雑談:ホテル期待値とお客様の感じ方ー高級だけどサービスが悪い、安いビジネスホテルでもホスピタリティ最高。この差はどこで生まれるかーホテルの満足度は「ハード」と「ソフト」の掛け算
こんにちは!個人投資家で元ホテルマンのTAKA Chanです。
元ホテルマンとして、ずっと面白いと思っていることがあります。
それは、ホテルの満足度は必ずしも「価格順」ではないということです。
高級ホテルに泊まったのに、
「え、この値段でこの対応?」と思うことがあるのです。
一方で、安いビジネスホテルに泊まったのに、
「ここ、意外と良かったな」と感じることもある。
部屋の広さ、ロビーの豪華さ、レストランの数、ブランド名。
普通に考えれば、高級ホテルの方が満足度は高くなりそうです。
でも、現実はそう単純ではありません。
満足度は「期待値との差」で決まる
サービス研究では、満足度は「事前の期待」と「実際の体験」の差で決まりやすい、という考え方があります。
難しい言葉で言いますと期待確認理論、または期待不一致理論に近い考え方です。
簡単に言えば、事前期待を実際の体験が上回ると満足しやすく、下回ると不満につながりやすいと整理されています。
ほとんどのサービス体験の良し悪しはほぼこれだと言っても過言ではありません。
ホテルはとてもわかりやすい例
高級ホテルは、泊まる前から期待値が高い。
「この価格なら、当然きちんとしているだろう」
「このブランドなら、細かいところまで見てくれるだろう」
「このランクなら、スタッフの対応も一流だろう」
こう思って来館されます。
だから、少しのミスが大きく見える。
チェックインで待たされる。
笑顔はあるけれど、どこか事務的。
頼んだことが他部署に伝わっていない。
レストランで名前を間違えられる。
会計で説明が雑。
ひとつひとつは小さくても、高級ホテルでは印象に残ります。
お客様の頭の中には、こういう言葉が出てきます。
「この値段で、これ?」
これが高級ホテルの怖さです。
安いホテルは期待値が低いぶん、上振れしやすい
反対に、ビジネスホテルは最初の期待値が現実的です。
駅からどのくらい近いか。
部屋が清潔か。
ネット環境が整っている。
お風呂に入れる。
静かに寝られる。
朝食が普通に食べられる。
まずはこのくらいです。
そこに、フロントの方が自然に一言添えてくれる。
「雨が強いので、お気をつけください」
「お荷物、先にお預かりします」
「こちらの出口の方が駅に近いです」
これだけで印象が変わります。
高級ホテルでは「当たり前」と見られることが、ビジネスホテルでは「ありがたい」に変わる。
同じ接客でも、受け取られ方が違うわけです。
ここに、ホテルの、またサービスの面白さがあります。
サービス品質は明らかに建物だけではない
サービス品質を考える枠組みに、SERVQUALという有名な考え方があります。
サービス品質を「信頼性・安心感・目に見える設備や外観・共感性・反応の早さ」などで捉えるモデルです。
ウィキペディアでも公開されています。
ホテルマンの方は時間があれば読んでみてください。
なかなか面白いですよ。
ホテルで言えば、建物や部屋の豪華さはもちろん大事です。
ただ、それだけではありません。
約束したことを守る。
質問にすぐ答える。
困っているお客様に気づく。
断る時も言い方に配慮する。
部署をまたいでも情報がつながっている。
こういう部分が、実はかなり大きい。
でもこれ、私世代ではめちゃくちゃ当たり前なことなんですけどね。
でもこれが全館・全員できないからサービス業は難しいのです。
高級ホテルのロビーがどれだけ綺麗でも、スタッフの反応が遅ければなんか冷たく感じます。
安いホテルでも、フロントの対応が早く、説明がわかりやすく、少し気遣いがあれば「ああ、いいホテルだったなあ」と思われる。
つまり、ホテルの満足度は「ハード」と「ソフト」の掛け算です。
ハードが良くても、ソフトが悪いと残念になる。
ハードが普通でも、ソフトが良いと印象は上がる。
高級ホテルほど、現場は難しい
ここは元ホテルマンとして、少し現場寄りの話をします。
高級ホテルのサービスは、見た目以上に難しいです。
お客様の要望が細かい。
記念日、アレルギー、部屋の向き、レストラン予約、荷物、車、会計、同行者への配慮。
しかも、それをフロント、ベル、客室、レストラン、予約、営業が共有しないといけない。
どこか一カ所で情報が止まると、すぐにミスになります。
お客様から見れば、部署の違いなど関係ありません。
「ホテルにさっきも伝えたのに」
この一言で終わりです。
高級ホテルは、期待値が高いぶん、失点が目立ちやすい。
これは投資にも似ています。
高PERの人気株は、少しの決算ミスで大きく売られる。
地味な銘柄は、少し良い材料だけで見直される。
ホテルも同じです。
高級ホテルは、すでに期待が価格に織り込まれています。
ビジネスホテルは、期待値が低いぶん、上振れの余地がある。
今のお客様は、ホテル以外とも比べている
もうひとつ大事なのは、今のお客様の期待値が変わっていることです。
Deloitteのホテルゲスト体験に関する公開記事でも、今の旅行者はホテルに単なる宿泊以上の体験を求めており、ホテル側は変化するニーズに合わせてゲスト体験を磨く必要があるとされています。
これは現場感覚でもかなりあります。
お客様は、ホテルだけを見ていません。
スマホアプリの便利さ。
ECサイトの早さ。
飲食店予約の簡単さ。
タクシー配車アプリのスムーズさ。
こういう日常の便利さと、無意識にホテルを比べています。
だから、どれだけ高級でも、チェックインが長い、案内がわかりにくい、予約情報が共有されていないとなると、すぐに不満になります。
昔なら許されたことが、今は許されにくい。
これは高級ホテルほど厳しいです。
最後に残るのは「自分を大事に扱ってくれたか」
EHLの公開記事では、ゲスト体験は単発の接客ではなく、予約前から滞在後まで続く一連の体験だと説明されています。
また、パーソナライゼーションは名前を覚えることから、言われる前にニーズを察することまで幅があると整理されています。
ホテル現場で見ると、これは本当にその通りです。
お客様は、細かい設備をすべて覚えているわけではありません。
でも、感情は覚えています
雑に扱われた。
待たされた。
言ったことが伝わっていなかった。
逆に、困っている時に助けてもらった。
自然に声をかけてもらった。
こちらの事情をわかってくれた。
この記憶は残ります。
高級ホテルでも、心が動かなければ「高かった」で終わる。
安いホテルでも、心が動けば「また使いたい」になる。
結局、ホテルの評価はここに戻ります。
「自分を大事に扱ってくれたか」
元ホテルマンとして思うこと
ホスピタリティは、高級ホテルだけのものではありません。
もちろん、高級ホテルには高級ホテルの価値があります。
空間、香り、静けさ、客層、レストラン、非日常感。
これは簡単に真似できない。
でも、ホスピタリティそのものは価格で決まりません。
限られた設備でも、良いホテルはあります。
小さなビジネスホテルでも、気持ちの良いホテルはあります。
逆に、どれだけ立派なホテルでも、現場が疲弊していたり、部署間の連携が悪かったり、お客様を流れ作業にしてしまえば、一気に印象は悪くなる。
ホテルの満足度は、豪華さだけでは決まらない。
期待値を理解しているか。
基本ができているか。
人が人として接しているか。
この差が、宿泊後の一言になります。
「高かったけど、微妙だった」
または、
「安かったのに、すごく良かった」
ホテルの価値は、料金表だけでは測れません。
最後に記憶に残るのは、シャンデリアの大きさより、自然な一言だったりします。
いいなと思ったら応援しよう!
ほぼ無料公開しておりますが、チップをいただけると励みになります!
よろしければ応援のほどよろしくお願いいたします!