🇴🇲オマーン編6-2| 4度目の挑戦で辿り着いた「中東のフィヨルド」──ムサンダム(ホルムズ海峡)という秘境【教科書に載っていない世界一周】
中東と聞いて、どんな景色を思い浮かべるだろうか。
果てしない砂漠、灼熱の太陽、石油と高層ビル。
もしそうだとしたら、この国の風景はきっとあなたの想像を裏切る。
中東には、“フィヨルドのような海岸線”を持つ国がある。
それが オマーン だ。
(この記事はこれまで110ヶ国を訪問した筆者が、2001年からの13ヶ月にわたる世界一周🌏を、現在の目線で振り返ったものです)
🏔️砂漠国家ではないオマーンの地形
オマーンと他の(ペルシャ)湾岸諸国との決定的な違いをご存知だろうか?
それは風景だ。人口500万人弱のオマーンは、国土の約8割が砂漠に覆われた国である。だがこの国は、周辺にあるような単なる「砂漠国家」ではない。オマーンには山があるのだ。しかもそれは国土の性格そのものを決めてしまうほど険しい山々である。
首都マスカットはその象徴ともいえる都市。この街は、山がそのまま海へ落ち込んだかのような地形の上に広がっている。港を中心に街が発達したが、背後にはすぐ岩山が迫り、平地はほとんどない。海辺から目に入る景色は、熱海から伊豆半島を海越しに眺めた景色のようだった。海と山が近すぎて、都市が横にも縦にも広がれない。
浅瀬を埋め立てて都市を拡張してきたアラブ首長国連邦(UAE)のドバイやアブダビなど多くの湾岸諸国と異なり、マスカットは地形に逆らわず、山の隙間に街をはめ込むように発展してきた都市だった。

🌊中東にも存在する「フィヨルド地形」
そんなオマーンの地形のなかでも最もすごいのが、ペルシャ湾に突き出した飛び地、ムサンダム地方だ。
中東にもフィヨルドのような地形が存在することをご存知だろうか。フィヨルドとは、本来は ノルウェー など北欧で見られる、氷河によって削られた入り組んだ海岸線のことを指す。切り立った山が海へ落ち込み、湾が複雑に入り組むのが特徴だ。
もちろん、オマーンに氷河は存在しない。成因は異なる。しかし、岩山が鋭く切り立ち、その間に海が深く入り込む地形という意味では、驚くほど似た景観がアラビア半島の北端に存在している。それがムサンダムだ。

🗾ムサンダムという飛び地
今回、私がオマーンを経由した最大の目的は、ムサンダム地方を訪れることだった。ホルムズ海峡の映像が映る際に、バックにそびえる切り立った断崖絶壁がこのムサンダム地方だ。
ムサンダムはオマーン本土から切り離され、UAEに囲まれた「飛び地」である。政治的にも地理的にも特殊な場所であり、長らく外国人の立ち入りが制限された秘境だった。そこに「中東最大の秘境」があるという噂を兼ねてより耳にし、何とか自分の目で見たいと思っていた。
実はこれまでに二度この地を目指したが、入境できず断念している。そして今回が三度目の挑戦だった。ガイドブックなどにもほとんど記載されておらず、現地へ行ってみないと実際入境できるかわからない。
いくつも旅行代理店に足を運び、大使館や空港にも問い合わせたが、ラマダンのせいもあり飛行機が運休、またしても入境できないことが判明した。
「ここまで来たのに、また行けないのか。。。」正直、落胆は大きかった。

🏁四度目の挑戦で、ようやく辿り着いた場所
実はこの(世界一周の)5年後、ドバイを再訪した際に、四度目の挑戦をする機会が訪れた。その頃には規制が大きく緩和され、UAEから車を使うことでムサンダムへ入境できるようになっていた。
ドバイでレンタカーを借り、かつて封鎖されていた海岸沿いの一本道を3時間かけて北上し、無事国境を越えることができた。実際に目にしたムサンダムの海岸線は、想像をはるかに超えるものだった。この景色を見たことで、これまでの三度の挑戦の失敗が、報われた気がした。
この地域はしばしば「中東のノルウェー」と呼ばれる。入り組んだ海岸線、切り立った岩山。山は垂直に近い角度で海へと落ち込んでいく。そしてライトブルーの驚くほど透き通った海。アラビア半島で最も美しい海といっていい。
ぼくの印象では「ノルウェー」というより、スイスアルプスが、そのまま海に沈み込んだような景色だった。宿からシュノーケリングツアーに参加したが、船で湾の奥へ入っていくと、岩壁にエンジン音が跳ね返る。山々に囲まれた谷は全て入江となっている。住民も観光客もほとんどいない地域。海は驚くほど静かだ。
これまでに中東のほとんどの国を訪れたが、ムサンダムほど美しい景色はなかった。ドバイを訪れる機会があれば、ムサンダムへ足を伸ばしてみるととを是非お勧めする。
中東は、砂漠だけの世界ではない。そして地形を見れば、その国の歴史や性格も見えてくる。あなたが中東で見てみたい景色は何だろうか?

(トップ写真はムサンダム半島ハッサブ郊外)
