名前も知らない親切を、今も覚えている。
忘れられない、
小さな場面がある。
ドアを押さえて、
待っていてくれた人。
落としたものを、
さっと拾ってくれた人。
「大丈夫ですか」と、
一言だけ
声をかけてくれた人。
その人の顔も、
名前も知らない。
もう二度と、
会わないかもしれない。
でも、
あの瞬間のことを、
わたしはまだ覚えている。
些細な親切が、
ずっと心の中に残って、
疲れた日に、
そっと温めてくれる。
あの人は、
もう忘れているかもしれない。
何気なくしたことで、
特別なつもりも
なかったかもしれない。
でも、
わたしにとっては、
あの小さな親切が、
その日の景色を、
少し変えてくれた。
そう思ったとき、
ふと気づいた。
わたしが誰かにした
小さな親切も、
もしかしたら、
誰かの心に、
残っているのかもしれない。
言葉にしなくていい。
大げさじゃなくていい。
ただ、
目の前の人に、
少しだけ丁寧でいる。
それだけで、
誰かの一日が、
少し違う色になることがある。
小さな親切は、
消えない。
静かに、
誰かの心の中で、
生き続ける。

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