見出し画像

【聖なる経済学】 脱仲介化とP2P革命

訳者コメント:
テクノロジーによる省力化は、労働時間を減らして生産性を上げることなく、もっと多くの「クソ仕事」を生み出し、なんとか雇用を維持してきた歴史があります。しかしアマゾンやグーグルが既存の流通やメディアを破壊して、大量の失業者が出たとしたら、本当に省力化・省人化を達成できたことになります。しかし大勢の人々が働き収入を得ていた産業が丸ごと消えた割には、巨大テック企業の総収入は大きくないのだといいます。ここで起きたのは「脱仲介化」、つまり中間マージンの排除であり、それ自体が巨大なデフレ圧力なのです。したがって、経済成長を前提とするプラス金利の貨幣制度とは、本質的に両立できないのです。


脱仲介化とP2P革命

経済縮小のもう一つの原因は、インターネットによって可能になった脱仲介化です。「脱仲介化」とは、仲介業者、ブローカー、仲買人などの排除を指します。クレイグズリストの例を考えてみましょう。ある試算によると、クレイグズリストは分類広告クラシファイド〔新聞・雑誌・ウェブの小さい広告・告知を集めた欄〕からの年間100億ドルの収益を破壊した一方、自社の収益はわずか1億ドルにとどまっています[5]。しばらくの間、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が広告やマーケティングの従来の機能の多くに取って代わるかのように見えましたが、実際には、広告やマーケティングがソーシャルメディアを覆いつくす形となりました。しかし、ソーシャルメディアの黎明期には、「面白いものを見つける」とでも呼べるような社会的機能を、商業化が進んでいない領域に取り戻す可能性が実証されていました。フェイスブックのようなソーシャルネットワークの価値は、ユーザーがストーリーや写真、生活の細部などを共有することで生み出されています。プラットフォームを運営する側は、広告を販売することでこの価値を搾り取ります。その収益の一部はプラットフォームの維持に必要な業務に充てられますが、多くは利益として吸い上げられます。これは「コモンズの囲い込み」の一形態です。おそらく、フェイスブックやアマゾンのような「自然独占」企業は、20世紀に通信、電力、水道、ガス供給が公益企業や厳格に規制された民間事業となったのと同じ方法、同じ理由で、公共事業となるべきでしょう。ソーシャルメディアから広告が消えたら、あなたは悲しむでしょうか。私ならそうは思いません。経済の縮小が、必ずしも本当の貧困を伴うわけではありません。

インターネットのおかげで、一部の機能は贈与ギフトの領域に戻ったり、はるかに低いコストで実行できるようになったりしています。これは、ブログ界を通じたニュース配信や、出版全般、さらにはかつて旅行代理店や証券ブローカー、あらゆる種類の仲介業者が担っていた機能においても起こっています。こうした要因のすべてが経済のデフレに寄与します。ここに働いている潮流は、古いものと新しいものの二つがあります。

古い潮流とは効率化です。デジタル技術は、既存の経済機能をより効率的に遂行し、成長を阻害します。新しい潮流は、脱仲介化やオープンソースソフトウェアなどがその一部をなす、ピア・トゥ・ピア(P2P)革命です。従来の階層的で中央集権的な流通、流通、生産構造は、管理に多額の資金と人的労力を必要としました。さらに、その本質から、人々を狭い専門分野内で互いに孤立させ、贈り物ギフトの交換を不可能にしていました。

脱仲介化は信用システムにも影響を及ぼし、投資家と借り手を結びつける金融仲介機関としての銀行の伝統的な役割を覆しつつあります。企業は銀行を介さずにマネーマーケット(短期金融市場)から直接資金を調達するようになり、P2Pレンディング(ソーシャルレンディング)やクラウドファンディングのサイトは個人同士が直接資金を借り入れることを可能にしました。商業の信用清算リング、相互ファクタリング制度、商業物々交換ネットワークなども、後述するように、情報技術が中央集権的な仲介機関の役割を縮小させる要因となっています。こうした動きはすべて、「金融サービス」への支出を減少させることでGDPを押し下げます。

このようにますます安価になる「情報経済」サービスは、他のほぼすべてのセクターの生産要素となっているため、この分野での成長鈍化は分野を超えて伝染します。

インターネット上で最も一般的な収益モデルは広告掲載であり、これが事実上デジタル経済全体の規模を制限し、現実世界の経済が支えられる広告の量を超えることはできません。しかし、インターネットは自らをも食い尽くします。無料の商品レビューや価格比較検索を提供するウェブサイトが登場すると、それらを支えていた広告そのものを時代遅れにしてしまいます。

ここで何が起こっているかというと、人類の歴史を通して機能してきたビジネスモデル(贈与ギフト経済の中で人々が自分自身や互いのために行っていることを見つけ、それを奪っておいて、売り戻す)が逆転しているのです。インターネットによって、人々がお金を払わずに自分自身や互いのために何かをすることが再び可能になってきたのです。エリック・リーズンズはこうコメントしています。

もしかすると、ツイッター、フェイスブック、ユーチューブといった様々なインターネットサービスを収益化する方法がなかなか見つからないのは、そもそも収益化できないからかもしれない。少なくとも、それらが取って代わろうとしている業界やサービスに匹敵する収益を上げることはできない。これはまさに、紙媒体がオンラインモデルへの移行を試みる中で痛感させられていることだ。[6]

黎明期のインターネットは「参加型経済」であり、生産者と消費者の間に明確な区別が存在しないP2Pネットワークでした。ニュース、商品のおすすめ、曲などをオンラインネットワークで共有する際、自分の提供した「情報サービス」に対して誰にも料金を請求しません。それが贈与ギフト経済というものです。ほとんどのウェブサイトのコンテンツも無料です。リーズンズは次のように結論付けています。

私たちは知識経済の未来を信じるように言われているが、実際そこからどうやって利益を上げるのか、誰もまだ分かっていない。実際に利益を上げている企業(クレイグズリストやグーグル)も、イノベーションによって既存の市場を揺るがしたり、事実上消滅させたりしたにもかかわらず、1ドルあたりわずか数セントしか稼げていない。これは、適切な収益化の仕組みがまだ見つかっていないからではない。イノベーションが成長ではなく効率化につながり、それが肥大化した産業にデフレ圧力をかけているからだ。さらに、イノベーションの大部分は、私たちエンドユーザーが自由時間を使って行っているのだが、その理由は、消費するだけでなく、創造し、共有したいと私たちが考えているからだ。[7]

これらの記述を収録した本書の初版以来、インターネットで収益を上げる方法を誰も見つけていないという状況は、もはや当てはまらなくなったように見えます。しかし、リーズンズの主張は依然として妥当です。アマゾンの巨額の収益も、同社が置き換えた実店舗インフラの収益に比べれば微々たるものであり、実店舗で働くレジ係や店員の人数は、アマゾンのロボット化された倉庫で働く従業員の数をはるかに上回っていました。グーグルのクラウドストレージは利益を上げているものの、それが置き換えた数十億個のハードディスクには及びません。広告収入が実体経済によって制限される一方、楽曲や映画といったデジタルコンテンツは、映画フィルムやレコードに比べて配布コストがはるかに安いにもかかわらず、販売可能にするためには人為的に希少性を保たなければならないのです。

過剰生産能力と過小雇用の脅威は、何世紀にもわたって資本主義を悩ませてきましたが、これが示唆しているのは、人間の生活を維持するために、今ほど懸命に働く必要がないことです。実際、最初の産業機械、つまり「千人力」の機械が使われ始めて以来、余暇の時代はいつも目前にありました。しかし、すぐに誰もが千分の一の労働で済むようになるという暗黙の約束は、まったく実現の兆しを見せていません。そして今、私が再びそれを約束しているのです。この展望もまた蜃気楼に終わるのでしょうか。いや、そうとは限りません。技術進歩による効率の向上は、必ずしも余暇の増加を保証するものではありません。鍵となるのは脱成長であって効率ではありません。直感に反するように思えますが、脱成長、つまり経済不況が、多くの人々に真の豊かさをもたらすのです。

成長経済においては、技術進歩によって解放されるはずの労働力が、代わりにますます多くの物品を生産することに費やされます。1870年には一世帯の生活必需品を生産するのに10労働時間かかっていたところを、今日では同じ量の物品を生産するのに1労働時間で済むとすれば、私たちの社会制度は、1870年の10世帯分に相当する量を消費させようとたくらんでいることになります。アメリカの消費者こそ世界経済成長の原動力なのだという話を耳にします。そこには、際限なく加速する消費と富を同一視するイメージが暗黙のうちに含まれています。毎月新しいコンピューターを、毎年新しい車を、5年ごとに大きな家を。新しいものを、もっと多く、もっと大きい方が、良いに決まっているのです。それは狂気の沙汰のように思えますが、現在の制度においては経済的に必然なのです。なぜなら、デフレの力学がすぐそこに潜んでいて、消費が生産性の伸びに追いつかなくなる日が来るのを待ち構えているからです。

私が説明した制度は、より大きく、より良く、より多くを追求した挙げ句の、破滅的崩壊という未来に対する代替案を提示します。マイナス金利は、資本の限界収益がゼロ以下であっても、生産的な投資を継続させ、貨幣の流通を可能にします。また、コモンズに裏付けられた通貨は、労働力を消費目的以外に振り向けることを可能にします。次に、この壮大な織物を構成する三つ目の要素、すなわち社会配当について説明します。社会配当は労働者の購買力を、貨幣経済における完全雇用の必要性から解放します。


前< 貨幣の縮小、富の拡大
目次
次> 余暇のパラドックス

注:
5. ジャービス、ジェフ。「イノベーションが効率性をもたらすとき」。バズマシン、 2009年6月12日。
6. リーズンズ、「革新的なデフレ」。
7. リーズンズ、「革新的なデフレ」。

原文リンク:https://sacred-economics.com/sacred-economics-chapter-13-steady-state-and-degrowth-economics/


いいなと思ったら応援しよう!