第四章|会議は「話し合い」ではなく「合意形成の装置」だ
資料が伝わらない原因は、
情報量や表現力ではなく、構造にあることが多い。
この章では、PowerPointなどの資料を
「説明の道具」ではなく「思考の設計図」として扱う。
1.会議ファシリテーションの重要性と議事録|会議は設計できる業務である
―― 会議が長くなる理由は、だいたい最初に決まっている
その会議、意味がありますか?
一般に、ファシリテーターとは会議進行の「推進者」等と訳されるが、本質を抽出すれば、中立であることが求められる。あなたは優れた社会人になろうと努力している。会議に参加し、ある一つの組織の集合体を(大なり小なり)代表している場合、ファシリテーターとして会議の進行を任される場合、プロジェクトマネジメントの業務の一貫として議事録を執るために参加している場合、などがある。
このテキストにおいて一貫して、「物事はマクロの視点からミクロの視点へ」と伝え続けている。会議進行について言えば、マクロの視点を持っている必要があるのはファシリテーター、ミクロの視点が必要なのは議事録係だ。よって、議事録係は当日その場は、細大漏らさず議事を執ることに専念する必要があるが、会議の前後においては、マクロの視点を持っている必要がある。
会議に当たって、事前の準備が必要であるということは、第3章のタイムマネジメントの重要性で伝えた。復習すると、一つの会議には複数のメンバーが参加しており、そのメンバーの時間を拘束することになるので、会議の性質を明らかにし、その目的に即した事前の準備を行うべきだということだった。
目的は下記に列挙する項目の一つ以上、もしくは複合されることがある。
①進捗(ToDo)を確認する
②課題を解決するために、討議する
③問題の事象を確認する
④決定事項を伝える
⑤情報を共有し、その場にいるステークホルダーに対し、ToDo、 課題、問題、決定事項を認識させ、後続作業が「自働化」されることを期待する(組織の文化によっては「頭出し」等呼称)
多くの社会人は、①②③を強く意識していない。あなたは優れた社会人なので、強く意識して会議の準備と後片付けをしよう。そのいずれのフェーズでも、中立を意識することが肝要だ。
この場合の中立は中立公平であるということは前提であるが、その場に応じて、Aというステークホルダーの意見を中心に、合意の方向に向かせることや、敢えて反対意見を言わせる(第1章参照)ことも大事な役割である。Win-Winの関係を築くためには、押したり引いたりして、最終的に両者にとって、公平感を出すことが必要だ。
会議は準備が全てである
あなたは会議の準備を行う。そのために、定期的にアップデートする書類を更新したり、新たに資料を作成したりする。既に何度も述べたように、資料の作成は副次的なものであるので、相手に伝わる方法を考える時間を生み出すために、定期的な資料は出来る限り間違いが起こらない方法を構築するべきだ。間違いがあると、人間の意識と視線はその間違いに振られる。その結果、伝えたいことが伝わらない。
あなたたちがよく作るであろう課題管理表を例にしよう。
恐らく、Excelで作ることが多いだろう。A列には何があるだろうか。そう、項目番号・通し番号である。もしなかったら、これからは導入しよう。サブ項番を導入すると更に読みやすくなる。
B列あたりには課題のタイトルや概要を書くだろう。ここで、優れた社会人は、課題と問題の区別がついている。
例を一つ提示しよう。
小学生専門の学習塾にとっての課題は何であろうか。
答は色々あるが、「課題」なのだから、「少子化の中、実績を積み上げ、生徒を確保すること」が課題である。一方この事象を問題として捉えた場合、「少子化もあり、生徒数が減っていること」が問題である。決して後者を課題のタイトルや内容として書いてはいけない。
その後続く列では、担当者や期限、現在のステータス、実績ベースの完了日、備考などがあるが、備考はあまり充実させない方がよい。結局、その課題管理表で、備考欄を読み込まなくてはならないのであれば、その課題管理表は内容としてはよくても、形式として適切ではない。Excelを使って課題管理表を作ることの意味は、決して罫線を組み合わせて表っぽく作るのが楽だから、ではない。ステータスをピボットしてみれば、完了した課題がいくつで、ペンディング中がいくつで、進行中がいくつという統計を取ることができる。一般に、課題が100も200もある状態は正常な状態ではないので、統計による定量的評価ができるようにしよう。そうすると備考欄にたくさんテキストがあることは、邪魔以外の何物でもない。
完了ステータスになったら、グレーアウトする条件付き書式程度は、優れた社会人であれば活用すべきだ。先ほど課題が100もあるのは異常と言ったが、異常な状態だから外部から人を雇っているとも言える。人間は目で見て減っていると感じると、力が湧いてくるものだ。
ステータスを含めて変更があった点は、見え消しでも赤字でもいいので、目立たせる。人間は全てを記憶しておくことはできないので、目立った事項から記憶を始める。人間の習性を利用することも、社会人としては重要な技術となる。
準備の話を続けよう。ITの開発プロジェクトであれば、開発中の定量化された数値報告、テストの進捗具合、バグフィックス・収束曲線の様子などが重要な確認要素となる。決して会議の場で、「数値が反映できていないんですけど現在の進捗は先週の65%から72%になっています」などと言わせないようにすることは大事な準備である。今までの人生経験で、何度も聞いたことのあるセリフのはずだ。
なぜ反映できてないのか、トヨタ生産方式の大野耐一さんの提唱した「ナゼを5回繰り返して本質を探れ」を使ってみよう。
①忙しくて数値の反映が間に合わなかった。
②数値の反映よりもプロジェクトを進める方が重要だと考えた。
③プロジェクトを進める方が重要なのは、お客様も理解してくれていると考えた。
④やることはやっているので口頭で発表すればいいと考えた。
⑤そもそも数値入力が面倒な進捗管理表なのだ。
ここまで深掘りしてみると、進捗管理表が使いにくいという本音が見えてくる。「誰もが使い易い、反映のし易い管理表を導入しましょう」と相談してみる(独善は、いかなる場合も好ましくない)ことで、一つ価値を出すことができる。
反映されていない数値については、会議参加者は理解するかもしれない。しかし、開発プロジェクトは、多くの関係者とステークホルダーから成り立っている。ハインリッヒの法則の従って、たかが1週分の数値反映ができなかったことが、その後どんな事故につながるのか、出荷判定に影響を及ぼさないか、事故を未然に防ぐための準備に怠りはなかったか、しっかり考えよう。
議事録はなぜ重要か
準備をしっかりした会議は、当然アジェンダもしっかりし、課題なのか問題なのか、情報共有なのかを明確にしてくれる。さて、議事録を書く段階になったとしよう。
会議あるところ、議事録はある。議事録は、誰が何を言ったのかに責任を持たせ、次にするべきToDo、解決すべき課題、共有すべき問題、情報共有を図る第一義的な意味を持つ。
第二の意味としては、政治的駆け引きを記述することで、全体に流れる意識を表すことがある。焦っているのか、怒っているのか、箍を締め直そうとしているのか、失望しているのか。故に、議事録はただ討議の内容をサマリーして記述すればいいというものではない。心の機微を含めて、1時間の会議には1時間の価値があるはずで、その価値(アウトプット・スループット)を記載することが肝要だ。木を書いて、枝を書く。木を書いて、枝を書く。たまには森から書く必要があるかもしれない。読む人に「伝わりやすく」すること、第1章から繰り返し述べていることは変わらない。あなたがどんなに優れた社会人であっても、それが伝わらない限り、あなたは「優れていない」のだ。
アジェンダの翻訳は「協議事項」だ。決して目次ではない。アジェンダのしっかりしている会議は、アジェンダにインラインで結論を書き込むだけのスッキリした形になる。
逆の視点で捉えると、議事録が文書として、ドキュメンタリーとして完結していていないということは、どこかにブレスト要素が書き加えられている。それは、別段で書いた方がよい。議事録上は、収束した結論を書くべきだ。
会議を推進するファシリテーターは、有能なMCである。今まで意識したことはないかもしれない。会議の予行練習をしよう。プレゼンなら練習する、営業訪問でも想定質問を考えるというのに、少なくとも筆者の周りで、会議に当たり予行練習をしている人はいない。
時間の配分を考え、準備に準備を重ね、過不足なく発散(ブレストなど)と収束(結論・方向性)を満足させ、同席している観客に「来てよかった。次も必ず来なくては」と思わせなくてはならない。どこぞの平凡な社会人のように、会議が始まった瞬間、「どのように進めましょうか」と言ったら、あなたはその瞬間マスターオブセレモニーではなくなる。
※本note記事は、これまでに公開してきた記事をもとに、構成を見直し再編集したものです。
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