【通算087|要求AI 04】曖昧な一文をKiroに渡したら、質問は2つ来た。ただし業務の質問はなかった
前回はKiroのインストール編でした。
検証の手順はシンプルだ。Kiroの入力欄に、わざと曖昧なこの一文だけを入れる。
「経費申請を承認できるようにしたい」
誰が承認するのか。金額でルールは変わるのか。差し戻しは。——何も書かない。Kiroは聞いてくるだろうか。
*注意 英語 requirements を「要件定義(書)」と解釈して記事を書いています。
質問が来た
Kiroはいきなり作り始めなかった。まず日本語でこう聞いてきた。

1問目:「新機能の開発とバグ修正のどちらですか?」
選択肢の3つ目に注目してほしい。「クイックスペック:レビューなしで要件と設計を自動生成する」——確認しながら進む道と、ノーチェックで一気に作る道。SDDとバイブコーディングの分岐点が、この3択に凝縮されている。
2問目。

2問目:「何から始めますか?」推奨マークは「要件定義」に付いている)
「コードより先に要件を」という思想が、ウィザードのボタンにまで埋め込まれている。ここまでは感心した。
生成が始まる——1操作ごとに承認を求めてくる
2問に答えると、Kiroは内部で専門エージェント(Sub-agent: feature-requirements-first-workflow)を起動し、作業を始めた。自動運転(Autopilot)をオフにしてあるので、フォルダ作成ひとつ、ファイル書き込みひとつごとに許可を求めてくる。

日本語の依頼から「expense-approval」という英語名を自動で付けた
「View changes」を押せば、書き込まれる中身を承認前に差分で確認できる。安全と引き換えに、クリック回数——このトレードオフは身体で覚えた。

4分後、要件定義(書)が出てきた

完了報告。8要件。消費はわずか1.09クレジット
生成されたのは、たった2つのファイルだった。


Markdownファイルなので、Kiroがなくても読める・共有できる
正直悪くない。用語集には申請・承認者・証憝など9つの用語、状態は「下書き・申請中・承認済み・差し戻し・取り下げ」の5つ。自分の申請は自分で承認できないというルールまで入っていた。受入基準は定型文(EARS記法)で書かれている。たとえばこんな具合だ。
WHEN 申請者が「提出」操作を実行したとき、THE Expense_Request SHALL 申請内容を検証し、Approval_Status を「申請中」に設定する
教科書的には合格点。その間、経費承認という業務についての質問は一度もなかった。
無いものリスト
読み込むと「無いもの」が見えてくる。
金額による承認者の分岐(経費承認の定番ルール)——無い
代理承認、多段承認——無い
承認者を誰がどう割り当てるか——「割り当てられた申請」とだけ書かれ、未定義
承認の後工程(精算・支払・会計連携)——無い
締め日、監査、電子帳簿保存法——無い
Kiroが書いたのは「一般的なの経費承認」であって、特定の会社の経費承認ではない。要求の下敷きになっている業務の前提——当たり前すぎて文章に書かれない部分——は、聞かれもせず、書かれないまま先へ進む。
さらに内部矛盾もあった。用語集に「下書き」状態が定義されているのに、下書きを保存する要件がどこにも無い。
クラウドの遅さ
KiroのAIはAWSのクラウドで動くようだ。ローカルPCから、1ステップごとにクラウドとの往復を待つようだ。生成自体は数分で済んだが、続けて「要件を分析する」機能を試したところ——3問中0問のまま無応答。40分待っても、画面は動かなかった。タスクマネージャーを見るとKiroはCPU 0%・メモリ20MB——アプリがストップしていた。無料枠のレート制限か、Kiro自身のフリーズなのかは原因不明。エラーも出さずに沈黙し続けるのは困る。最後はタスク・マネージャーからキャンセルした。

「Answering questions (0/3)」のまま止まった分析
わずか1.09クレジットで「一般解」の要件定義(書)が出てくる。道具としては大したものだ。では、この結果を前回宣言した「4つの視点」で評価するとどうなるか——それは次回、じっくりやる。
今日のまとめ
Kiroは進め方の質問(2問)はするが、業務ドメインの質問は0問だった
生成された要求仕様は教科書的には良質(EARS記法・用語集・自己承認禁止)。実体はMarkdownファイル2つ
ただし金額分岐・代理承認・後工程など「うちの会社の事情」は聞かれず、存在しない
AIはクラウド実行。無料枠では分析機能が長時間無応答→打ち切りという洗礼も受けた
#AIエージェント #Kiro #AWS #要件定義 #スペック駆動開発 #EARS #システム開発 #SE #生成AI #50代
