ゼルダに救われた朝──動けなかった僕と、リンクの目覚め|回生の旅路 #2
どうしても自分の力で起き上がれないときも、ありますよね。
僕もそうでした。リンクの姿に、自分の無力さを重ねてしまいました。
あのゲームの冒頭で、まさか自分が泣くとは思いませんでした。
1. リンクが起きた日、僕も起きた気がした
「目を覚まして…リンク…」
ブレワイの冒頭。
この声がなんだかすごく心に残っているんです。
リンクに向けられたセリフのはずなのに、あのときの自分に言われてる気がして、ちょっと泣いてしまいました。
リンクは、戦いでボロボロになって、百年ものあいだ眠っていました。
『ブレス オブ ザ ワイルド』では、リンクはゼルダ姫を守る騎士として「100年前の大厄災」に巻き込まれ、命がけで戦った末に力尽きてしまいます。
そのあと、彼は「回生の祠」という場所に運ばれ、長い眠りにつくことになります。
体も傷だらけ、戦う力もなくて、回生の祠という場所で、長いあいだ静かに回復していたんですよね。
演出はかなり静かです。
裸のまま石の台の上で目を覚まして、光が差し込む中、ふらっと立ち上がる。
装備も何も持ってない。記憶もない。
ただ一歩ずつ、歩き出す。それだけの始まりです。
でも、自分にとってはシリーズ全体で一番印象に残ったシーンでした。
あの頃の僕も、ずっと暗い部屋で寝たきりでした。
何もする気になれなくて、天井ばっかり見ていて。
研究も止まって、薬も効かなくて、気持ちも思考も、ぜんぶ曖昧で。
朝が来ても、起きられない。
でも、どこかで「そろそろ起きないといけない」と焦っていた。
でも体は動かない。気持ちもついてこない。
そんなときに聞いた「目を覚まして…リンク…」という声。
なんかもう、「君も起きていいよ」って言われた気がしたんです。
まだ実際には、何も回復していなかったけど、
リンクと同じように、ただ「眠っていた時間」に、意味があるのかもしれないって、ふと思えたのです。

2. 誰かに運ばれて、祠にたどり着いた
リンクは、自分であの祠に歩いて行ったわけじゃないんです。
あとから『マスターワークス』っていう設定資料集で知ったのですが、
ゼルダと一緒に逃げてる途中、クロチェリー平原で倒れて、
シーカー族の人たちに助けられて、回生の祠まで運ばれたそうです。
それを読んだとき、胸がズンとしました。
リンクでさえ、自分じゃ動けなかったんだな…って。
じゃあ、自分も助けられてよかったんだって、そう思えたんです。
僕が倒れたのは、2025年の2月。
ストレスでまぶたがピクピクしだして、不安が強くて、眠れなくて、
朝になっても体がまったく動かない。
ごはんも食べられないし、研究も止まって、誰にも連絡できない。
頭の中はずっと霧みたいにぼやけてて、何かを判断する力も、もう残ってませんでした。
そんな状態の自分を、親や大学の人たちが見かねて、
休学の手続きや引っ越しの準備を、全部やってくれたんです。
僕はただ、流れに身を任せて、実家の大阪に帰ってきました。
今思えば、あれが自分にとっての「回生の祠」だったのかもしれません。
もちろん、リンクみたいにかっこよくはなかったですが。
リンクのように誰かを守る力もなかったし、使命もなかった。
でも、限界までボロボロになって、それでも助けてくれる人がいたこと。
それが、回復のいちばん最初の一歩だったんだと思います。
あの頃、ずっと閉めきってたカーテンの隙間から、ふと光が差し込んできた日があって。
やわらかい朝の光が、まぶしくて、でもあたたかくて。
「ああ、生きててもいいのかな」って、ぼんやり思えたのです。
あれが、僕にとっての目覚めだったのかもしれません。

3. 「起きた」だけじゃ、まだ何もできなかった
リンクは祠から起き上がったあと、すぐに戦うわけじゃないんです。
体力も記憶も、なにもかも失っていて、
まずは装備を探して、草むらから木の枝を拾って、
寒さに震えながら、少しずつ少しずつ動けるようになっていく。
それを見て、「ああ、リンクもすぐには何もできなかったんだな」って、ほっとしたのを覚えています。
僕も、ようやく起き上がれるようになっても、そこからがしんどかった。
体は起きてるのに、頭はまったく働かない。
スマホの通知が怖くて、メールは開けない。
冷蔵庫の前で止まって、何を取りに来たかも忘れる。
「これってもう、戻れないのかな」って思う日もありました。
でも、ほんの少しだけ、できることが増える日もあって。
布団から出られた日。
シャワーを浴びられた日。
スマホを見ずに眠れた夜。
そのひとつひとつが、自分にとっての「回生」だったと思います。
ある日、昼間にカーテンを開けたままにできたことがあって。
光が眩しくてすぐ閉めたけど、その日はなんとなく「ま、いっか」って思えたんです。
たったそれだけのことで、「ちょっとだけ世界と繋がれた気がした」のを、今でも覚えてます。
そして、ある朝。
理由もなく早く目が覚めて、外に出てみようと思いました。
人の声が怖かったから、サングラスにノイキャンのヘッドホンという完全装備で、
誰にも見られないように、そっと玄関を開けて。
まだ薄暗い時間。
そのまま家の前の道を、5分だけ歩きました。
たった5分。
けど、それが自分にとっては、「世界に触れ直す」みたいな体験でした。
リンクが地図にマーカーを打つみたいに、
僕も、「今日は朝に外に出られた」、「今日は風が気持ちよかった」って、
小さなことを、心の中の地図にひとつずつ記していく毎日でした。
誰にも気づかれないような、一歩。
でも、リンクの姿を思い出しながら、「それでも進んでる」って思えるようになっていきました。
まとめ
リンクは、ボロボロになって、ひとりじゃ動けなくなって、
それでも助けられて、ようやく休める場所にたどり着きました。
僕もまた、自分では何も決められなかったけど、
支えてくれた人たちのおかげで、実家に帰って、ようやく静かに眠ることができました。
すぐに元どおりになったわけじゃないです。
リンクと同じように、ひとつひとつ、できることを取り戻していくしかなかった。
あの日の、青白い光。
リンクが祠で目を覚ましたあの光景が、今もずっと心に残っています。
「生きててもいいのかもしれない」って、ほんの少しだけ思えた、あの瞬間。
僕はたぶん、あそこから少しずつ回生を始めていたんだと思います。
次回は、リンクが最初に見たハイラルの大地みたいに、
“景色の中を歩くこと”について書こうと思っています。
うつで止まっていた時間のなかで、風を感じたり、木の影を見たり、
ちょっとだけ世界とつながれた気がした日があって。
その感覚は、大学時代に訪れたイギリス・湖水地方の記憶とも、どこか重なっていました。
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