第31回電撃大賞 大賞受賞者 電磁幽体先生について
はじめに ※2025年5月追記
はじめまして。ラノベ作家の有象利路と申します。
本記事はデビュー前に惜しくも亡くなられた、第31回電撃大賞 大賞受賞者 電磁幽体先生のことを語る記事です。
私のnoteは基本的にこの記事をヘッダーに固定しますので、彼に興味のあった方は是非一読して頂いた上で、興味がない方もとりあえず読んで、いかに彼が愉快な人間であったかの一端を知って頂ければ嬉しく思います。
【訃報】電磁幽体先生 に関するお知らせ
— 電撃大賞 (@dengeki_taisho) December 27, 2024
(第31回電撃小説大賞《大賞》受賞者) pic.twitter.com/SY3fwZ7wfl
令和6年12月27日、このような発表が電撃大賞公式Xよりなされました。
受賞者の電磁幽体先生(以下、電磁くん)がデビュー前に逝去されました。
彼は私の学生時代の後輩であり、旧知の仲でした。
電磁幽体先生ご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。
— 有象利路 (@toshmichi_uzo) December 27, 2024
お互い口外しないように取り決めていたのですが、彼とは旧知の仲でした。
画像は取り留めのない文章です。まだ実感が湧いていないです。
こういう形で皆様に彼の話をするのは本当に無念でなりません。 pic.twitter.com/s8hWNwJx3P
そのあたりの事情は、こちらの私のツイートと添付画像をお読み下さい。
あわせて、この過去記事も読んで下さればと思います。
この記事に出てくる後輩は電磁くんのことです。
これを書いた当初は、まさか彼が電撃大賞で大賞を受賞し、そしてこんな形で居なくなるとは思いもしなかったですね。
今この記事を読み直すと、バカをやっていたあの頃の楽しい自分達を思い出し、胸が苦しくなって記事ごと消したくなりますが、残しておきます。
記事を作り続ける意味は、そういうところにあるのではないかと思うので。
(2025年5月追記)
『妖精の物理学』は、無事発売の運びとなりました。
2025年5月10日発売です。
著者は当然電磁幽体くん、イラストはnecomi先生が担当されています。
素晴らしいイラストレーターさんに担当してもらうことになって、生前の彼もとても喜んでいたそうです。
先んじて説明しておくと、本作は電磁くんが改稿したものではなく、彼の応募原稿(初稿)をそのまま最低限の校正を経た上で出版されます。
中身は誰も、一切手を付けていません。
それがどういう意味を持つのかは、実際に皆様が本作を手に取って読んでみて感じて下さい。
また、本作の出版にあたって、私はほとんど何もしていないのですが、少しだけお手伝いしました。
本来、改稿も終わっていないデビュー前の新人の遺稿を、いくら大賞を取ったからといえど『応募原稿で出版する』という判断は中々出来ないと思います。
話題性はあるかもしれませんが、発展性はありません。
続きが書かれることもないし、周りがどれだけ望んだところで誰にもどうすることも出来ない。
商業的には最初から失敗しているようなものです。
出版社及び編集部からすれば、正直やる意味なんてあんまりないんですよ。
出版取り止めも選択肢としては現実的だったと思います。
それを分かった上で、彼のご遺族や私に対し電撃文庫編集部は『必ず出します』と早い段階で約束してくれました。
(何より彼のご両親が出版を望まれておりましたので)
そしてその約束通り、例年の大賞作品の発売時期からすると少し遅いくらいのズレで、きちんと大賞作品として発売が決まりました。
これが彼のデビュー作にして遺作であることも隠さずに、本書の袖コメント(本来は作者が書くところ)に記載されています。
考えうる限り、一人の死去した新人作家に対して、最も誠実な対応をして頂いたのではないかと思います。
つきましては、(株)KADOKAWA、電撃文庫編集部編集長の阿南氏、電磁くんの担当編集のお二人、本作の出版に携わった全ての関係者の方に、この場を借りてお礼申し上げます。
この加筆の公開時期は大体発売ちょっと前か発売日くらいに決めているので、そろそろ『妖精の物理学』は書店で見つかると思います。
見かけた際は是非本作を手に取ってみて下さい。
何卒宜しくお願い致します。
あっ…ついでに有象の作品も手に取って、本棚に彼の作品と一緒に並べてくださると嬉しいっす(唐突な宣伝)
書店で互いの自著が並ぶ所を見ることは叶わなかったので、せめて皆様がセルフで…
本記事の意義と私の役目
事実は小説より奇なり、とはよく言ったものですが、本当にこの言葉が今もなお存在する意味を痛感します。
彼が何となく声を掛けたノリのいい大学の先輩にラノベを書かせたら何故か文才があり、特に苦労することもなくその先輩があっという間に一撃でプロになって、数年後自分も同じ賞レースで頂点を取った上でプロになり、しかし処女作を刊行する前にこの世を去る。
三文小説ですね。これが私と電磁くんの人生であることを除けば。
電撃大賞ってもっと倍率がやばいくらい高くて、そもそもラノベ作家自体、なることそのものが結構難しい修羅の道のはずなんですけどね。
あの頃の私、そして電磁くんは、あまりそういうことも分かっておらず。
結果、「原稿を書いて送って落ちて、それを肴に酒を飲む」という当初の我々の雑な目的が、私と彼の人生そのものに多大なる影響を与えました。
(まあ彼は当時から本気で作家になりたかったと思いますが)
無論、後悔はありません。私は作家業を今も何故か続けており、しかし自分に向いているとも思い、ともすれば天職だとすら感じています。
電磁くんも、念願だったプロ作家の門扉を開き、荊と宝石が散りばめられたその道を進むことに、きっと最大限の期待と興奮を感じていたと思います。
それでも、私と彼の道が交差することなく、彼の道だけが途絶えてしまったのは、本当に残念ですし、無念ですし、惜しいですし、悔しいです。
だからといって私が悲劇の主人公を気取って、彼の遺志や想いを引き継いで彼の分まで頑張るから、皆様もより一層の応援お願いします……というのも何だかおかしな話です。
私は私で、電磁くんの有無など関係なく頑張ってますから。これまでもこれからも、そこは一切変わりません。単に、有象は電磁幽体と知り合いだった、という背景が一つこれを読んだ皆様の中に増えるだけです。
何よりも、彼をダシにしたいわけじゃない。というか彼が条件を満たさない限り、我々が実は旧知であることを伏せると決めた理由の一つは、お互いの背後にある看板を利用するのはなんか違うな……と、言わずとも両者が思っていたからです。
私は作家として七年先輩になりますし、彼は大賞作家という肩書きがある。
それらをプライベートの関係を引っ張ってきた上で、自分達に都合良くお互い利用することに、私も彼も抵抗がありました。
まあ、他にも伏せる理由は色々あるのですが、それこそプライベートな話なのでやはりここでも省略します。
ともかく、彼が居なくなってもその抵抗は今も私の中にあります。
ただ私は、彼のことを皆様に知って欲しいだけです。彼の作品も、その強烈な人柄も、残った誰かが語らねば絶対に知られない、彼の個性そのものを。
故にこの記事は、その一助となるべく作りました。
私が考える作家にとって本当の死とは、肉体的な消滅ではなく、生み出したものが誰からも記憶されず、忘れ去られていくことだと思っています。
それを私達作家は本能的に察しているから、誰も彼もが必死に新刊を出して、「忘れないでくれ」と言外に叫び続けているのですね。
その叫び声はよくよく聞くと、作者名だったり作品名だったりキャラクター名だったり、作家一人一人で中身が異なる叫びです。
その中で彼は、ただの一度も自分で叫ぶことなく去ってしまった。
肉体の死というどうしようもない必定が、他の人よりも遥かに早く訪れてしまったので。
電撃文庫さんは極めて有情であり、遺稿となった「妖精の物理学」を、どうにか一冊の本にして世に出してくれると思います。
本当に嫌な話ですが、その時はある種これまでの電撃大賞史上、最大の話題性を持って迎えられることが予想されます。
その時、その瞬間、電磁くんは確かに生きていることになる。
ただ、その後はどうでしょうか。
もう彼は叫ぶことが出来ない。少しずつ、或いは急激に、彼の名前も彼の作品も、皆様の記憶から消えていきます。次々と他の作家が、それこそ私だって、死なないためにまた叫んでいくわけですから。
もう二度と新刊が出ない、著作が一冊で終わった作家のことなど、お願いしたところで身内以外は覚えていてはくれないでしょう。
話が長くなりましたが、では翻って私の役割とは、叫べなくなった彼の代わりに己の作品をガンガン宣伝しつつ、その余力で彼の作品や彼そのものもついでに叫んでやるか、みたいな感じです。
私は一応彼の身内みたいなものなので、彼のことは多分一生覚えてますし。
じゃあ私が叫べる立場にある限りは、ついでに皆様の脳裏に電磁幽体のことをちょこちょこと挟んでいきますよ、と。
私の作家生命が続く限り、電磁くんの影がチラついたらもう充分です。逆に私が作家を辞めたら、電磁くんも完全に消え去る。
一蓮托生の関係性を、彼の死後に勝手に構築することにします。
そんな感じです。まずは自分ファーストで、あいつは二の次。
ただ私も叫べなくなったら終わりなので、そうならないようにこれまで以上に努力していきます。その理由が一つ増えただけですね。
なのでこの記事は実のところ、弔文みたいな物悲しい堅苦しいものではなく、もっとラフに読者の方に楽しんでもらいたい、いつもの私のnoteの記事と変わりありません。
次の項目から戻していこうと思います。よろしくお願いします。
彼の人間性
総合して
クズです(直球)
何なら接頭語にゴミをつけてもいいのですが、まあ今回はしゃーなしで彼の顔を立てるという意味で、そこまでの罵倒はしません。
そしてより正確性のある表現をするならば、「クズだけど愛嬌ある善変人」と呼ぶべきでしょうか。少なくとも真っ当ではない男でした。
もうとにかく他人から叱られることを何度も繰り返すやつです。
寝坊遅刻とかシンプルに遅刻とか約束事を忘れるとか他にも多数……。
私は人生においてキレることはあっても、心の底から激怒することは数えるほどもないのですが、あえて数えるなら半分くらいは彼のせいです。
とかく不真面目だったのですね。私も真面目ってわけではないのですが、決まり事や約束は守る信義則にうるさい人間で、逆に彼は自己都合でそれらをぶっちぎるタイプの猛者でした。
過去の記事で触れていますが、そもそも私が電撃大賞に送るのを二年待たされている時点で、彼の猛者っぷりが分かるのではないかと思います。
(待ちたくて待ってたわけじゃないですよ 当然のことながら)
彼のマイナス部分を語ると無限に文字数が膨らむので意図して抑えますが、じゃあ何でそんなやつと私は長年つるんできたのかというと、これもまた不思議な話でして、彼は他の人間には持ち得ない謎の魅力がありました。
ただそれはカリスマ性とか天才性みたいな、煌めくプラス方向の粒子的なものではなく、もっとドス黒くニチャニチャとしたヘドロっぽい負の魅力です。人類が生み出した合成珍獣とのふれあいコーナー的なの……。
その上で彼はマジで正直者なので、嘘が下手というか全くつけません。
社会的に鑑みた際の悪事にも義憤を覚えますし、情に厚いところもある。
いわゆる「悪いやつではない」という評価が当てはまり、更に言うなら「多分いいやつ」と呼ばれることが多いです。
少なくとも彼と接した人間は、彼のことを変人と呼んだ上で、しかし悪いやつじゃないと半端に評するわけですね。ヌメヌメしたマーブル色の人間性は、そんな曖昧な評価しか下せなくなるのです。
彼と類似した人間を私はこれまで人生で一人も見たことがないので、おそらくは彼は絶対的に個性的な人間なのでしょう。
そしてそういうものに魅力を感じる人間は少なくないことも分かるはず。
つまり総じて、正負に振り切れた魅力を持った変人です。
でもそれだと長いので、私はシンプルに「クズ」と呼んでいます。
そんな罵声が飛び交うコミュニティでした。
彼自身がそういう思考の持ち主だったのですが、仮に自分がクズだと知られた場合、それで寄って来ない人間はそもそも彼もノーサンキューで、それを踏まえた上で近寄ってくる人間と仲良くしたがるタイプでした。
すげえ傲慢でわがままな思考ですね。そういうとこやぞ(半ギレ)
おめーは選別される側なんだから選別してる感を出すな(全ギレ)
創作力至上主義
彼はボケかツッコミかで言うとボケ寄りのタイプで、私はどちらかといえばツッコミ寄りのタイプなので、漫才的な相性は良かったと思います。
幾つかの彼の言動やエピソードは、そのまま自著に転用したこともあります。アーデルモーデルの一部の設定とか……。
様々な人との関わり合いこそが、創作における最大の糧であると私は考えており、彼の面倒をよく見ていたのもそのせいだったのでしょう。
一方で彼が私に懐いていた――こんなことを自分で言うとアレですが、彼は割とガチめに私のことが大好きでした――のも、彼は創作とそれに関わるあれこれを己の優先順位の頭に置いていたので、同じく創作に対して真面目かつ本気だった私のことを敬ってくれていたからだと思います。
意外とそういう人間って身近に居ないものですから。
「有象先輩よりすごい人を見たことがない」と、結果的に最後となった彼との会話で、彼は泣きながら私に語っていました。
「お前の交友関係がクソ狭いだけ」「プロの世界は俺以上がごまんといる」「俺もお前よりやべーやつを見たことがない」みたいな感じで、まあいつも通りのノリで私は返したのですが。
あと彼は創作に関してはプライドの塊なので、んなこと言いながらお前はお前がナンバーワンって思っとるやろがい、と考えています。
(創作者ってだいたいみんなそうですから)
さて、彼は二足で歩くタイプの動物なので、彼に言うことを聞かせたければ彼よりも強いことを本能に叩き込んでやらなければなりません。
創作第一で生きる彼にとって、強さとは腕力ではなく創作力です。
釈迦もキリストもマフィアのドンも彼に説法をしたところでガチ無意味ですが、プロ作家の言うことならある程度聞くので。
なので私は彼に言うことを聞かせるため(だけではないのですが)色々と創作そのもので彼をぶん殴ってました。単に大学の先輩ってだけでは奴はマジで何一つ言うことを聞かないので。
彼が私を尊敬したのは、純粋に私が創作で優れていたからではなく、彼に言うことを聞かせるために、徹底的に私が創作力を上げていったからですね。
本末転倒だったわけです。彼が素直だとこうはなっていなかった。
かつて異能バトルものを一切書いてなかった私を、それが得意な彼が若干侮ってきたので、すぐに異能バトルものの長編を書いて叩き付けてやったりしました。(電撃四次で落ちたやつがそれ)
その時彼は「ファ~www」と、汽笛めいて鳴いていました。(彼はよくそんな鳴き声を出す生物)
犬を躾けるには飼い主が握力100kgでぶっ叩く必要があったので、とりあえず飼い主が握力を鍛え続けたら、そのままついでにプロになった感じです。
意味が分からないですね。犬も飼い主も……。
っていうか一番意味が分からないのは、それでもこの犬は最後の最後まであんまり私の言うことを聞かなかったことでしょうけど。
握力10トンくらい必要だったのですかね? すぐには無理やわ。
ホンマもうお前は……。(幾度となく彼との会話でぼやいたやつ)
良くも悪くも人生における己の主観で、ここまで創作を中心に持ってきた上で生きている人間など、プロの世界でもそうは居ないと思います。
誰だって生活があって、そこに関わるあれこれに意識を割かれるので。
そこに創作が絶対混じることは、そんなにない……少なくとも一応プロ作家である私はないですね。創作抜きに楽しんだ方が人生面白いですし。
なのに常に手帳を持ち歩き、面白い設定やら何やらを思いついたらメモをするという行為を、学生の頃から彼はやっていました。
財布や身分証を忘れてもその手帳だけは持ってくるタイプの化け物です。
逆にしろ(当時の本音)
本能で彼は元々プロ作家級だったわけですね。まあ後は意識と努力と実践と反省と改善が足りてなさすぎたから、デビューが遅れたのでしょう。
悪癖の宝庫
悪口しか出てこないのか??
そう思われるかもしれませんが、書いている私も現在進行系で「コイツの悪いとこしか出てこないな……」と驚いています。
空き缶をきちんとゴミ箱に捨てるやつよりも、その辺の道端にポイ捨てするやつの方がどうしても印象に残るではないですか。
それでいくと彼はポイ捨てされた空き缶を拾ってペロペロ舐めるようなやつなので、殊更そういう方面が印象に残るのです。
というわけでそんな印象を皆様に残していきたいと存じます。
まず何度も触れますが、本当にサボり癖のひどいやつでした。
創作を人生の真ん中に置いた生き方をしているのに、その創作をせず(妄想だけする)、創作をやらなかった自分に焦って自己嫌悪するという、一人でSMプレイを完遂するような真似をよくしていました。
その度に私は「書け」と人生百回分くらい彼に言ったのですが、私の握力がまだトン超えしていないからか、あまり響いていなかったです。
じゃあその間何してるかっていうと……スマホゲーとかSNSとかですね。
近年だとVTuberばっか観てました。
その割に私に「VTuber観てる暇あったら原稿やれ」と言われると、「真剣に観ていない、流し見してるだけ」と謎の反論をしてきます。
彼は己のことを論理的かつ客観的な人間と勘違いしていますが、実際はバリバリ本能的で主観的な直情タイプです。
生きていて他者を論破する経験は普通あまりないですが、私は彼との会話でその経験を逆転系弁護士の100倍くらいしています。
サボり癖、逃げ癖、他責思考のクズ三種の神器を彼は立派に携えており、結果として低い方低い方によく流れます。
「有象先輩に書けって言われまくることがプレッシャーで書けない」みたいなことを言われた時は、仕方なく「書け」を「◯ね」に置き換えました。
信じられないことに、度々彼は己の不出来を私のせいにします。
ちなみに「じゃあ書かなくていい」と言うと、本当に書かなくなるので無意味です。そうまでして彼に原稿を書かせる意味が私にはないんですけど、まあ私も良くも悪くも変人というか、面倒見が良すぎると友人によく言われるようなタイプなので……。
心の奥底で、私は常に彼へ期待をしていたのだと、カッコよく言い訳しておきます。
承認欲求もバリバリ強いやつでした。
というよりも、「人からどう見られているのか」をやたらと気にするタイプで、自分でもそれが強いと言うくらいには自覚がありました。
ただそこも彼はズレており、なんていうか他人の目を気にするなら真っ先に改善する箇所を放置して、もうちょっと枝葉の部分に囚われるんですね。
いわゆる見た目とかファッションとか清潔感とかではなく、その時交わした会話のワードセンスだったりとか敬語の使い方だったりとか。
私はそれを踏まえて彼を「全裸になった時真っ先に乳首を隠すタイプの男」と評しました。彼は「流石にち◯ちん隠しますよ」と言っていました。
比喩やバカタレ。
なのでまあ、SNSもかなり依存するというか、彼をフォローしている方は周知だと思いますが、ホント日がな一日Twitter(現X)ばっかりやっていました。そんなにやることあるか? と私は思うのですが。
どう考えても彼が呟いた文字量の方が、一日の執筆量より多いので、そこをよく私に叱られていましたね。「逆やろ」と。
ならばと彼は、今度は一切呟かずリツイートばっかするんですけど。
前世がゴミクズ一休さんだったのかもしれません。
今だからこそ明かしますが、今際の近く――こんな表現本当に使いたくない――つまり2024年11月~12月上旬に彼のTwitter上のつぶやきが減少していたのは、私が数年ぶりに彼へ「Twitterばっかやるな」と叱ったからです。
正確には「やってもいい時とよくない時」を教えたというか。
プロになる以上、読者の方へ物語をお金を頂いた上で届けることになりますが、その過程をSNSは詳らかにしてしまいました。
創作者は誰も彼もが、机にしがみついて歯を食いしばって創作をしている……わけではないのですね。
「担当編集が担当作家のSNSを確認した時、原稿やらず〆切破ってんのにSNSで遊び倒す姿を見たら、その編集者はどう思う?」と彼に訊いたところ、今の自分の状況に重ね合わせて、ようやくSNSの運用について考えを改めたようです。担当編集を読者に置き換えても同様です。
別に彼が何をつぶやこうが、何をRPしようが構いませんが、それを見ている人間のことを考えた上でやれよ、と。
端的に言うなら原稿送ってからSNSやれって話ですね。
彼はそのことに全く意識が向いておらず、「過去の発言を掘り返されて炎上する可能性があるから、過去のツイートは全部手動で消した(のでSNSの運用は問題ない)」と豪語していたので、ズレもここまで来ると天賦の才だな……と思いました。
こういうところに乳首を隠す性分が出てるって話ですね。
プロ作家の方へ
彼の人間性とはちょっと異なる項目となります。
本当に、昔から彼は自分を追い込んで原稿をやるタイプでした。
他の悪癖なんて可愛いものです。
ずっと「そういうことはやめろ」と彼に言っていたのですが。
最後に話した時も、そのことは忠告したのですが。
(具体的に彼が何をしていたのかは、書きたくないので書きません)
もっとキツく、怒鳴ってでもいいから改善させるべきでした。
不摂生や不健康が自分に何をもたらすのかを、創作の技術とか社会常識とかよりも先に、彼へ教え込むべきでした。
ただ、私も過去に似たような感じで創作をしてしまっていたので、その背中を見せてしまったのが良くなかったのかもしれません。
結果、私は死にかけたことがあるのですが、そのエピソードを彼は忘れてしまっていたのでしょう。
武勇伝とか自慢話みたいにしてしまったから、彼へ残るものがなかった。
彼にとって私は、最悪の先輩だったと言えるのは、ただこの一点です。
断言しますが、己を追い込んで創作をすることは、何ら格好良くもないし、作品のクオリティにも直結しません。
単に自分がスケジューリングの出来ないやつだと白状しているだけです。
必死に頑張っていることには繋がりません。
シンプルにダサいですし、それがプロなら尚更失格です。
それでお金を頂こうとする姿勢は、浅ましいことだと思いませんか。
全てのプロ・アマ含む創作者の方が、この記事を今読んでいるのなら、追い込んで創作をするやり方を改めて下さい。
SNSでその姿を発信することすら、出来ればやめて欲しいです。
電磁くんと交流のあったらしい作家の方々の中にも、そういうやり方をしている方がいたようですので。
無論私もですが、そういう先達の間違った姿勢が、結果として後進に対し最悪の事態に繋がるきっかけを作った可能性はゼロではありません。
プロ作家は普通に寝て起きて食べて、普通に〆切を守って下さい。
それがプロです。
この姿勢を見せることがプロ意識です。
追い込まれないと書けないのなら筆を折りましょう。
才能ないので。
きつい言葉ですみません。皆さんを責めているわけではないです。
必死にならないとどうにもならない修羅場は確かにある業界なので。
これは自戒です。
私も無理しないと書けなくなったのなら、素直に引退します。
彼へ合わす顔がありませんから。
彼の作家性 ※2025年5月追記
ここの項目をよく読んでから『妖精の物理学』を読むと、電磁幽体くんへの理解度が上がるぞ!!!
良いところ
彼が亡くなって、大体半年くらいが経ちました。この項目を書いている25年の5月時点ですが。
その間私は彼の作家として良いところを常々探していました(大嘘)
多分電撃文庫編集部及び電撃大賞審査員とは全く評価点が違うと思いますが、私は彼の武器は『コメディセンス』であると声を大にして言っています。
編集長にも『妖精の物理学終わったらあいつにギャグコメディ書かせろ』とメールで言いました(実話)
これは作品ではなく彼個人の、いわゆるパーソナリティの話になりますが、彼は物凄い変人であり、まあ十人いたら九人くらいからはNG出されるようなヤツなのですが、しかしながら『笑いを分かっている』男でもありました。
私は率直に言って面白い人間が好きなので、彼を気に入っていた(存命ならこんなことは言ってやらない)理由の最たるものだったと言えます。
じゃあ何が『分かって』いるのかというと、彼はふざけるタイミングやツッコミを入れるタイミングを間違えることがほぼないのですね。人間として間違えた発言をよくするのは別として
天然でアホな発言をすることもあるのですが、あえてこちらを笑わせるボケやツッコミを自分で捻り出すことがありました。
だから何?って話ですが、これって要は『相手を笑わせようとする意思』で、人によっては全然持っていない能力なんですよ。
或いは意思だけあっても能力が追い付いてない。
私は笑いにうるさいので、そこら辺の解説はまた別の記事でいつかやる気がしますが、彼はその意思も能力もあるので、それが自身の作品に活かされていると思います。
こんなこと言うと作家としてどうかと思いますが、ぶっちゃけ笑いのセンスはある程度先天的なもので、後天的に磨くのが割と難しいです。
だから面白い人間は面白いギャグコメディを書きやすいんですよ。元が面白いからですね。
あれ?じゃあギャグコメ作品ばっか書いてる有象は、自分のことを面白い人間だと思い込んでるってコト!?!?
そうだけど?(開き直り)
まあ自分は努力で獲得した部分が大きいのですが、それでも電磁くんと漫才コンビ組んだらM-1の一回戦くらいは突破出来る気がします。ごめん流石に嘘
作品におけるコメディパートの重要性を私はよく彼に説いていたので、そういうのもあって彼自身(元が面白いのに)笑いに対する意識も高かったように思います。
彼のTwitter(現X)を辿っていくと、何やら笑いに対して創作論を垂れており、そしてらくごDE枝雀をお勧めしているのですが、これ普通に私が過去記事で紹介しているので、その受け売りですからね。電磁に騙されてはいけない 彼の半分は有象の受け売りだから
長くなりましたが、まあそういうわけで、彼の作品の見るべきポイントって大体の審査員やら何やらはきっと『設定、世界観』『尖った異能力バトル』とかを挙げるのですが、私は『合間合間のコメディパート』だと主張しておきます。
いや、普通に面白いんですよ。すごく好き。むしろ『妖精の物理学』の見所はここだからよぉ。
言葉を選ばないなら、デビュー前の時点でその辺のラノベ作家のしょっぺえコメディ(大暴言)よりもきちんと笑えるものを書けていたので。
彼の中に『読み手を笑わせたい』という意識が明確に存在しているからこそでしょうね。
それはキャラの魅力に直結しますし、ああいう厨二バトルの作品って割と主人公やヒロインが鼻につくセリフを多用しがちですが、(彼も多用するものの)なんか受け入れやすいのは、合間のコメディパートが面白くてキャラの柔らかいところが素直に見えるからだと思います。
あのボケとツッコミのリズムや言語センス、間の取り方は中々真似出来るものではないでしょう。
よければ注目して読んであげてください。
しかし惜しむらくは、彼自身の興味はコメディにあまり向いておらず、自分の好きなものを優先的に伸ばすタイプだったことですかね…。
あまり私は生前の彼を褒めた覚えはないのですが、コメディパートの面白さや光るものについては私も素直に褒めていました。
けどそんな嬉しそうじゃないんですよ。自分の褒めて欲しい部分ではないから。
寿司職人に対して揚げ物バリ上手いやんけ!!って言うようなものだったのでしょうね、彼からしたら。むかつく
というわけで良いところは以上です。
もっとあるやろ!と思うかもしれませんが、誰もが分かる部分なんて褒めてもしゃーないのでね(逆張り精神)
悪いところ
山ほどあります(案の定)
とりあえず一番よく注意したのは、とにかく『読み手のことを全然考えない』ことですかね。
笑わせる場面では結構読み手のことを考えてる割に、自分がやりたい場面では全く考えなくなるという…。
趣味で誰にも見せない小説なら別にどうだって構わないのですが、人に見せる、賞レースに送る、となると必ず書いたものは『誰かに読まれる』ことを想定しておかなければなりません。
なので主観的に書くしかない小説に、どうにかして客観視を入れないと、いわゆる『独りよがり』なものになります。
彼は客観視がクソ苦手でした!!!!
マジで彼ほど客観視が苦手な人間を私は知りません。
めちゃくちゃ主観的かつ感情的な化け物なので。
主人公に異能力10個持たせた趣味小説を書いたことのある男なので。(多すぎるわボケ、と総ツッコミされた)
彼が論理的思考の元に、冷静に客観視をしながら小説を書いている…みたいなことをTwitterで言っていた気がしますが、それ全部ワシのことやからな!?!?
えー、書き手は真っ先に自分の文章を読む性質上、その自分の文章が理解出来ないなんてことは基本的にあり得ないので、それが他者の目にどう映るかをきちんと想定しないと、その先に起こり得る『効果』が分からなくなります。
彼はとにかく書きたいこと優先主義で、自分の書きたいものを詰め込めるだけ詰め込むので、読み手の負担とかは度外視しています。
(例:造語連打、ルビ連打、傍点連打、難読漢字連打、地の文連打など)
そういうのは改稿で直すこともあるのですが、残念ながら初稿で出版される以上、製本版『妖精の物理学』は当時の彼の味がそのまま残っています。
まあぶっちゃけると本文は読みにくいところがかなりあるので、そこはもうご容赦下さい。
読みやすさよりも大事なものが彼は多くあるのでしょう。
それ自体は小説を書いてる者にはあるあるというか、私もよく分かるので…。
とはいえリーダビリティをガン無視して現代ラノベ業界を生きていけるほど、今この業界は甘くはないので、彼がもし存命だった場合はすぐにそこの壁にぶち当たったかもしれません。
兎にも角にも荒削りなんですね、彼は。
この記事を通して私が改めて皆様に伝えたいことは、別に作家が亡くなったって作品は神格化しないし、作家自体も高尚になりはしない、ということです。
電撃大賞を取っただけで、まだまだ電磁くんは私から見て成長と改善の余地だらけでした。
なので今後彼に付くかもしれない、不世出にして非業の死を遂げた天才作家、みたいなイメージは私が率先して破壊していきます。
全くもってそんなことはないので。
何故なら電磁には『遅筆、サボり癖、完璧主義』があるワァ!!!!
他の項目でも触れているので、もうこれ以上言う必要ある??って感じですが、そもそも彼は小説を書くことが言うほど好きではなく(設定を考えるのが大好き)常に執筆へのモチベが低かったです。
設定を考えてる時がモチベのピークなので、残る執筆とかはもう苦痛になるタイプなんですよ。
私はワナビ時代からアホみたいに小説を書いてたので、彼に『何故そんなたくさん書けるのか』と訊かれたことがあります。
答えとしては『書くのが楽しいから』で、そして『なんか書けるから』でした。
普通に彼にドン引きされた覚えがあります。
(学生時代私は小説を書いた経験がなかったので)
いや引くなよ。書かないと何も始まらないだろうに!
我々は常に何か書かないと上達しないし、最後まで完成させないと上達しないし、その割にサボるとあっという間に腕が錆びて業界に置いて行かれます。
まごまごしてる余裕なんて、エンタメ消費の激しい現代においてはありません。
とにかく面白い物語を書く能力、エンドマークを打つまで一冊分書き続ける体力、どれだけ不調でも執筆に向かい合う気力の、どれか一つではなくその全部がないと生き残れない世界だからこそ、やっぱり彼が存命ならそこにぶち当たっていたと思います。
ていうか確実にぶち当たるから、現状のままだと5冊も出せねーわって判断していた次第ですね。
当たり前ですが、プロデビューはスタートラインに立って走り出すことでしかなく、それまでの間にどれだけ己を鍛えていたかによってその後の作家人生は変わります。
そしてデビュー後に悠長に鍛えている暇はないです。
彼はしっかり鍛える前に大賞を取ったので、その金看板を背負いながら走り続けるのはかなりキツかったでしょう。
とにかく書かない上にサボるし遅筆なのを、必死に誰かにケツをしばかれたらようやく書くレベルなので。
担当編集は苦労すること必至だったと思います。しかも説教したらたまに逆ギレしてくる
その分、立場が変われば必死に努力を重ねる可能性もありますから、彼の底力を見せて欲しかったですね。
未来がどう転ぶかなんて、当人ですら分からないものです。
彼は少なくとも、プロを『やる気』ではありましたから。
きっと電撃文庫編集部も、彼の中に眠る大きな可能性に夢を見たからこそ、大賞を与えたのだと思います。
凄いところ
設定を作り込む能力や、いつまで経っても永遠の厨二病でいられることは、素直に凄かったと思います。
詠唱文とかよくSNSで晒せるよな…。
以上!(端的)
電磁幽体エピソード集 ※2025年5月追記
説教で号泣編
ちらりと触れたものの詳細となりますが、私が最後に電磁くんと直接会話をしたのは、2024年10月末日です。
11月某日に行われたKADOKAWAの謝恩会に彼も私も行っていたので、そこで会話することは出来たのですが、「約束」があるので我々は一切言葉を交わしませんでした。
(でもお互い姿はちゃんと確認していたりする)
というわけで最後──無論そうなるとは思っていなかった──彼と何を会話したかというと、まあほとんど説教ですね。
数年ぶりに直接話したのに説教がメインイベントになる辺り、最後の最後まで私と彼の関係性はあまり変わりませんでした。
彼はやはり駄目な部分が多くて、私はやたら口うるさい。
というわけで色々言いました。ただ普段の説教とは違って、彼はプロ作家になる以上、プロの世界を数年経験している私から見て、彼に必要なこととかをお節介ながら教えた感じです。
そしたら彼は説教中に大声で泣き出し、何言ってるのか全く分からない人語に近しい何かを、こちらに向けてビービー叫んでいました。
今まで説教中に彼が逆ギレしてくることは数度ありましたが、号泣だけは一度もなかったので驚きました。
いきなり脈絡なく成人男性に泣かれると、ドン引きというか「ええ…」となり、私は言葉を失いました。
皆様も上司や先輩に説教されたのなら、いきなり泣けば相手を黙らせることが可能だと思いますよ。
総合すると「先輩はこんな駄目な僕に優しすぎる」みたいな感じのことを言っていました。あと数年ぶりの説教だったので身に沁みたようです。
「今更気付いたのか」と私はすげなく返しましたが、「今更気付いた」と。
皆さん私は優しい人間ですので、彼のように数年かけてご承知おき下さい。
別に己を優しい人間とは思わないですが、彼の交友関係的に「真っ先に自分の駄目な部分を指摘して改善させようとする」のを、悪意ではなく性分的に言ってくる人間が、やはり後にも先にも私以外居なかったのでしょう。
それを優しさと捉えてくれたのが、彼の善性の現れです。
いやマジで私は全然優しい人間ではないです。
この記事を読んでも明らかなように、どちらかというと悪意に満ちていますし、人並み以上に人並み以下なので。
電磁くんと比べたらマシなだけで、私も立派なダメ人間です。
(どんぐりの背比べでしかない)
あと彼は自罰的なところがあり、それを比喩ではなくリアルで表現するので、泣きながら己をベチベチ叩いていました。
オンライン通話だったのですが、こちらにも打撃音が聞こえるほどに。
一番近しい表現をするならハリポタの屋敷しもべ妖精のドビーです。
よって普通に「ドビーかお前は」と言いました。鼻血出たらしいです。
話盛ってない?と思われるかもしれませんが、こういうことがガチで起こるからこそ、電磁くんは電磁くんなのですね。
(書いていてすごく嘘臭いと自分でも思ってしまう)
他はまあ、以降は書いていて辛くなることになるのですが、彼のプロ作家としての夢……というか目標についても聞きました。
「自分の作品がスマホゲーになってほしい」とのことでした。
彼がスマホゲー大好きなのは承知の上だったので、やっぱり自分の作品がそうなってくれたら嬉しいのでしょう。
もちろんそれは簡単な話ではないですし、むしろ激ムズな夢だと思いますが、語るだけなら自由です。
むしろ私はそういう創作者としての目標とか夢がないので、夢を語る彼のことを眩しく羨ましく思いました。
割と厳しい業界であることはもうすっかり知っているので、夢を見ることなんて出来なくなってしまったというか。ちっぽけですね私は。
でもアニメ化とかコミカライズ化ではなく、真っ先にスマホゲー化を目標に挙げる辺り、やっぱ電磁くんはなんかスケールが違うやつですね……。
彼がプロ作家としてどうなっていくのか、最早誰にも分かりません。
「妖精の物理学」は、もう良くも悪くも正当な評価を受けられないので。
まあ仮に「妖精の物理学」がスマホゲー化した時には、メインシナリオを担当するのは有象利路にしてくれや、とだけ書き記しておきます。
ただ、直近の彼のモチベは、「まずはプロで五冊出すこと」だそうです。
それは我々の「約束」で、これを守らなければ始まらないと。
五冊出さない限り、私は彼とリアル含めてこうしてコンタクトを取る気はないと告げています。何があっても無視すると言っています。
絶対に彼は困ったら私に甘えるので。そして私も何のかんのそれに応えてしまうので。そんなのお互い利なんてないですから。
ただ、こうやって最悪の離れ業で早々に私の歓心を買う辺り、もう本当に最後の最後の最後まで、私の言う事を聞かないやつでしたけど。
そして何故「五冊」なのかというと、結構残酷な話になりますが、私が同じ創作者としてフラットに彼を見た時、現状では五冊も本を出せないと踏んでいたからです。
作家性のところで詳しくは触れますが、やっぱり彼の弱点を一番理解しているのも私だったので。そしてそれが、業界で生き抜くにはかなり致命的であることも分かっていたので。
(あと彼は死ぬほど調子に乗りやすい人間なので、誰かが鼻っ柱を叩き折る必要があった)
ただ逆にそこさえ改善出来れば、普通にラノベ作家として生きていくことは可能であるとも思いました。「五冊」はその見極めのラインです。
受賞作が打ち切られるのなら、大賞ならば最低三冊は出すことが出来る。
ただ次に作品を出すのなら、担当編集に草案を出して、新シリーズの企画をゼロから作り上げていかなければならない。
それは単に書くだけではない、プロ作家特有の辛くて面倒な部分です。
他者とのコミュニケーションが何よりも必要になってくる。文才だけで相手を説き伏せることは、そんなものどんな作家も今は不可能。
しかも表沙汰にはならないので、彼の承認欲求はミリも満たせない。
腐らず、我慢に我慢を重ねられるかどうか。厳しいでしょう。
或いは受賞作が売れたのなら、同じ作品で五冊も話を続けなければならない。そんな経験、彼はワナビ時代から一切ありません。
趣味でシリーズものとかを作ったことがないのは分かっていたので。
それはそれで難しいことです。プレッシャーもすごいはず。
何より定期的に本を出すということ自体、遅筆な彼にとっては地獄であることなど火を見るより明らか。やっぱり厳しいでしょう。
ただ、これらが出来なければそもそもプロ作家としてはやっていけません。
彼の現状の能力では、そういう面でも厳しいだろうと。
改善は彼自身にしか出来ないことです。だから努力の必要がある。
プロ作家になったことはゴールではなくスタートで、スタートライン時点の能力でずっと走り続けられるかというと、今の彼だと絶対に無理ですから。
彼はちゃんと口に出して言わないと分からないので、この「五冊」の理由含めて伝えると、きちんと納得してくれました。
むしろ正々堂々と表舞台で私と絡むために、これをモチベにする、と。
前述の通り彼は嘘がつけない男なので、本心でそう言っていました。
じゃあもう私が言えるのは一つだけです。「頑張れよ」と。
あとは冗談めかして通話の終わり際に「今生の別れやな」と言うと、「今生の別れ(仮)なんで!!頑張るんで!!」とツッコミを入れていました。
まずは今生の別れであることを否定しろよ。(仮)でいいのかよ。
んでそういうところはきちんと実現しなくていいのですが。
天邪鬼なやつですね。
唯一の湿っぽいエピソードを最初に掲載しました。
最後にこうやって彼と話すことが出来て良かったです。結果的には。
次のエピソードは何にするか……また後日書きますが、割とたくさんあるので良いものを選んでおきます。
飴噛む編
唐突ですが、裏山或先生という漫画家がいます。
誰やねん…って話ですが、彼女は私と電磁くんの共通の友人です。
私の後輩で、電磁くんと同期だったかな…確か(あやふや)
たまーに彼女を交えて話すこともあったのですが、やっぱり電磁くんは彼女にも説教されるわけですね。
(彼は全人類から説教される異能力を持つ)
何で説教されていたのかは、あまり詳しくは覚えていないのですが、基本的にはサボって書かないことに対する注意喚起ですね。
裏山先生はある日唐突に「あ〜漫画家になりてえ〜」と言って、その後本当に漫画家になる努力の人であり、暇があれば遊戯王カードをしばいていた電磁くんとは対極の位置にあります。カードしばくってなんやねんしばくぞ
普段何も創作しないやつから創作関連の説教をされても、それこそそいつの自己満足の説教でしかなく、相手(電磁くん)へ響くものはありません。
我々の中において、真に彼へ説教可能なのはそう言う意味でも私or裏山先生しかいないでしょう。
だって真面目に創作してるもの…。
というわけで神妙なツラ(オンライン通話だけど)で、こんこんと電磁くんは裏山先生から説教を受けていたわけです。
別に彼をいじめたいとか嫌がらせではなく、真剣に創作と向き合わせるための愛ある説教ですね。
嫌いなやつになんて説教しませんから。
裏山先生も電磁くんのことを多少は気に入って──
ガリッ…
裏山「え待って、今誰か飴噛まへんかった?有象先輩?」
ぼく「ちゃうで」
裏山「じゃあ誰?え?今飴舐めてた人おる?」
(その場に居る他の連中にも確認を取る裏山)
ぼく(頼む…!電磁以外が犯人であってくれ…!!)
電磁「…………」
電磁「僕です……」
有象(信じられへんなこいつ…)
裏山「あっ…(ドン引き) 飴噛むんや?ごめんな、長々とおもんない説教して」
電磁「違うんです!!僕舐めてる飴を噛む癖があるんです!!」
裏山「そうなんや、なら仕方ないわ」
(※裏山先生はなんか他人に甘い)
ぼく「そもそもオンライン通話で顔見えへんからって説教中に飴食うなやお前」
電磁「それは……………すみません」
裏山「ごめんもう説教やめとくわ、ほんまごめん」
〜糸冬〜
以降彼に説教する時は「飴食ってねえだろうな?」と確認することがデフォになりました。
多分彼は説教されて相当イライラしていたのでしょうね。
でも面と向かって「やめろ」とは言えない(そもそも彼の不始末である)から、感情が全部飴に乗ったんですよ。
私がこれをやられたらそのまま彼の顔面を殴りに神戸まで阪神線に乗って行くのですが、よく裏山先生は苦笑いで許せたな…。
そんな裏山先生の作品のリンクを貼っておくので、気が向いた皆様は読んであげてください(唐突な宣伝)
我々が好むものとは全く違うジャンルの漫画です
ゴキブリみたいな…編
唐突ですが、皆様はファッションにどの程度気を使っていますか?
ラノベの読者層にそんなん訊いたらアカン!!!!
あっ…天の声が怒ってるな?
すみません忘れてください。
まあ私は人並みってところですね。はい。
というわけである日、私と電磁含む数名でカラオケに行ったんですよ。
普通に遊ぶことも当然あったので、カラオケ行って飯行くか、みたいなノリですね。
ただこの記事で触れているように、電磁くんは遅刻癖もあり、時間を守って来ることがあんまりない男でした。
その日も普通に『すみませんさっき起きました』という連絡が集合時間後に入り、ホンマぶち●すぞボケェ…と、時間にうるせえ私は思っていました。
(てか普通にLINEで●すぞって返信した覚えがある)
ただ彼の遅刻は慣れたものでもあるので、アイツ抜きで歌っとくか〜、とさっさと切り替えられるし楽しめるのがカラオケの良いところですね。
というわけでだいぶ遅れてから電磁が部屋に現れました。
上下がモコモコの謎の茶色い服に黒い革靴というとんでもない出で立ちで…!!
ぼく「おまッ…(絶句) お前何やねんその服!?パジャマやないか!!」
電磁「すみません…着ていく服がなくて」
ぼく「服買いに行く服がない、みたいなことホンマにあるわけないやろそんなん…」
電磁「いやほんと、服なかったのと急いでたんで…」
ぼく「ようそんなんで電車乗れたな…」
電磁「まあ別に…」
後輩「ゴキブリみたいな服っすね」
電磁「wwwwww」※爆笑
私は後輩に己の服装をゴキブリ扱いされたら普通に拳で答えるのですが、彼にとっての怒りのラインはそんなところにはなく、普通に笑顔でした。
いやもう、ほんと家着というかパジャマみたいな服で、そして靴は仕事用の革靴なんですよ。
せめてスニーカーならまだ許せた…いや許せないけども、マシだったかもしれません。
私は他人の身体的特徴とファッションには口を出さないと決めている(自分も言われたくないし)のですが、この時ばかりはガチでそのゴキブリファッションが異様であることを彼に必死に伝えました。
全く響いていませんでした。
一方で自分の考えた設定を後輩にこき下ろされたら、彼は烈火の如くブチ切れるので、こんな沸点がえげつねえやつ他にはおらんやろ…と戦慄したエピソードです。
…と、ここで終わったら笑い話なのですが、まさかの後日談がこのエピソードにはございまして。
上記のエピソードを私は、彼が亡くなった後に弔問させて頂いた彼のご実家で、ご両親に話したんですよ。
嘘みたいなホントの話として。
そしたら電磁くんのお母様が「もしかしてあの服ですか!?」と反応を示して下さり、その服の特徴が我々が見たゴキブリファッションのそれと一致していたので、やっぱあいつの家着じゃねーかと発覚。
で、その服は彼の部屋にまだあったので、お母様から見せて頂きました。合ってました。
もしかしたら彼のお気に入り家着だったのかもしれません。外に着てくるな
あのゴキブリファッションをもう一度見て、まさかしんみりする気持ちになるとは思ってもみませんでした。
皆様はちゃんとした服を着て外に行きましょうね。
電磁くんにあの世で笑われないように…
おわりに
最後に述べておくことがあります。
電磁くんの逝去に関して、私は阿南編集長と話す機会がありました。
責任感の強い方なので。お互い何かしらの責任を感じているというか。
その中で、電磁くんは幸福であったかどうかの話になりました。
彼は幸福であったと思います。
それが私と編集長の総意です。起こったことだけ鑑みれば、絶対にそんなことはないでしょうけど、そもそも他人の死なんて第三者から見れば総じて不幸だろうとしか判断出来ません。
ただ、彼は念願だったプロ作家になるという夢を叶えました。
しかも大賞という、もう上が存在しない最大の栄誉をもって。
更に、まだ改稿途中ではあったものの、担当のイラストレーターの方は決まっており、キャラクターラフはチェックしてもらったとのことです。
私もデビュー作のキャラクターラフをもらった時、死ぬほど嬉しかったです。以降もお仕事の度にキャラ絵は頂いていますが、嬉しくはあってもやはり最初の感動に勝ることはもう絶対にありえない。
そのくらい最初に頂いたキャラクターラフというものは、ラノベ作家にとっては嬉しくて、未だに思い出せる出来事です。
彼がそれを味わうことが出来たと聞いて、本当に嬉しかったです。
SNSを見たら分かるように、イラストにはうるさい男だったので。
もちろんラフだから、完成稿ではないでしょうけど。
自分の脳内にある世界に住むキャラクターに、具体性のあるビジョンがつくという経験をしたいから、おそらく多くの方はラノベ作家を目指します。
じゃあ、あの電磁くんが喜ばないわけがないですね。
なので正確性を加味すれば、彼は幸福の最中で去ったと言うべきでしょう。
辛いことや苦しいことは、むしろ出版後に襲いかかってきます。
彼はジェットコースターが上り詰める途中で止まってしまった。
それは幸せなことです。
なので、過剰に彼が可哀想であるとか悲惨である不幸であるとか、そういう評価を下すこと自体は止めはしませんが、少なくとも彼に近しい人間はそんなことを思っていないことだけは、この記事で伝えさせて下さい。
2024年12月28日現在、「妖精の物理学」は刊行に向けて検討をしているそうです。それがどういう形になるかは私には分かりませんが、彼がアホみたいに依存していたSNSをもってして、皆様が「読みたい」という声を上げて下されば、きっと前向きに企画が進んでいくと思います。
叫べなくなった代わりに叫ぶのは、何も私だけの役割ではありませんので。
というわけで長くなりましたが、ここまでお読み頂きまことにありがとうございました。
今後も有象利路とついでに電磁幽体をよろしくお願い申し上げます……。
真・おわりに ※2025年5月10日追記

本日無事に発売!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
彼のためにやれることは、自分なりにですが全てやったつもりです。
(プライベートの方でもう少しやることが残っているのですが)
また、X(旧Twitter)では述べたのですが、あとがきを書く前に彼は死去したので、代わりに解説文という形で私が4p分最後に寄稿しています。
電磁くんとの最初で最後の合作であり、私という拾い上げ作家が受賞作品に関われるのもこれがやはり最初で最後だと思います。
良い思い出になったと、そう言える……ようになればいいですね。
そこは本来は彼が書くべきものだったので、そこを私が埋め合わせたことに、喜びや嬉しさを感じると同時に、やはり虚しさや罪悪感もあります。
なのでたった4pですが、使える言葉は全て尽くして文を寄せました。
本編とあわせて、皆様に読んで頂ければありがたく存じます。
さて、本は世に出れば最後、後はもう読者の皆様に委ねるしかありません。
彼は自著が果たしてどういう評価を受け、どのくらいの反響があったのかを知ることはなくこの世を去っているので、これから代わりに私がそれを受け止めていこうと思います。
自著を手に取って読まれるだけで幸せなのか、感想まで貰えて幸せなのか、酷評されても受け入れられるか、作者が色々と辛いのはここからですから。
それを知らずに終われたというのも、どこか幸せではありますが――苦しんででもいいから、自分の作品が世間にどう思われるかをダイレクトに知るのも、それはそれで得難い経験だったでしょう。
ヘコんで筆を折るのか、調子に乗ってSNSでやたら裏設定を語り出すのか、まあ後者の反応を取ったはずです。
もし彼が生きていれば、より一層私のことを尊敬したでしょうね(傲慢)
なんのかんの十冊以上出しているので……おめーの先輩は案外しぶとくてすげえやつなんだぜ? もうちょい言う事を聞け!!
……とまあ、そんな『もし』をたまに考えて、そうやって彼のことを今後も時折偲んでいこうと思います。
電磁くんは変人で偏屈で異常な後輩でしたが、それも含めて面白くも可愛げのある、個性的な人間でした。
もうあんな人間は私の人生に現れないでしょうし、現れてもらっても困るので、彼と関わった10年以上の歳月をオンリーワンな思い出として取っておきます。
それと、たまに彼が私に向けていた尊敬の眼差しを裏切らないように、これからも私は頑張っていこうと思います。彼のためだけじゃないですけどね。有象の新刊は8~9月発売予定(唐突な宣伝)
これが恐らく本記事最後の更新となりますが、発売日の今日までSNSなどで宣伝の拡散に協力して頂いた全ての方々に、改めてお礼申し上げます。
『妖精の物理学』、中々癖があって良い作品なので、是非手に取って読んで、感想をSNSなどで呟いて下さい。
多分私がエゴサしてRPするので……。
それではここまで読んで頂き、本当にありがとうございました!!
