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個人商店を上場企業まで持っていった私が思う「経営の8カ条」——従業員を「行先のない船」に乗せていませんか

あなたの会社には、行先がありますか?

従業員が今日も出社してくれる。それは当たり前のことじゃない。みんなを、どこへ連れていこうとしているか——今、言葉にできますか?

もし答えに詰まるなら、この記事は、そんなあなたのために書きました。

僕はEC業界で22年、個人商店から上場企業まで経験しました。(詳しくは自己紹介記事をご覧ください)

その中で見てきたのは、売上が伸びているのに潰れてしまう会社の共通点です。

経営理念がない。評価基準がない。経営者だけが全部分かってる。そんな会社は、ある程度伸びたところで静かに崩れていく。崩れ始めてから気づいても、もう遅い。

だから今日は、僕が大事にしてきた8つのことを書きます。難しい話はしません。でも、これは本気の話です。


一条|経営とは「かかわる者すべてを幸せにするシステム」である

「経営」って、そもそもどういうことなん?
会社を”経営する”とか、よく「経営」というフレーズを口にしてるけど、一体どういう意味なのか。

売上を最大化すること? 利益を出すこと?意思決定をすること?
ーー 違う、と僕は思っています。

かつて、こんな光景を見た。社員みんなの眼が$マークになっている会社。売上NO1になるためなら、隣の同僚を蹴落としたれ——そういう競争が社内で静かに始まっている会社。そういう会社が、ある程度伸びたところで必ず崩れていくのを、僕は業界で22年見続けてきた。

売上を目的にしたとき、人は数字を見るようになってしまう。お客様じゃなく、数字を見てしまうねん。

それが嫌だった。だから、白鳩ではずっと別の問いを立ててきた。「この仕事は誰に喜んでもらうためにやってんの?」。

経営とは、かかわる者すべてを幸せにするシステムである。

「経営とは」を1文で述べよと言われたら僕はこう述べます。経営者の仕事は、そのシステムを作ることです。"システム"="仕組み"を作らなあかんねん。

これは綺麗事じゃない。仕組みの話です。社員が幸せなら丁寧に働く。お客様が幸せなら戻ってきてくれる。仕入先が幸せなら良いものを回してくれる。その連鎖が会社を持続させる。売上は目的じゃなく、その連鎖の結果として出てくるものだと思う。そうじゃなきゃ持続性がない。


二条|経営理念のない会社はXXだ

あなたの会社、経営理念はありますか?

「まあ、なんとなく……」
「社長の頭の中にはある」

これ、ないのと一緒でっせ。
成文化されていない → 伝わらない → 意味がない。

白鳩では2005年ごろに、私が中小企業家同友会の実践道場に参加して、経営理念を成文化しました。それ以前は、みんながバラバラで動いていた。誰も「何のために仕事をしているのか」の答えを持っていなかった。

定まった後はどうなったか。すぐには変わらない。浸透には本当に時間がかかる。でも徐々に、全員の行動のベクトルが揃ってきた。迷ったとき、判断するとき、「これは経営理念に合致しているのか?」——その一点で決められるようになった。意思決定のスピードが格段に速くなった。

当時、白鳩には80人いたんですが、毎日の朝礼で「今日はあなたです、感動したことを言いましょう」という持ち回りをやっていた。白鳩の企業理念は「お客様に感動を届ける」です。80人なので順番が来るのは2ヶ月に1回。それでも5〜6年続けたら、会社が変わってきた。理念を「貼って終わり」にしちゃダメで、日常の行動に落とし込むことが大事なんです。とにかく全員に経営理念を浸透させたかったんで、みんなのPCのディスプレイのスクリンセーバーに経営理念が出てくるようにしたもんです。

経営理念のない会社というのは——従業員を行先のない船に乗せて出航するのと同じ。乗せるからには、行先を明示する義務が経営者にはあるに決まっとる。


三条|オプトアウトという考え方

「やる前から心配して結構やらない。そうじゃなく、とりあえずやってみよう」——これ、元グーグル日本の村上社長がコラムに書かれていたのを読んで以来、僕のモットーになっています。

オプトアウト思考というのは、やらない理由がなければとりあえずやってみる。不具合があれば修正すればいい。ダメならやめればいいだけという考え方のことです。失敗しても「やめる」という選択肢がある。でも「やらなかった」という選択肢には、後から取り返す方法がない。

白鳩のとき、中国の天猫(Tmall)への出店話が舞い込んできた。上場の直前だったから、ガバナンス的にどうかという話になってたかもしれない。「誰も中国へなんか売っていないのに成功するわけない」という声もあった。でも——ノータイムで出店を決めました。まさにファーストペンギン。結果は越境ECの礎になった。

「やらなければよかった」と反省した記憶はほとんどありませんね。ただ、まわりのスタッフは振り回されて大変だったと思う。それは本当に申し訳なかったと反省してます。


四条|売上を目的にした瞬間、会社はおかしくなる

少しだけ上述にても触れましたが、ECの経営者が特に陥りやすい罠が、売上を目的にしてしまうことです。「目的」と「目標」の言葉は似ているようだけど、使い分けには注意が必要です。

売上を目的にすると、二つのことが起こるねん。

一つ目——社内での足の引っ張り合い。売上NO1になるためには、他のスタッフを蹴落とせばいい、と賢いスタッフはすぐに気づく。こんな競争が日常になったら、チームは崩壊する。

もう一つ——ECの場合、一件の売上が誰か一人だけの功績じゃない。バイヤーがいる、カメラマンがいる、店舗運営者がいる、カスタマー対応者がいる。その全員が絡んではじめて売れる。なのに個人に売上の数字を課しても、どうやって達成すればいいか途方に暮れるか、間違った方向に走るか、どっちかです。

白鳩の人事評価は、80%が経営理念の達成度、20%が目標値でした。その目標値も売上高ではなく、各担当の業務KPIの数値。EC版KPIツリーを作って、それぞれが自分の仕事に集中できるようにした。KPIツリーを作るにはちょっとコツがあるけど、めっちゃオススメです。

「売上を上げるぞ!」と意気込んでも、どうやって達成するかが見えなければ意味がない。自分がコントロールできる指標を各人が持つことが大事なんです。


五条|スピード、スピード、スピード

シンプルに言います。
常に向こう側にお客様がいる、という意識を持てるかどうか。

インターネットなので、いつ、何人のお客様が訪れるか分からない。だから、できることは今すぐやらないといけない。何故ならば、お客様がそこに行列をなして並んでいるかもしれないから。
有名ブランドの新製品が届いたら、到着後すぐ商品をアップする。瞬く間に売れていく。でも、アップが遅れると「まだですか」とお客様から叱られることもある。そんだけ向こう側には、たくさんのお客様が待ったはるということですわ。

サイトでのお客様との出会いは、一期一会。欠品しているSKUの補充を忘れた。そのSKUが欲しかったお客様がページに来て、買えなくて離脱する。そして二度と来ない。
すぐにやっていれば、そうはならなかったのに。

クレーム対応も同じ。翌日に回したら遅い。その日のうちに動く。対応が遅いと、必ず悔やむ羽目になりまっせ。


六条|WHY? WHY? WHY?

どの会社でも、仕事でミスは発生する。ミスが起きたとき——「二度とするな」だけで終わらせない。

なぜ間違えたのか。なぜそうなったのか。その答えを突き詰める。そこまでやると本人も納得するし、同じミスが防げるようになる。

それだけじゃなく、「なぜその仕事をするのか」と問い続けると、最終的には経営理念への接続が見えてくる。迷ったとき、その答えが自分の確信になる——という感覚、やってみると分かります。

従業員を指導するとき、論理的思考を促すためにはこの「なぜ?」の繰り返しが一番理にかなっているし、パワハラにもなりません。


七条|右腕はいらない

これ、意外に思う人もいるかもしれんけど、よくよく考えたらそうやで。

せっかく育てた右腕が辞めてしまったという話を、多くの経営者から聞いてきました。右腕が身内ならそんな心配はいらんけど、売り方のノウハウ、会社の財務、ビジネスシステムまで共有していた右腕が辞めたとき、その会社はどうなるか。リスクは相当高い。

昔、ある店舗の右腕を含めた4人が同時に辞めた話を聞いた。右腕は親の事情、他の3人はそれぞれ別の事情だとのこと。僕はすぐに思った——そんなんおかしいに決まってるがな。4人が同時に辞めるのは、結託して新しく店舗を開こうとしているに決まってるやん。後で聞いたら、案の定でした。こんな異常事態に気づかない経営者もどうかと思うけど、右腕を育てるというのはそういうリスクを内包している。

では、右腕の代わりをどうするのか。

それは、組織をフラットにして権限委譲をするんです。ノウハウも一人に集中させない。横と繋がって、はじめてノウハウが完成するようにする。

組織全体の構成のパズルを解く鍵は経営者だけが持っている——ラーメンの秘伝のスープのレシピは、経営者の頭だけにしまっておくのと同じなんです。これはある意味のリスクヘッジなんです。

組織作りは、経営者の最も重要な仕事です。「かかわる者すべてを幸せにするシステム」を仕組み化するのが経営者のミッションですからね。


八条|経営者は孤独であるべきだ

ある先輩経営者に言われた言葉があります。

京都で皮革製品のグリースを製造している会社の社長。普段は真面目な一面を見せたことがほとんどなかった人が、ある日、横断歩道を渡りながらさらっと言ってくれた。

「池上くん、経営者は孤独やで」

心にズドーンって来た感じです。それ以来、吹っ切れたました。

京都に帰ってきてから、従業員との関係について悩んでいました。仲良く迎合するべきか、褒めて育てるべきか、いったいどうすればいいんだろう、、、。

それからは、自分が考える会社の方向性に向かって、ガムシャラに進み出した。従業員の顔色を一切気にしなくなった。絶対に間違っていないという確信があったので。当然、従業員との距離は遠くなったけど——でも逆に、みななと公正に接することができるようになった。えこひいきをしなくなった、ということです。

今、孤独に押しつぶされそうになっている経営者に一言、言うとしたら——

「孤独が嫌なら経営者を辞めればいい」そんだけです。
冷たい言い方やけど、経営者とはそういうもんなんです。


+α|人事評価に正解はない

8カ条の補足として、人事評価の話をしておきたい。

おそらく上場企業の全社統制の中で、唯一、人事評価だけが法的に決まった雛形がない。鉛筆舐め舐めの評価は、ガバナンス違反やけど、ある程度整った評価基準なら、監査法人も口を出さへん。それだけ、会社の規模や業種、環境によって変わってくるということなんやろなぁ。

一般的にはMBO(目標管理)制度で評価している企業が多いと思うが、白鳩では、ECならではのハイブリッド型に最終的にたどり着いた。白鳩の人事評価は80%が経営理念の達成度、20%が目標値——と言いました。一見、楽勝そうに見えるでしょう。しかし、実際はその通りそうなんです。でも数年やっていると、「楽勝では嫌だ」というスタッフが現れてきた。なんとも悩ましい。最近の若者は、「評価して欲しい」らしい。

そこで頭を振り絞って考えたのが、360度評価と偏差値の導入です。360度評価は上司が部下を評価するだけでなく、課員同士、部下が上司を評価し合うもの。偏差値は、各部署の評価点数を部署間で調整した後に偏差値化したもの。超厳密な数字になるので、これは公正な評価になる。従業員が「納得がいかない。私の評価を知りたい!」と詰め寄ってきても「はいこれです」と見せれるように、全身全霊を込めて作り上げた。

もう一つ大事なこと——それは「僕は誰一人も評価をしていなかった」ということ。

社長が評価をすると、賢いスタッフは社長にゴマをするようになる。社長が見ているときだけパフォーマンスを上げる。だからいつでも社長のことを横目で見るようになる。そんなんこっちも、どれが本当の姿なんか分かるわけがない。

それが嫌だった。みんなに見ていてほしいのは、社長じゃなくて、常にお客様なんやから。


おわりに

EC業界は成熟してきました。これからは「いかにお客様に選ばれるか」が生き残りのポイントです。

「白鳩は今、売上げは良くないけど、仕組みで動いてるからお客さんにフラストレーションを与えてない」——これが現状です。売上が一時的に落ちても、仕組みで動いている会社は崩れない。

8つ書きましたが、一番大事なのはやっぱり経営理念です。スタッフが「これだ」と言える経営理念を、今すぐ成文化してください。

これが全ての出発点です。残りの7つは、その後からついてくる。


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次号予告

今や外すことのできない、ショッピングモール。楽天などのモールの手数料について、私なりの解釈をお伝えします。

では、また。


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