会社らしさは、『やらないこと』にも表れる。
前回、「会社らしさは、まだ言葉になっていない」という話を書きました。
現場の工夫。
お客様への先回り。
昔から続けているやり方。
社内では当たり前になっている習慣。
そういうものの中に、その会社らしさが隠れていることがある。
そして、それを見つけて、言葉にし、会社の価値として扱えるようにしていく。
そんな話でした。
では、会社らしさを言葉にしたあと、何が起きるのでしょうか。
私は、ここから先も大事なのだと思っています。
会社らしさは、きれいに表現するためだけのものではないはずです。
会社案内に載せるためだけのものでもない。
ホームページに書いておくためだけのものでもない。
会社らしさは、選択の場面で使われてこそ、少しずつ意味を持ってくるのだと思います。
会社らしさは、選ぶときに試される
会社には、日々いろいろな選択があります。
どの商品をつくるのか。
どのお客様に届けるのか。
どの仕事を受けるのか。
どの投資をするのか。
どの外部専門家と組むのか。
どの技術を守るのか。
どの言葉で発信するのか。
その一つひとつの選択の中に、会社らしさが表れることがあります。
逆にいうと、会社らしさを言葉にしても、実際の選択と離れてしまうと、少しもったいない気がします。
「うちはこういう会社です」と言っていることと、実際に選んでいることがずれていると、少しずつ違和感が出てくる。
お客様にも伝わりにくくなる。
社員にも伝わりにくくなる。
商品やサービスにも一貫性が出にくくなる。
会社らしさは、言葉だけで決まるものではなく、選択によって少しずつ確かめられていくものなのかもしれません。
何をやるかより、何をやらないか
会社らしさは、「何をやるか」にも表れます。
でも、それ以上に「何をやらないか」に表れることもあるように思います。
売上になりそうだけれど、受けない仕事。
流行っているけれど、あえて手を出さない商品。
便利そうだけれど、自社のお客様には合わないサービス。
効率はよいけれど、自社の品質感とは合わないやり方。
こういう判断には、その会社の考え方が出ます。
何でもやる会社は、一見すると柔軟に見えます。
それが必要な時期もあります。
ただ、何でもやるうちに、何の会社なのかが見えにくくなることもあります。
一方で、少しずつ選んでいる会社には、輪郭が出てきます。
これはやる。
これはやらない。
ここは大事にする。
ここは無理に追わない。
その判断の積み重ねが、会社らしさを少しずつ形づくっていくのだと思います。
「うちらしくない」と言えるか
会社らしさが本当に使える言葉になっているかどうかは、「うちらしくない」と言えるかどうかにも表れる気がします。
もちろん、単なる好き嫌いではありません。
昔からこうだから変えない、という話でもない。
新しいことを避けるための言い訳でもない。
そうではなく、
自社のお客様に合っているか。
自社の強みとつながっているか。
現場が無理なく続けられるか。
将来の会社の姿と矛盾しないか。
これまで積み上げてきた価値を壊さないか。
そういう視点から、「これはうちらしい」「これは少し違う」と考える。
この判断ができるようになると、会社らしさは単なる言葉ではなく、経営の判断に使える手がかりになっていくのだと思います。
知財も、選択のあとに意味を持つ
知財も同じように考えられる場面があります。
特許を取る。
商標を出す。
デザインを守る。
ノウハウとして残す。
これらは、どれも大切な選択肢です。
ただ、何でも権利化すればよいわけではありません。
その技術を守る意味があるのか。
その名前を育てていくつもりがあるのか。
そのデザインが選ばれる理由になっているのか。
そのノウハウを社内に残す必要があるのか。
こうした判断があって、はじめて知財の使い方も少しずつ見えてきます。
知財は、会社らしさと切り離して考えるよりも、その会社が何を大事にしているのかとあわせて考えた方が、自然な使い方になりやすい。
私は、そんなふうに感じています。
選ばないことで、会社の輪郭が出る
経営では、前に進むために何かを選ぶ必要があります。
でも、選ぶということは、同時に何かを選ばないということでもあります。
全部はできません。
全部のお客様には応えられません。
全部の流行には乗れません。
全部の技術を守ることもできません。
だからこそ、自社にとって大事なものを見極める必要が出てきます。
何を残すのか。
何を育てるのか。
何を守るのか。
何をやめるのか。
何をあえて選ばないのか。
その判断の中に、会社の輪郭が少しずつ出てくるのだと思います。
会社らしさを、選択に使える形に仕立てる
会社らしさは、見つけるだけでは終わりません。
言葉にするだけでも、まだ途中です。
その言葉を、日々の選択に使える形にしていくことが大切なのだと思います。
商品開発のときに使える。
営業のときに使える。
採用のときに使える。
投資判断のときに使える。
知財を考えるときに使える。
そうなってはじめて、会社らしさは経営の中で少しずつ生きてきます。
会社らしさは、飾るものではないのだと思います。
選ぶときの手がかりになるもの。
そして、ときには、やらないことを決める手がかりにもなるもの。
何をやるか。
何をやらないか。
何を守るか。
何を育てるか。
その判断が積み重なって、会社の未来の形が少しずつ決まっていく。
私は、そこまで含めて「経営を仕立てる」ということなのだと思っています。
