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履歴書100点の人が、なぜ面接でつまづくのか|具体と抽象の落とし穴

正直、履歴書を見た瞬間に「あ、この人だ」と思ってしまったんです。

先日、ある採用面接をしていた時のこと。 経歴を見ると、まさに100点満点に近い人が応募してきてくれました。

今回の募集ポジションにあまりにもマッチしていて、「期待するな」という方が無理な話でした。 面接が始まる前から、私の中では勝手にハードルが上がっていたのかもしれません。

実際に面接が始まってみると、これがまた、とってもしっかりしている人なんです。 なんていうか、事前に用意してきた台本をただ棒読みしているのとは違う。 自分の言葉で、自信を持って答えてくるんです。

「職場のコミュニケーションを活性化して、働きやすい職場を作りたいんです!」

そう熱く語ってくれた時には、ああ、この人は本気でそう思っているんだなって。 言葉の端々から熱量が伝わってくる。

一歩間違えると、こういうセリフって綺麗事に聞こえたり、ただの棒読みに聞こえたりするじゃないですか。 でも、その人の目力とか、話し方のトーンを見ていると、わかるんです。 「あ、これは本音だな。嘘じゃないな」って。 少なくとも、長年面接をしてきた私の勘はそう言っていました。

だから私の中では、面接中にもかかわらず、もう心の中で合格ハンコを押していました。 「ぜひ、2次面接に進んでほしい!」って。


感覚派と理論派、面接官の見ている世界は違う

でもね、面接ってそんなに単純なものじゃないんですよね。 ここからが、実は本当の戦いだったりするんです。

今回の面接は、私ともう1名、計2名で担当していました。 受験者の方が退室されて、ドアが閉まった瞬間。 ここからが、私たち面接官の「すり合わせ」の時間です。

実は、面接って受験者とお別れするまでが大変なんじゃなくて、お別れした後の方が大変だったりします。 まさに今回のように、面接官同士の意見が一致しなかった場合は、なおさらです。

「どうでした?」

私の方が年上だからか、もう1人の面接官は、いつも私に先に印象を聞いてきます。 私は、自信満々に伝えたんです。

「いや、とても良かったんじゃないですか? 即戦力だし、熱意もあるし」

でも、彼の反応が鈍い。

「僕も、人柄は良いと思ったんですが……」

出た。「ですが」。 この接続詞が出た瞬間、「あ、これは意見が割れるパターンだな」って察しました。

ちょっと裏話をすると、私は完全に「感覚タイプ」です。 「この人と一緒に働きたいか?」「パッションがあるか?」を重視する。 対して、もう1名の彼は、徹底した「理論タイプ」。 ロジックが通っているか、再現性があるか、数字で語れるか。そこをめちゃくちゃ見てる。

ペアとしては、感覚と理論で組んでいるので、会社としてはバランスがいいわけです。 でもね、議論になると、私は弱いんです。 いつも、理論武装した彼に負けてしまう。 「なんとなく良いと思った」じゃ、彼には勝てないんです。

だから彼が、「良いと思ったんですが……」と言い始めたとき、すごく嫌な予感がしたんです。 

案の定、彼はこう言いました。

「とてもいい話だったのですが、具体的じゃないんですよね」

彼の主張はこうです。 志望動機や今後のプランなど、熱く語ってはくれたけれど、抽象的な話が多くて具体的に働くイメージが湧かなかったのです。

「コミュニケーションを改善したい、というのは分かりました。でも、それを『どうやって』やるのかが見えてこないんです」

確かに。 そう言われてみれば、「コミュニケーションを改善したい」「風通しを良くしたい」など、耳障りの良い言葉はたくさん出てきましたが、具体性に欠ける部分はありました。

面接中、私が「もう少し詳しく話してもらえますか?」と助け舟を出して、少しは掘り下げてくれたものの、彼が納得するレベル、つまり「映像化できるレベル」までは落ちていなかったのです。

抽象的な話が多く、具体的な話が少なかった。 理論派の彼にとっては、そこがどうしても引っかかっているようでした。

「コミュニケーションを改善したい」だけでは通じない世界

でもね、私はやっぱりこの人を気に入っていたんです。 だから、なんとかして彼を説得し、「じゃあ、2次面接にいってもらいましょう」と、彼に言わせなきゃいけないわけです。

ここでふと、考えました。 なぜ、あの完璧に見えた候補者は、理論派の彼に刺さらなかったのか?

それは、「言葉の解像度」の問題だったんだと思います。

例えば、「コミュニケーションを改善したい」という言葉。 これ自体は、とても素敵な言葉だし、誰も反対しない正義の言葉です。 でも、ビジネスの現場、特に採用の場面では、これだけじゃ足りないんですよね。

「コミュニケーションを改善する」を実現するためには、もっともっと具体的な内容を知らないといけない。

  • ランチ会を開いて雑談の時間を増やすのか?

  • 1on1の面談制度を導入して、メンタルケアをするのか?

  • 外部講師を呼んでコミュニケーション講座を開くのか?

やり方は無限にあるわけです。 そして重要なのは、「その会社の今のフェーズや課題に合ったやり方」を選べるかどうかなんです。

理論派の彼は、そこが見たかったんだと思います。 「改善したい」という『想い(抽象)』はわかった。 じゃあ、そのための『手段(具体)』は何を持っているの? と。

ここがフワッとしていると、 「入社してから、実際に何をしてくれるのかわからない」 「口だけで終わるんじゃないか?」 という不安を、面接官(特にロジカルな人)に与えてしまうわけです。

結局、その場では私が必死に食い下がって、「ポテンシャル採用」という枠でなんとか2次面接に進んでもらうことになりました。 でも、冷や汗ものでした。 100点の経歴を持っていても、「具体性」が欠けているだけで、ここまで評価が割れるんですから。

面接で評価される人がやっている「具体と抽象」の往復

もし、この記事を読んでいるあなたが、これから面接を受ける、あるいは大事なプレゼンを控えているとしたら。 私から一つだけ、アドバイスできることがあります。

それは、「具体と抽象」の行き来を楽しんでください、ということです。

これ、ちょっと小難しい表現ですが、やることはシンプルです。

先ほどの例で言えば、 「コミュニケーションを改善したい(抽象)」 と思ったら、すかさず 「具体的には、週に1回、部署を超えたランチミーティングを設定して、まずは顔と名前を一致させることから始めます(具体)」 と、地面に足のついた話をしてみてください。

逆に、 「毎日日報を書きます(具体)」 という話をするなら、 「それによって、チーム全体の進捗の見える化を図り、無駄な会議時間を減らして生産性を上げたいからです(抽象/目的)」 と、その行動の意味を語ってください。

このように、 具体的なことから抽象的な目的を考える。 抽象的な想いから、具体的な行動を考える。

この両方向の矢印を行ったり来たりできる人って、やっぱり強いんです。 感覚派の私にも響くし、理論派の彼も納得させられる。 最強の武器になるんです。

「想い」だけでもダメ。「マニュアル」だけでもダメ。 その間を、エレベーターみたいに行ったり来たりする。

話している最中に、「あ、今ちょっと抽象的な話が続いたな」と思ったら、あえて「具体的に言うとですね」と具体的なエピソードを放り込む。 逆に細かい話ばかりしてしまったら、「要するに、私が実現したいのはこういう世界観なんです」と抽象度を上げてまとめる。

これができると、面接官は勝手に 「この人は、視座も高いし、実務能力もありそうだ」 と評価してくれます。

今回の候補者の方も、次の面接ではきっと、この「具体性」を問われることになるでしょう。 願わくば、彼がそのハードルを越えて、私たちの仲間になってくれることを祈っています。 (なにせ、私は感覚的に大好きなので!)

面接は、自分を売り込む場です。 でもそれは、ただ商品を並べるだけじゃなくて、「この商品(自分)を使うと、こんないいことがありますよ」と、具体的にイメージさせてあげる場でもある。

ぜひ、皆さんも自分の言葉が「フワッとしすぎていないか?」あるいは「細かすぎて何が言いたいか分からなくなっていないか?」 一度、点検してみてくださいね。

私も次の面接では、理論派の彼に負けないように、もう少しロジカルに説得できる準備をしておかないとなぁ……なんて、反省しています。


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