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「粗利、即答できますか?」って聞かれて、答えられない会社はおしまいだって話。

池上です。京都の白鳩という下着ECの会社で社長をやってました。会社は小粒ながら、2014年に東証へ上場しました。EC歴でいうと2000年からなんで、もう22年になります。

初めましての方は、こっちも是非。


「いや、伸びてるからええねん」って言う社長

長くこの業界にいてこれまで、ほんといろんな会社を見てきました。

急成長してる会社。気がついたら消えてた会社。ずーっと手堅くやってる会社。中には「あれ、この会社まだあったんや」って、奇跡的に残ってる会社もある。

その中で、一定の割合で、ある状態に陥ってる会社があるんです。

「売上は伸びてるのに、なぜか手元にお金が残らない」

しかも厄介なのが、社長本人が「うちは売上伸びてるから大丈夫」って思ってる。これね、外から見るとめちゃくちゃ怖い状態なんですよ。

こういう会社の社長と話してると、共通点が1個あります。

ある日、僕が聞くんです。「社長、今月の粗利、ざっくりでいいんでいくらか言えます?」

答えられない。

「ざっくりこのくらいやと思います」「月末締めでなんとなくは…」って返ってくる。

毎日売上は見てる。受注件数も見てる。それでも、粗利は分からない。これね、ほんま、いい状態とは言えません。

なので今回はもう、これだけ言わせてください。

粗利は、社長自身の目で見てください。

これができてない会社に、明るい未来は、ないです。

で、白鳩はどうやったんやって話

「池上さん、偉そうに言うてますけど、白鳩は最初からちゃんとできてたんですか?」

って聞かれそうなんで、先に言っておきます。

全然できてなかった。

2000年に EC 事業を本格立ち上げした時、社内のシステムは何使ってたと思います? オフコンですよ。画面が緑色のオフィスコンピュータ。今の若い人は「何それ?」ってなるやつです。

あの時代、リアルタイムで粗利を管理するなんて、夢のまた夢でした。やってたことといえば、エクセルでメーカーごとの売上と支払い比率を「だいたい」眺める、くらいのもんです。

ただ僕、その前のキャリアが下着メーカーの営業マンだったんですね。商品を売る側にいたんで、買う側に回った時に、ちょっとした感覚はあったんです。

「このメーカーからの仕入れは、なんか割がええな」「このメーカー、売上の割に在庫多すぎひん?」みたいな、そういう肌感覚。これがあったから何とか初期は乗り切れたとこはあると思います。

それで、それがガラッと変わったのが、上場準備の時。

監査法人から「適正な財務報告するには、基幹システムがないと話にならん」って言われて、自社で組むことになりました。

最初は売上管理だけ。そこから徐々に仕入れデータをひもづけて、商品別の粗利が見えるようにしていった。一気にではなくて、段階的に。

これね、今振り返ると、正解だったと思います。最初から完璧なシステムを作ろうとしたら、絶対途中で挫折してたし、もっと言うなら、莫大な金がドブに消えてた。

今見えてないことを、ひとつずつ見えるようにしていく」 — このアプローチが、現実的なんですよ。完璧主義の人は、これ、覚えといてください。

広告費は魔物

粗利が見えるようになってからも、しばらく「手元に金が残らん」時期がありました。

なんでだろう、って原因を探っていったら、犯人は広告費でした。

モールのECC(ECコンサルタント)から担当者に営業電話がかかってきます。「この広告、メルアド獲れますよ、乗りましょう」って。

これね、当時はメルアドの数がいくらあるかが、ステータスみたいな風潮があったんです。10万件持ってます、20万件持ってます、みたいな自慢合戦。担当者は悪気なく、「売上伸びるならええやろ」って判断してまう。

そして、2ヶ月後にとんでもない請求が来る。

EC における広告費は、魔物だと僕は思ってます。

  • 効果は一時的で、継続性はほぼない

  • 出稿した瞬間から、請求は確定する

  • 担当者が、社長に黙って判断できてしまう

この3つが重なると、もう、洒落にならん。

白鳩でやったのは、稟議書による事前申請の義務化と、費用対効果レポートの定例化。「面倒くさい」文化を、意図的に作りました。

担当者からすれば、面倒くさいに決まってる。でも、それがよかった。

面倒くさいから、担当者が「広告費かけずに売上上げる方法、ないか?」って自分の頭で考えるようになるんですよ。これね、副次効果としてめちゃくちゃ大きい。

それともう一つ、これは声を大にして言いたい。

広告費の管理が甘い会社は、不正の温床になります。

「売上予算必達!」みたいな社風の会社は、担当者がいつもピリピリしてるんです。そんな時に ECC からの誘惑が来ると、社長に内緒で広告を買ったりしてしまう。

一時的に売上は達成する。けど、いつかバレる。絶対バレる。規模が大きくなるほどリスク高い。そして、最終的に不幸になるのは担当者本人なんですよ。

これね、本当に社長が「面倒くさい仕組み」を作って、守ってあげないとあかんとこです。

商品別に粗利が見えると、世界が変わる

ちょっとここで、いいかげんな数字並べてもしゃーないんで、ざっくり相場感を書いときます。

モール手数料は、Amazon で 5〜15%、楽天で諸々含めて 4.5〜10.5%。Yahoo! は出店料・ロイヤリティこそ無料だけど、ポイント原資や決済手数料で結局数 % は持っていかれる。

どのモール出しても、売上の 10〜15% は手数料で消えていく。

これはもう、税金みたいなもんだと思ってください。最初から「かかって当たり前のコスト」として、予算に織り込む。気にしても安くなりませんから、毎日見てもしゃーないとこです。

業種で粗利率も全然違います。

化粧品売ってる会社と家電売ってる会社、同じ EC でも、商売の構造がまるで違う。だから売り方も変わる。当たり前なんですが、これ自覚していない経営者、結構いてます。

それで、これが本題なんですけど。

商品別に粗利が見えるようになると、まず不良在庫の問題に気づきます。

「あれ、これずっと在庫持ってるけど、実は粗利全然取れてへんやん」っていうのが、商品単位でデータ持ってはじめて分かる。これは、感覚値では絶対分からんとこです。

そして、もう一つ大事なのが、何故か粗利が異常に悪い商品を発見できる。

理由はだいたい2つ。

  1. 仕入れ原価が間違って入力されてる

  2. 売上達成のために、誰かが値段を勝手に下げてる

2.はね、計画的な安売りなら全然いいんです。スーパーセールでこの商品は赤字でも引きにする、とか、それは戦略。

問題は、計画外の安売り。担当者が予算に届かないから、勝手に販売価格を下げてる。あってはいけないことだけど、起こります。粗利の見える化は、こういう抑止の意味でも要ります。

PB(プライベートブランド)の話もしときましょうか。PB は確かに粗利率は高い。でも、在庫リスクも全部自社持ち。商品単位で利益管理してない状態で PB やるのは、正直、ギャンブルに近いと僕は思ってます。

PB は「粗利率の数字が高い」だけで判断したらだめです。本当に儲かってるかは、在庫の塩漬け具合まで見て初めて分かる。これ、何回も痛い目見てきました。

「掛け率は、一度下げたら戻せんのじゃー」

これ、僕が下着メーカーの営業マン時代に、上司から怒鳴り散らされた言葉です。

ほんと、真剣に怒鳴られて、こっぴどく説教された、あの時のシーン。今でも頭の中で再生されます。

仕入れ先との交渉で、掛け率を下げてもらえたら、確かに粗利率は改善する。仕入れ側からしたら、こんなありがたい話はない。

けど、一度下げてもらったら、よっぽどのことがない限り、二度と戻らんのです。

仕入れ先にも事情がある。物価高のこのご時世、彼らだって掛け率は上げたい。上げようとしたら何が起きるか。関係が一気にギクシャクするか、そもそも交渉のテーブルにすら載せてもらえないか、どっちかです。

そやから、仕入れ交渉は慎重にやるべきだと思います。

そして、ここからが大事なんですが、交渉の武器は「粗利データ」やなくて「販売実績データ」

仕入れ先の中には、自社(メーカー)の商品が、どれだけ売れてるか把握してないとこ、結構あるんじゃないでしょうか。月の取引金額しか見てない。

そんな相手に、「御社の商品、毎月これだけ売れてます。買ってくれてるお客さんはこういう層で、こういうシーズンに動きます」って具体的データを見せられたら、もう交渉の空気がガラッと変わる。

「じゃあ、次のシーズン、こういう商品を一緒に作りませんか」みたいな話に発展する。これが、長期で続く関係です。

粗利データはあくまで社内の戦略指標。仕入れ先に見せるものではない。数 % の粗利率の差が、年間でどれだけ業績に響くか。これは、経営者が自分の頭の中で押さえとくべき数字です。

理は元にあり」、商売の原則です。

…って、ここまで真面目に書いてきたけど、実はこの「理は元にあり」っていうフレーズ、僕が若い頃に売り場で覚えた言葉で、商売の根っこは仕入れにあるって意味です。粗利を語ろうと思ったら、結局ここに戻ってくるんですよ。

粗利が見えてない会社の、その後の話

ここはストレートに言わせてください。

粗利管理ができてない会社に対する、僕の正直な感想は、「よく、これで経営できとるな」です。

…乱暴な物言いですね。すいません。

でも現実問題、ECの追い風がずーっと吹いてるから、今は何とかなってるんです。コロナ以降、EC への消費者シフトは確実に進んだ。ある程度真面目にやってれば、売上は立つ業界です。

だから、粗利が見えてなくても「なんとかなってる」ように見える。今は。

でも規模が大きくなったら、絶対壁にぶち当たります。

売上が増える。従業員も増える。倉庫が手狭になる。広告費は気がついたら膨らんでる。そん時、「何を削るか、どこに投資するか」を判断するのに、数字が見えてなかったら、もうお手上げです。

「なんか最近、売上は伸びてんのに、社員のボーナス出されへん」「広告費削ろうと思ったら、どれが効いてるか分からんから判断できへん」って、こうなる。

そこから、じりじり利益削られて、ある日「あれ、うち、潰れる?」って気づく。

僕、22年見てきて、こういう会社、何社見たか。ほんと、結構あるんです。

では、何から始めたらいいのか

「で、結局何から始めたらいいんですか?」

って思いますよね。

正直に言わせてもらうと、利益管理はもう、システム使う他ないと思ってます。

AI も DX も浸透してる時代ですから、機械にできることは機械にやらせる。人にしかできないことを、人がやる。これ、僕の中ではもう、揺るがない方針です。

考えてみたらおかしいんですよ。今や EC で、受注管理を手作業でやってる会社、ないでしょう。在庫管理も、発送管理も、全部システム使ってる。

なのに、利益管理だけは未だに手作業とエクセルでやってる事業者が多い。これ、構造的におかしいんです。

「いや、システム入れるほどの規模やないから」って言う人、いるんですけど、それ、逆。

「もっと売上規模大きくなったらシステム入れよう」「データが完璧に揃ってからシステム化しよう」 — これ、全部、後手後手の発想です。

システムを使い始めるから、データが揃っていく
システムを使い始めるから、業務効率が上がる
システムを使い始めるから、社長が数字を見る癖がつく

そして、社長が数字見る癖がついた会社は、強いくなります。会社全体のリズムも、よくなる。

白鳩でも、結局そういう流れでした。最初は不格好だったけど、走りながら整えていった。今思えば、それでよかったと思います。

ほんで、今やってること

最後にちょっとだけ。

今は、自分のこれまでの経験を taily(テイリー)っていうサービスに突っ込んでます。中小 EC の利益管理・在庫管理のやつ。詳しいことは、また別の機会に書きます。

一個だけ言っておくと、僕がしんどいなと思うのは、「社長の頭の中にしか粗利の感覚がない」って会社が、ほんと多いってことです。そして、その粗利の数字の精度が、これまた良くない。

社長がエクセル開いて、勘で判断する。それで回ってる間はいい。けど、それ、社長が休んだら止まるんですよ。会社の数字が、ひとりの体調と紐づいてる。それ、もう会社の仕組みとは言えない。

そこを、ちょっとずつ崩しに行きたい。それだけです。

次回は、発注の話を

次は「発注を制する者が EC を制す」っていうテーマで書きます。

仕入れと粗利の関係、なぜ発注管理がそのまま利益管理になるのか。そして、僕が今でも思い出すと胃が痛くなる、白鳩での「福袋失注事件」の話も、ぼちぼち書こうかと思います。

フォローしといてもらえると、更新が届きます。ぜひ。

ほな、また。

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