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スキと料理と私 #22

以前、この連載の#14で「料理のコツ」について少し触れた。
そこでは「『切る』『煮る』など、自分の好きな工程を軸にすれば、好きこそ物の上手なれで上達が早まる」と書いた。

現場に立ち続けて25年。

寿司屋に負けない煮穴子も炊ければ、フレンチレストランで自信を持って出せるローストビーフも焼ける自負がある。

そんな私だが、実は自宅で自分のために煮穴子を仕込むことはない。
「ローストビーフなんて買えばいいじゃん」と思ってしまうタイプで、家ではごく簡単なものしか作らない。

そんな私が、今回改めて「コツ」について考え直したとき、一つの逆説的な結論に辿り着いた。

「好きこそ物の上手なれ」は真理だが、現実はその逆。
「上手(じょうず)こそ、好きの始まり」なんじゃないか、と。

どれだけ「切るのが好き」だと思っていても、毎回指を切ったり、形がバラバラで褒められなければ、その「好き」は長続きしない。

逆に、最初はそこまで興味がなくても、初期段階で「上手くいくコツ」を掴んでしまい、周囲から「え、プロ級じゃん!」と褒められてドーパミンがドバドバ出たらどうだろう?

「自分、これ向いてるかも」

そんな有能感や優越感に浸りながら続けるうちに、気づけばその対象が「心底好きなもの」に変わっていく。これこそが、物事が爆速で上達する際の正体だ。

ここで、相棒のジェミ兄(AI)に聞いた心理学の話を一つ。

自己決定理論における「有能感」 人が「心からそれをやりたい」と思うためには、「自分には能力がある」という感覚(有能感)が必要不可欠だという。つまり、初期段階で「自分、結構できるな」という手応えが得られないと、情熱の種である「好き」は育ちにくいのだ。

だからこそ、私は教える立場として、まずは「小さな成功体験」を設計することにこだわっている。

「料理」という字は、「料(はかる)」と「理(きめを整える)」と書く。 分量や加熱時間をしっかり設計し、筋道を通せば、料理は必ず「美味しく」なる。その「美味しい」と言ってもらえる成功体験こそが、#14で書いた「好きな工程を楽しむ余裕」を生むのだ。

振り返ってみれば、私の人生もそうだった。

料理人として成果を残せたのも、自己破産後に爆速で資産形成を軌道に乗せられたのも、このnoteを書き続けられているのも。

決して完璧主義にならず、まずはやってみて、初期段階で「これならいける」という小さなコツ(上手くいく感覚)を早々に掴み、自分を「有能感」で満たしてあげたからこそ、今がある。

「好きだからやる」のもいい。

だが、「上手くなっちゃったから、好きにならざるを得ない」という状態に自分を追い込むのは、もっと強い。

コツを掴んで自分を調子に乗せる。

不純な動機のようだが、それこそが、料理も資産形成も、そして人生も、長く楽しく続けるための最大の「テクニック」なのだ。

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