【Day16–35|ルーベン⑧】ブリュッセルまで、自転車で。
ルーベンでの前半の研究生活が終わる少し前、どうしてもブリュッセルに行きたい理由がありました。観光というよりは旧友に会うためです。
ルーベンからブリュッセルまでは電車で30分ほど。近い、早い、便利です。普通なら電車で行けばいい。でもこの日は天気が良かったこともあり、自転車で行くことにしました。片道約2時間半。せっかくベルギーにいるのだから、自転車で走ってみたかったのです。


ベルギーは自転車の国です。学生も、教授も、スーツ姿の人も、買い物袋を下げた人も、みんな自転車で移動しています。自転車は単なる趣味ではなく、生活の一部です。街の中には自転車専用レーンが整備され、場所によっては車道としっかり分けられています。日本でも自転車に乗る人はたくさんいますが、ベルギーでは街の作りそのものが自転車を前提にしているように感じました。



ルーベンを出ると、景色が少しずつ変わっていきました。街の石畳を抜けて、住宅街を通り、森の中へ入る。畑の横を進んで、小さな村を通り過ぎる。観光バスでは絶対に通らない道です。有名な観光地でも、歴史的な建物でもありません。ただ、知らない道を自転車で走っているだけ。でも、それがとても楽しいのです。電車なら30分で着いてしまう距離を、あえて2時間半かけて移動する。効率だけを考えれば遠回りです。でも旅には、こういう無駄な時間があっていいと思います。むしろ、そういう時間の方が後からよく思い出します。
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ブリュッセルに着いて向かったのは、祐輔さんのラーメン店「KOKU」でした。
祐輔さんは、13年前の留学時代にJDBで一緒にサッカーをしていた友人です。当時一緒にボールを蹴っていた仲間が、その後ブリュッセルでラーメン屋をオープンしたと聞いていました。いつか行きたいと思っていました。そして今回、ようやく行くことができました。閉店間際にギリギリ滑り込みました。


お互いの近況を話しながら食べたラーメンは、格別においしかったです。海外で食べる日本のラーメンには特別な力があります。味そのもののおいしさもありますが、それ以上に、遠く離れた場所で日本の味に出会える安心感がある。しかも、それを作っているのが13年前の友人です。ただの昼食ではありませんでした。13年前の留学時代と、今の自分が、一本の線でつながったような時間でした。
祐輔さんは「来てくれたことが嬉しいから」と言って、代金を受け取ってくれませんでした。自転車で走ってきて疲れた体に、ラーメンの温かさと人の温かさがしみました。
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食後はグランプラスへ向かいました。ブリュッセルの中心にある、ユネスコ世界遺産に登録された広場です。石畳の広場を囲むように中世のギルドハウスが立ち並び、金色の装飾が施された建物が光の角度によって表情を変えます。

建物の高さ、装飾の細かさ、広場全体の密度。観光客で賑わっているのに、どこか厳かな空気があります。自転車で2時間半かけてたどり着いたからか、その景色が余計に印象に残りました。
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帰りは自転車を電車に乗せてルーベンへ戻りました。行きに2時間半かけた道を、帰りはあっという間に戻ります。便利です。でも、やはり自転車で行って良かったと思いました。電車で往復していたら、グランプラスを見て、ラーメンを食べて、それで終わりだったかもしれません。自転車で行ったことで、その一日には道中の景色が加わりました。森の道、畑の横の道、小さな村、自転車ですれ違う人たち、疲れた足。全部含めて、ブリュッセルの記憶になりました。
