🇿🇲ザンビア編12| ゴキブリと寝食を共にした先で、月の虹を見た【教科書に載っていない世界一周】
その夜、壁を見たぼくは絶句した。
1匹ではない。
10匹でもない。
数十匹ものゴキブリが目の前15cm、寝台列車の壁一面を這い回っていた。しかも、ここから45時間降りられない。
(この記事は110ヶ国を訪問した筆者が、なかでも最も刺激的だった2001年からの13ヶ月にわたる世界一周を、現在の目線で振り返ったものです)
🚂45時間の寝台列車にいた生き物
ぼくらが乗っていたのは🇹🇿タンザニアから
🇿🇲ザンビアへ向かうタンザン鉄道。
タンザニアの首都ダルエスサラームから乗り込んだのは
🇷🇼ルワンダから一緒の日本人旅仲間3人。
終点までは45時間の道のり。エアコンはないが
寝台付きのコンパートメント(部屋)だったため
最初は快適な旅になると思っていた。
地理の授業で名前を聞いたことがある人もいるかもしれない。
タンザン鉄道は内陸国ザンビアで採掘された銅をインド洋へ運び出すため、🇨🇳中国の援助で建設された有名な鉄道である。
しかし、夕暮れ。
しばらくすると、僕らの部屋に1匹、2匹と這い出してきた。
暗闇の帝王、🪳ゴキブリだ。
幸いタンザニアのゴキブリは大きさは1cmほど。
日本で見かけるものより小さいので
「可愛いもんだ」と油断していた。
初めて知ったのだが、一般的にゴキブリには体内時計があり
日没後の活動量は昼の十倍以上に上がるらしい。
気温が上がると更に活発化する。
夜間は窓からの風も弱まり、室内の気温が上がり蒸し暑くなってきた。
そのためだろうか。彼らは次々に這い出してくる。
彼らはどんどん増え、気がつくと数十匹もの群れが
壁一面にめいめい這い回っているのである。
虫嫌いの私の顔は次第に引きつった。
しかし、45時間の列車から降りることはできない。
だが落ち着いて冷静に観察してみると
彼らはダニのように人間へ向かってくるわけではなく
ただ車内を這い回っているだけだということが分かってきた。
かなり気持ち悪い。。。だが
「人体に直接の害はない。たぶん。」
そう自分に言い聞かせながら
なんとか眠りにつくことができた。
次の日の晩も全く同じ。
旅に出ると様々な生物の生態に詳しくなる。
数十匹のゴキブリと寝食を共にしたのは
後にも先にもこの時だけだった。

🍍駅に停まるたびに現れる市場
もっとも、タンザン鉄道の旅は不快なことばかりではなかった。
列車が駅に停まるたびに、ホームは即席の市場へと変わる。
いろんな売り物を抱えた子どもたちや
おばちゃんたちが窓の下に押しかけ
「🍍パイナップル!」
「🥭パパイヤ!」
「🥚ゆで卵!」
「🍗フライドチキン!」
と、次々に売り込みを始める。
試しにパイナップルを一つ買ってみた。約300円。
持っていたアーミーナイフでさばいて食べると
ジューシーで甘みも強く、美味しかった。
海沿いのタンザニアから高原地帯のザンビアへ向かうにつれ、景色は少しずつ変わっていく。
ただ、正直に言えば車窓の景色は単調。
広大な草原🌱
また草原🌱
たまに森🌳
しかし、その単調さの中で繰り返される駅ごとの小さな市場が、長い列車旅のいい気晴らしになった。
🏢文明都市ルサカ
終点のカピリムポシで、首都ルサカ行きのバスに乗りかえた。
3時間後、丘を越えた先に🏢高層ビルが数本見えたと思ったら、それがルサカだった。
ルサカは都会。
🇹🇿タンザニアはもちろん🇰🇪ケニアにもなかったスーパーマーケットがあった。
南ア系のスーパーがここまで進出していた。
入ってみるとたくさんの商品が並んでいる。
砂漠の中のオアシスのように見えた。
🌈世界最大の滝は想像を超えていた
ルサカで丸一日体を休めたあと
南部の町リビングストンへ向かった。
目的地は「ビクトリアの滝」。
ザンビアとジンバブエの国境にある、世界三大瀑布の一つである。
正直に言えば、ぼくはあまり期待していなかった。
所詮、滝は滝だろう、そう思っていたのだ。
だが、実際に目の前へ立った瞬間、その考えは吹き飛んでしまった。
それはぼくの知っている「滝」という言葉の範囲を超えていた。
幅1700m。
落差約100m。
轟音とともに落下した水は、巨大な水煙となり、上空高く舞い上がる。
数キロ離れた場所からでも見えるくらいだった。
そして滝の近くへ進む。
カッパを用意していたが、下の服までずぶ濡れになった。
そんなことすら気にならなくなるほど、すごい迫力だった。
そして、その時だった。
足元を中心に、巨大な虹🌈が現れたのである。
日本で見る虹と違い、完全な円。
赤、橙、黄、緑、青、紫。
色が濃く、力強い。
さらに、その外側にはもう一つの虹。
巨大な二重の虹が滝壺を包み込む。
ぼくは何時間もその場を離れられなかった。

🌕月明かりが作る白い虹
驚愕したものはそれだけではなかった。
夜にも行ってみた。
橋を渡った向こうにある🇿🇼ジンバブエサイドだ。
運よくその夜は満月。
静かな闇夜を歩いていくと、滝の轟音が近づいてくる。
月明かりに照らされた巨大な水煙が
幻想的な風景を作り出していた。
水煙の向こうに浮かび上がっていたのは
うっすらとした白い弧だった。
目の錯覚かと思えるような薄い輪。
それは月明かりが作り出す虹🌈だった。
実は虹は太陽だけではなく、月でもかかる。
RainbowではなくMoonbow「月虹(げっこう)」というらしい。
昼間のような鮮やかな色ではない。
カメラを使うと7色に映るらしいが
肉眼では白く淡い色合いの虹。
巨大な滝。
渓谷を吹き抜ける風。
絶え間なく響く轟音。
そして月虹。
世界には、まだこんな絶景が存在していたのか。
訪れる機会があるなら、ぜひザンビア側とジンバブエ側の両方を見てほしい。可能であれば、満月の夜にも。
🥩100円のTボーンステーキ
ザンビアという国について振り返ると
まず思い浮かぶのは広大な草原。
バスで移動しても見えるのは草原🌱、草原🌱、また草原🌱
しかし、この国には一つだけ強烈に印象に残ったものがある。
🍖牛肉だ。
ルサカ中心部の屋外マーケットへ行ってみると、
ドラム缶を半分に割ったコンロに炭火がくべられ、
網の上に手の平ぐらいの大きなTボーンステーキが焼かれていた。
価格はわずか100円ほど。
安宿一泊が1000円程度だったことを考えても驚くほど安い。
せっかくだから食べてみよう、とお金を渡し、
焼き上がった肉を受け取った。
「フォークは?」
と尋ねると
「要るの?」
と聞かれた。
周りを見渡すと、地元の人たちは手で食べているのだ。
ナイフもフォークも使わない。
最初は抵抗があった。
しかし郷に入りては郷に従え。
手を洗って、素手で食べてみた。
旨い。香ばしく柔らかい。脂がのっている。
肉そのものの味が濃く、塩も何もかけなくても十分おいしかった。
そしてステーキを手掴みで食べたのは初めてだった。
不思議なことに、手で食べると美味しさが高まるような気がする。
🇮🇳インドで手食を経験した時もそうだった。
寿司も手で食べた方が美味しく感じられるが
原始時代からの習慣に戻った方が
人間の味覚は鋭敏になるのかもしれない。
ぼくはザンビアという国を
「銅と草原と牛肉の国」
として記憶している。
ゴキブリだらけの列車で始まった旅だったが、
その先には世界でも屈指の絶景と、
忘れられない牛肉が待っていたのだった。

<行程>
1/24 カピリムポシ: ダルエスサラームより汽車45時間
ルサカ(首都): バス3時間1/26 リビングストン:バス6時間
1/27 ビクトリアフォールズ(ジンバブエ):徒歩2時間
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