2泊3日の合宿で学んだ問題解決術——MIND-SAと「問題点連関図」を社内に根付かせた話|SEとして歩んだ30年を振り返る⑪-2
「この問題、何が原因なのか、うまく説明できないんです」
技術部に来てから、現場のエンジニアにそう言われることが何度もあった。
問題は感じている。でもどこが根本で、どこが枝葉か、整理できない。
「絡み合いを見える化する」技法と出会ったのが、この時期だった。
データモデリングだけでは足りなかった
技術部では、プランDB(データモデリング手法)を自社の開発標準として制定した(前回⑪-1)。
でも要件定義で本当に難しいのは、データをモデル化することだけではない。
その前段階——「そもそも何が問題なのか」を正確に把握することだ。
問題の本質が曖昧なまま要件を定義しても、的外れなシステムができ上がる。
だから次の仕事として、問題解決手法の社内導入に取り組んだ。
MIND-SAという手法
導入した手法が、MIND-SAだ。
正式名称は「Method of Information Systems Design for System Analysis」。システム分析のためのシステム設計手法という意味だ。
開発したのは株式会社日本システミックス(Nix)。日本能率協会から独立したコンサルタント集団が、1984年に体系化した。
導入実績は約250社。大手製造業でも採用されている、実績のある問題解決メソッドだ。
マインドSAの特徴は、システム分析と問題解決を一体として捉えていることだ。「問題を発見・整理する」「原因を構造的に分析する」「解決策を設計する」という一連の流れを、体系的な手順と技法で支える。
2泊3日の合宿研修という形式
マインドSAの導入は、座学の研修ではなかった。
2泊3日の合宿**という形式だ。
コンサルタントと一緒に、合宿の場に閉じこもる。架空の事例ではなく、自社の実際の課題を持ち込んで、リアルな問題を解きながら学ぶ。
研修が終わったとき、「勉強した」ではなく「一つの問題を実際に解いた」という経験が残る。
日常業務から切り離された環境で、コンサルタントとチームで一つの問題に向き合う。だからこそ普段では出てこない発想や、踏み込んだ議論が生まれた。
この設計が、手法の定着に大きく効いた。
問題点連関図——「複雑に絡み合った問題」を解く道具
マインドSAの中で私が最も注力したのが、問題点連関図だ。
新QC7つ道具のひとつ「連関図法」をベースにした技法で、発想はシンプルだ。
「問題と原因の因果関係を、矢印でつないで図にする」
原因Aが問題Bを引き起こす。問題BはさらにCへとつながる。CはAにも影響している——こういった複雑な因果関係を矢印で結んで図にする。すると「最も多くの矢印が集まっている場所」が根本原因として浮かび上がってくる。
他の手法との違い
問題解決の手法は他にもある。なぜ連関図なのか。
特性要因図(魚の骨図)は、一つの問題の原因を枝状に整理する。問題と原因が明確な場合に強いが、「問題が複数あり互いに絡み合っている」状況には対応しにくい。
KJ法(親和図法)は、バラバラな情報をグルーピングして構造化する。問題が曖昧な段階で全体像を把握するのに向いているが、因果関係の分析は苦手だ。
問題点連関図は、この二つが苦手とする「複数の問題・原因が複雑に絡み合った状況」で真価を発揮する。
システム開発の現場では、問題がシンプルなことはほぼない。「品質が悪い」「納期が遅れる」「コストが超過する」——これらは別々の問題ではなく、根っこでつながっていることが多い。その「根っこのつながり」を可視化できる。
私が社内の研修講師になった
マインドSAを習得した後、私は社内の研修講師として問題点連関図を教える役割を担った。
なぜ外部コンサルではなく、自分が教えるのか。
外部コンサルタントは理論と事例を持っている。でも「自社のどの場面で使えるか」「自社特有の問題にどう適用するか」は、自社の人間でないと分からない。
私が講師を担うことで、技法の説明に加えて「うちの会社では、こういう場面で使う」という自社文脈での説明ができた。受講者にとって「学んだ」から「明日から使える」への距離が縮まる。
外部から「インストール」するのではなく、自社の中に「根付かせる」——この違いが、定着を大きく変えた。
問題点連関図の基本的な作り方
実際にどう使うか、手順を簡単に整理しておく。

テーマを決める — 解決したい問題(事実)を中央に置く
目的 — あるべき姿、状態
ねらい — 目的を達成した結果、得られる状況
右方展開 — 問題の解決をするべき理由:問題点連関図のポイント
左方展開 — 因果に基づく原因探索
解決策を設計する — 根本原因に対する解決策
「絡み合いを見える化する」という発想の普遍性
問題点連関図を使って気づいたことがある。
複雑に見えた問題は、ほとんどの場合「絡み合いが見えていないだけ」だ。
図を描くと「これはあの問題の結果だったのか」という発見が必ず出てくる。議論が「堂々巡り」から「根本を攻める」に切り替わる瞬間がある。
この瞬間の手応えが、連関図を教え続けた動機だった。
今、AIエージェントビジネスを設計する場面でも同じことをしている。「うまくいかない」という漠然とした問題に対して、原因を書き出して矢印で結んでみる。するとどこに集中すべきかが見えてくる。
手法は古くても、「問題の構造を可視化する」という発想は普遍的だ。
まとめ
技術部で、マインドSA(MIND-SA)という問題解決手法を社内標準として導入した
MIND-SA:株式会社日本システミックス(Nix)が1984年に開発。導入実績約250社
2泊3日の合宿研修形式。自社の実際の問題を題材に、コンサルタントと共に解きながら習得
問題点連関図:複数の問題・原因が絡み合った状況を矢印で図示し、根本原因を特定する技法
習得後、社内の研修講師として教える役割を担い、手法を「根付かせる」側に回った
「複雑に見えた問題は、絡み合いが見えていないだけ」——この視点は今も使い続けている
あなたに聞いてみたい
「問題の原因が複雑に絡み合っていて、どこから手をつければいいか分からない」——そんな経験はありますか?
仕事でも、プロジェクトでも、日常の悩みでも。「あの時に連関図を知っていれば」という場面があれば、ぜひコメントで教えてください。
元大手SIerのSE。50代で退職後、両親の認知症介護に5年間専念。現在は在宅でのAIエージェントビジネス構築に取り組み中。
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