【構造分析】問題は「人」ではなく「構造」にある─関係・役割・制度のズレが、現場を壊していく
※本記事では「責任配置」という語を使用していますが、現在は概念整理のため、「役割構造」という表現に更新しています。
はじめに.
枠組みはあるのに、関係が壊れていく職場で起きていること
評価制度があり、目標も設定され、面談も行われている。それでも、職場の関係が少しずつギスギスしていく。こんなことはありませんか、
良かれと思ってした指摘が相手の防衛を招く
こうあるべきと思ってした正論が対話を妨げる
確固たる思いを持つ人ほど、孤立していく
意見の表明をすることそれ自体がリスクになっていく。
「評価が足りないから」ではなさそうだ、
という違和感を抱いたことがある人も多いのではないでしょうか。
この事象は、多くの現場で繰り返し観察されているものでしょう。
※この記事は、問題を個人の性格や能力ではなく、関係性・役割・制度の配置として捉える立場から書いています。
1.職場関係の噛み合わなさ
こうした状況を前にすると、
上司の伝え方が悪い
部下の受け取り方が未熟
フィードバックが足りない
と説明したくなりますし、実際そのようにしがちです。これは心理学的にも自然な動きです。
実際、それぞれに当たっている部分もあります。
ただ、それだけでは説明しきれない場面があります。
伝え方を工夫しても、防衛が強まる
制度を整えても、正論のぶつかり合いが起きる
この噛み合わなさは、
個人のスキルだけでは説明できません。
2.ある職場で起きていたこと
ある職場に、成果を安定して出している中堅社員Aがいました。
Aは、
評価基準を正確に理解している
数値目標も達成している
上司からの信頼も厚い
その一方で、
同僚や部下への「指摘」が増えていった
「基準に照らすと正しくない」「根本をわかっていない」という言い回しが多くなった
Aの指摘に対する反発や沈黙が、周囲に広がっていった
A自身は、「組織のため」「成果のため」に行動していました。悪意があったわけではありません。
それでも、現場の空気は少しずつ硬くなっていきました。そのうち、Aは静かに敬遠されていきました。
3.個人を責めると、説明できなくなること
この状況を、
Aのコミュニケーション能力の問題
Aの他者への配慮不足の問題
として片づけることもできます。
しかし、個人の課題にこの話を回収すると、次の点が説明できません。
なぜ「評価」をよく理解している人ほど、対立を生みやすくなるのか
なぜ指摘が「正しさの主張」になり、調整が起きにくくなるのか
なぜ、別の人、別の職場であっても、似たことが起きるのか
ここで起きていたのは、
評価が「成長の道具」ではなく、「“ポジション”を取るための拠り所」になっていく
構造でした。
4.「評価」が関係を壊すとき
評価制度そのものが悪いわけではありません。
問題は、評価が置かれる「位置」
です。
評価が「判断の最終解」になる
正解を持つ人が、調整役も兼ねる
関係のズレが、個人の是非に回収される
この配置になると、
正論ほど強くなる
防衛が起きやすくなる
対話の回路が細っていく
という現象が起きやすくなります。
これは、固定記事で扱った
「正しさが関係を壊す構造」と同型です。
5.何をしたかより、何をしなかったか
この場面で重視したのは、
「評価をどう使うか」よりも、
「評価をどこで使わないか」
でした。
すぐに評価に結びつけない
正解を上司や成果者が独占しない
調整を個人の力量に任せきりにしない
評価は必要です。
ただし、関係を整える回路とは切り分けて扱う必要があります。
6.これは、企業だけの話ではない
この構造は、企業に限りません。
教育現場では、「指導」と「正しさ」が結びついたとき
行政では、「制度理解」と「現場判断」が重なったとき
福祉・支援では、「専門性」と「善意」が評価化したとき
分野が違っても、
人を簡単に入れ替えられない現場では、同じようなズレが繰り返し現れます
この構造がより明確にみられる現場として、教育や行政、支援の現場があります。
7.おわりに
評価をなくせば解決する、という話ではありません。
大切なのは、
評価をどこに置くか
誰にどの役割を持たせるか
調整の回路を、どこに残すか
を、構造として考えることです。
このnoteでは、
そうした「判断の前提」や「配置の考え方」を、
具体的なケースを通して整理していきます。
⏹️本記事は、マガジン
「壊れない現場 ― 教育・支援を『構造視点』で翻訳設計する」
の一部です。教育や支援の現場で起きる出来事を、個人の資質や努力に回収せず、関係構造・責任配置・行動誘因(=構造)から読み解き、現場を構造として翻訳し直す視点を順に整理しています。
このシリーズでは、
違和感 → 構造分析 → 構造視点 → 構造翻訳 → 構造設計 → 実装
という流れで、壊れない現場を構造から考えていきます。はじめて読む方は、以下の記事からご覧ください。
① 善意も熱意もあるのに、うまくいかない
② 問題は「人」ではなく「構造」にある
■ 壊れない現場 ― 構造視点シリーズ(マガジン一覧)
