わせがある。ない企業は存在しないし、あなたが出る会議は、あなたの重要性が高まれば高まるほど増えていく。大体会議は1時間だ。その1時間に10人集まっていれば、それだけのコストがかかっているわけで、ただ漫然と会議を迎えるなんてもっての外だ。

全員が集まる時間を有意義に活用するには、その何倍も準備に費やす必要がある。場合によっては、討議すべきか課題(アジェンダ)を事前に配布しておいて、討議のみに収束するようにコントロールすべきだ。その方法は、別章にて、会議にフォーカスを当てて述べることにする。

7つの習慣

時間の使い方については、「7つの習慣」が最適なテキストだ。一人の学者が生涯をかけて作り上げたメソッド(方法論)を、一言でまとめるのは大変おこがましいのだが、コヴィー博士は重要とは何かということを4つの象限にまとめている。下の図を見て欲しい。

7つの習慣の時間に関する4領域

コヴィー博士は、時間を4つの象限に分け、その軸を「重要度」と「緊急度」で分解している。

第1領域はとてもわかり易い。緊急で、重要なことだ。これにはアポイントや会議、締め切りのある資料などが入る。我々はとかく、この第1領域に執着し、留意を払う。

第2領域は、重要であるが、緊急ではないものだ。会議のための準備の時間、アポイントを円滑に進めるための人間関係構築の時間、友人との絆作りなどがこれに当たり、コヴィー博士は、人生にとって大事なものはこの第2領域であると言っている。

第3領域は緊急だが重要でないものだ。あなたやあなたの周りの人は、優先順位が落ちる事柄をことさらに重要視していないだろうか。自分で問題をぶちあげて、その火消しに躍起になっていないだろうか。マッチポンプと言う言葉があるが、緊急だと思い込んでいて実は重要ではないという会議は山ほどあるし、締め切りまで実は手つかずで、とてもやきもきしながら、締め切り30分前に作った資料なんて山ほどあるだろう。本当に重要なこととして取り組んだのか。自分に常に問いかけてもらいたい。

第4領域は重要でもなく、緊急でもない事柄だ。無駄な長電話、なんだかやる気がでなくてボーっとしている時間だ。

勘違いしてはいけない。我々は人間だから、全く無駄なく、ボーっとせず生きるなんて無理だ。だから記録を取ろう。記録を取って、自分がどの領域をこなしているのかを振り返ろう。そのために、アナログでもデジタルでもどちらでもいい。手帳やメモが役に立つ。

よく、ビジネス啓発本みたいなものを読むと、「道具は〇〇にしろ」みたいな押しつけがあるが、それは選択肢の一つである。デジタルだって、有名なツールは、「使いやすい」「洗練されている」「デファクトスタンダードになっている」等という、有名なりの所以があるので、道具は何でもいいが、できる限り一か所にまとめるとよい。筆者はアナログな手帳が好きだが、それは趣味の範疇だ。Googleカレンダーも使うし、自宅ではプライベート用のカレンダーやリマインダーを使う。どのツールにも一長一短がある。

大きな石から入れる

あなたの前にはバケツがある。ここに大きな石をゴロゴロと入れる。バケツはあなたの人生だ。大きな石は目標であったり、人生にとって大事なものであったり様々だ。次に小石を入れる。月ごとの大きなゴールだ。それを週単位に分解し、第1領域は何か、第2領域は何かを決めていく。次に砂を入れよう。まだまだ余裕がある。砂はすなわち、日々の業務であり、会社のための作業であり、人生を輝かせるデートであり、勉強の時間だ。決して砂から入れてはいけない。日々が忙殺されている人は、バケツに砂から入れ始めて、砂で一杯一杯になってしまっている。同時に大きな石や小石を入れる余裕がない。

砂まで入れたら、無味乾燥にならないように、水を最後に入れよう。意外なほどに大量の水が入る。心のオアシスだ。全ての事柄(石や小石や砂)を覆う水が、あなたの心の余裕だ。

手帳やメモには、自分の憲法を書きだそう。あなたの価値観、何に沿って物事を決めるかだ。それは即物的には金銭であってもいい。金を稼ぐため、家を買うため、車を買うため、なんでもいい。そこから、日々の生活の拠り所となる憲法を作ってみよう。時間をかけて作って欲しい。大きな石だからだ。

作り方も「7つの習慣」に詳しくあるが、まずは自分への問いかけから始まる。自分が最も影響を受けた人は?幼少期に覚えていることは?将来もう一回会いたい人は?どうして今の仕事を選んだ?問いかけを重ねていくと、自分が大事にしたい価値観が決まる。そして全ての事柄を、自分の価値観に沿って組み立てることで、昨日までと違った世界が見える。毎年、それは増えていくかもしれないし、改定されるかもしれない。とにかく作ってみよう。

マンスリーカレンダーに類するものには、決まった予定を書く。小さな石だ。それをよく見ながら、週次もしくはデイリーのカレンダーに落として行く。砂だ。そして、そこにプロットされた約束(アポイント)や締め切りに対して、何を事前に準備しなくてはならないかの計画を立てる。毎朝5分でできることだ。9時から始業なら、9時5分までにちゃちゃっと作る整理する。

計画を立てたら、MECEの原則に則って、必要十分な準備ができるように、細大漏らさずToDoを手帳に書く。そして、時間をこじ開けて、ToDoをこなして行く。

ToDoが終わったら、または一日が終わったら、振り返る(個人的には、一つの作業が終わった時点で実績を書くとよい。筆者は、バーティカル型のデイリーページの左側に実際にやろうとした計画を、右側にかかった時間を書いている)。割り込み仕事は世の常なので、先送りしていい事柄があるなら翌日に送る。他人に委託している最中であれば委託している印を付けておく。予定されている業務にはA1、A2などの名前をつけて、予定と割り込み仕事を区別する、なんていうことも趣味の域だが楽しいものだ。自分が予定通りにこなせているかも、これで手に取るように振り返ることができる。

予定と実績を書くようになると、自分がいかに無駄な時間を過ごしているかを把握できるようになる。時間は万人に平等であるが、時間を創出することは可能だ。予定と実績をつければ「あれ?ここで私は何をしていたんだっけ?」という空白の時間帯があることがわかる。人は8時間のうち、7割も働いていれば立派に社会に貢献しているので、残った時間を第2領域に当てよう。人間関係づくり、準備等々、緊急ではないが重要なことにフォーカスを当てて過ごすことで、遠い未来への種まきが始まっている。

「究極の営業とは営業をせずに売れる仕組みを作ることである」とはドラッガーの教科書に書いてある言葉だが、会議にしてもプレゼンにしても上席への陳情にしても、実行する前に勝つ(成功する)算段をいかに練ったかで勝負は決まる。時間を産み出し、副次的な資料は先に片付けてしまい、戦略を練る。タイムマネジメントの重要性は、いかに考える時間を長く取れるかに集約される。例えばパワーポイントの資料作りなら目次とスライドマスタに時間をかける。ビジュアルが重要視される昨今であれば、デザインなどに時間をかけねばならないこともあるだろう。会議資料であれば、何を討議して欲しいのかを考えるために時間をかけて、参加者にも十分な時間を与えることで、会議はスムーズに進み、あなたが書く議事録も、ほうぼうに話題が飛ぶことなく、すっきりとまとめられる。

会議のために会社に行き、会議で結論が出ずにウンウンうなって、結論先送りとか情報が必要とかぐったりするような会議の終わりを迎えて、議事録に書くことに悩む。なんという無駄な時間の過ごし方であろうか。その時間を仮にその他の付加価値を産み出すことに費やせるならば、次の戦略を準備できる。お客様のペースにはまってはダメだ。朱に交わればのことわざ通り、普通の社会人に染まってしまう。あなたが目指しているものは、戦略を立てて戦わずして勝とうとする、タイムマネジメントに長けた優秀な社会人だからだ。

3.論理的思考とは普段の生活そのものである|ロジカルシンキングという誤解を壊す


―― ロジカルは特別なスキルではない、という話

カッコいい言葉だから遣っているのか



論理的であるとは一体どういうことであろうか。論理的な思考を身に付けるには一体どうしたらよいのか、論理的に説明するのはどのようにしたらいいのか、あなたは優れた社会人を目指す人なので、常に論理的で時に情緒的であるべきだ。しかしながら、「論理的」という言葉を今一度振り返ってみると、定義が難しいことに気づく。
「ビル・ゲイツの面接試験」という書籍 では、フェルミ推定を始めとした論理的思考を試験する様子が書かれている。「富士山を動かすにはどのくらいの時間がかかるか」「東京都にマンホールはいくつあるか」など、極めて荒唐無稽なテーマに関して、前提条件を積み上げて、仮説を重ねて結論を導き出す。その結論は実際に計測される定量的な数値とずれていても構わない、思考プロセスそのものを試したいのである。

例題:
企業が社員に教育や福利厚生などの、給与以外の待遇を与えるのはなぜか。
解答例:
インターナル・マーケティング施策実施による従業員満足度の上昇が、サービスレベルの向上を呼ぶ。サービスレベルの向上は顧客満足度の向上につながり、ロイヤルティの高い顧客の増加が売上向上につながる。同時に、従業員満足度の向上は従業員定着率の向上につながり、採用費等の低減の効果を生む。売上向上と費用の低減は利益率の向上につながるからである。

さて、上記の例題から解答に至るまでに、どのような思考プロセスを経るべきなのであろうか。知識としては、「インターナル・マーケティング」という言葉を検索すればよい。いきなりクイズのような質問をしてくる知識誇りのお客様もいるだろうが、通常は不明な用語があったって、あなたは自由に検索することができる。つまり、知識レベルを向上させることは、検索を不要にする効果しか産まない(それはそれで重要なことである)。大事なことは、知識をベースにしてどのように論理を組み立てるかだ。
あなたがもし、「インターナル・マーケティングによって売上げアップが望めるから」と考えたなら、それは第一歩としては適切だ。しかし、その言葉を伝えるべき相手に対して、資料化したり、言語化したりして伝えてしまったら、社会人としては極めて稚拙だ。因果がつながっていないからである。
要因として「インターナル・マーケティングを実施した」企業が、結果的に売上アップによる利益率の向上に成功していることは、どの企業をみても明らかである。それは知識として持っておくべき事項であるが、知識は記憶なので忘れてしまいがちである。因果をきちんと説明できれば、決して忘れない。
例題について言えば、①インターナル・マーケティングは従業員満足度につながる。②従業員満足度は、③サービスレベルの向上につながるとともに、④従業員定着率の向上につながる。③サービスレベルの向上は、⑤顧客満足度の向上につながり、⑥ロイヤルティの高い顧客を増やすことにつながる。⑥ロイヤルティの高い顧客の増加により、⑦売上増加につながる。
一方で、④従業員定着率の向上は、⑥ロイヤルティの高い顧客の増加⑧採用費等の低減につながり、⑦の売上増加と⑧の費用低減で、⑨利益率の向上につながる。
言葉で書くと大変わかりにくい。よって、図解が必要となるのだが、図解できるということは思考プロセスができている証拠でもあるため、日常生活において常に思考プロセスを論理的に磨いてもらいたい。


説明は図解するとわかる

例題はいくらでもある。男女雇用機会均等法と少子化の関係を因果で説明する。製造業はなぜ国際化し、また日本に戻ってきたのかを、海外の人件費の安さ「以外」の根拠を用いて説明する。営業活動におけるSFAやCRMがなぜ時代に求められているのかを説明する。街角に「保険の窓口」が増えている理由を説明する。学校の授業でもやったようなことだ。
我々は数学で中学三年生に、「展開と因数分解」を学習したが、論理も同じだ。共通項を見出して因数分解したり、まとめられているものを伝える相手の状況を鑑みて展開したりすることが優れた社会人には求められている。
因果関係を論じられたら、次にあなたが考えるべきことは、俗にヘッダー項目と呼ばれるものを、縦に並べるか横に並べるかを考えることだ。
図の並びは縦に表題を記述し、横に内容説明が並んでいる。人間はZの字で視線を動かすというのは、インストア・マーチャンダイジング(スーパーマーケットなどの陳列)の基本であるが、横書きテキスト全盛の昨今では、まず左上に言いたいことが来ることが望ましい。
また、人間は、左から右、上から下に行くにつれて集中力が失われていくと同時に最後の方は記憶に残りやすい。素人のマラソンと同じで、最初は飛ばして中盤はダラダラ、最後にまた気力が湧いてくる。リード文が最初にあり、最後に結論を述べると言いたいことは頭に二回入ってくる。論理的な思考は頭の中で行われるが、思考が表現される資料に関しては、この人間の癖を活用しない手はない。


時系列に沿って論理を展開

縦に並べるか横に並べるか

ここからは、時系列についてだ。普通のカレンダーを思い浮かべて欲しい。日曜始まりか月曜始まりの差はあっても、横に時系列が浮かんだ人がマジョリティのはずだ。時系列で表現したいものは、左から右に進むように表現するとよい。我々が毎日のように目にする工程表も、通常は横向きだ。縦方向にするのであれば、明確に理由があるとよい(資料の読みやすさや組織文化に従うことなど)。

優れた社会人になるために、「3」という数字を意識して仕事をすると効果がある。例えば、課題を3つ書く、解決策を3つ書く、ひとつのキーフレーズに対する箇条書きを3点書く。説明するときに、3つの提案を提示して、どれか一つを選ばせる。3つをひねり出すために、因果を細かく噛み砕けば、立派に論理的だと言える。

また、3つのフレーズを羅列するのも、社会人としては有効な手段だ。プロジェクトのスケジュール管理をしたいというお客さんに対し、「そうですね、WBS、PERT、ガントなどの方法がありますが、今回の例ではWBSが適切そうですね」と対応できることが論理的であることだ。

一つのお題に対して一つしか回答しないと、お客さんは不満を持つ。人は3つ選択肢があるように錯覚すると、その中から自分で選んだ気になるので満足する。「コーヒーと、紅茶と、緑茶がありますが美味しい豆が手に入ったのでコーヒーがお勧めです。いかがいたしますか?」と言われたら、たいていの人はコーヒーを選ぶ。

あなたにとって都合がいい土俵に持っていければ、それはマジシャンズセレクトの完成だ。3つの選択肢の中から選んだという実績があっという間にできて、検討段階を一つ乗り越えたことになる。手法としての3つの表現をたくさん持っておこう。

論理学を学習すると、必ず序盤にぶち当たるのが、「ある命題が真であるとき、対偶もまた真である」という約束事だ。例としてあなたが活動しているプロジェクト現場を想起してみよう。

「要員が不足していてプロジェクトが予定通りに終わりません」を命題とすると、対偶である、「プロジェクトが予定通りに終わるならば、要員が足りている」が真である。違和感がないか?要員不足は一因であって、全てではない、ということ、つまり言いたいことが見えてくる。人間は、とかく一つの事象について断定的に述べることが多いが、対偶を意識することで、間違いを回避することができる。

先ほどの対偶が真でないことはわかるだろう。プロジェクトのスコープ見直し、生産性の向上、PMやSEやPGの作業範囲の定義、変更管理のずさんさ等、プロジェクトが予定通りに終わらないファクター(要素)はたくさんある。もちろん、要員が不足していることが大多数だったりする。それは悲しいけど現実だし、要員不足を解消することでプロジェクトがうまくいく事例も枚挙に暇がない。ただし、「要員不足のみがプロジェクト失敗の原因」とすることができるかできないかの判断は、対偶を意識して生活することで訓練できる。

世の中には、ロジカルシンキングに関する書物は溢れている。どれもロジカルシンキングってこうなんだろうなあという形だ。ロジカルシンキングはイコール「因果関係で結べること」だ。原因と結果を積み重ねていく思考プロセスを鍛錬することで、資料作成や顧客への説明、上司への報告・連絡・相談などに応用する。それでこそ優れた社会人だ。
ロジカル(論理的という意味ではあるが、記号としての意味があるのでカタカナで書く)な人は、まず日本語が論理的である。仕事の進め方が論理的である。資料が論理的である。それを支えているのは頭脳が論理的であるということだ。

ある会議が1週間後だとしよう。会議招集の時点から、論理的に動こう。1週間の間に準備できることは何か、当日持って行きたい方向は何か、その持って行きたい方向はどのような因果関係で生まれたのか、先に配布しておくべき資料は何か、アジェンダは必要か。経験値を知識にし、知識を因果で体系立てて実践できることが肝要だ。

※本note記事は、これまでに公開してきた記事をもとに、構成を見直し再編集したものです。

👉第二章 その戦略、現場で使えますか?

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プロジェクトマネジメントは、言葉でできている


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