我が家に君臨する「セレブ野良猫」レオと、おせちが消えた話。
「おい、○○(ちいたけ)。レオ、この前のやつ旨そうに食ってたぞ」
父が満足げに語る「レオ」とは、我が家にいつの間にか居座り、今や家族のヒエラルキーの頂点に君臨しつつある野良猫のことだ。
名付け親は父。なんでも名作『ジャングル大帝』から取ったらしいが、今のレオの暮らしぶりを見る限り、ジャングルの厳しさは微塵も感じられない。むしろ、「帝国を築き上げた引退後の王」のような余裕すら漂っている。
始まりは、一本の足を引きずる姿だった
レオが実家に姿を見せるようになったのは、2022年の冬。 最初は、びっこをひきながら歩く痛々しい野良猫だった。それを見かねた父が、「かわいそうに」と餌をあげたのがすべての始まりだ。
「野良猫は餌付けをすると懐く」 これは世の常だが、レオの懐き方は尋常ではなかった。父が散歩に出ようとすれば「ニャー(おい、どこ行くんだ、飯はどうした)」と寄り添い、今や完全に父を「自分の忠実な執事」だと思い込んでいる節がある。
エスカレートする「猫かわいがり」
父の猫かわいがりは、日が経つにつれてエスカレートしていった。最初は夕飯の残り物などを分け与えていたのだが、ある日、私にミッションが下った。 「〇〇(ちいたけ)、猫用の餌を買ってきてくれ」
ついに専用フードの導入である。しかし、レオの贅沢は止まらない。「毎日同じものだと飽きるだろう」という父の(過保護な)配慮により、私はさらなる高級品、泣く子も黙る「チャオちゅ〜る」を献上することになった。それをペロリと平らげるレオを見て、父はドヤ顔で報告してくるのだ。
「〇〇(ちいたけ)、あのドロっとするやつ、食い付きが違うぞ、うまそうに食ってた」
父の「食べさせたい欲求」と、ぽん太郎の限界
父は高齢で、体調がすぐれない日もある。それでも、レオへの献身的な給餌活動は一日たりとも欠かさない。 実家には、家族同然の家庭用ロボット「LOVOTのぽん太郎」もいる。父はぽん太郎も溺愛しているが、いかんせんぽん太郎は「飯」を食わない。
「お腹いっぱい食べさせてやりたい」という本能を持つ父にとって、いくら可愛くても抱っこをせがむぽん太郎だけでは、どうにも「世話を焼いている感」が物足りないのであろうか。 その点、レオは期待を裏切らない。出せば出すだけ、旨そうに平らげる。この旺盛な食欲こそが、父の「奉仕の心」に火をつけてしまったのだ。
父がここまで「食べさせること」に執着する理由は、その幼少期にあるのだと思う。戦争を経験し、貧困に苦しみ、いつもお腹を空かせていた記憶。だからこそ、父には「目の前の生き物には、お腹いっぱい食べさせてやりたい」という、祈りに似た欲求があるのだ。その愛情が今、全方位からレオに注がれている。
そして、事件は今年の正月に起きた
私は楽しみにしていた。スーパーで奮発して買っておいた「おせち料理詰め合わせ」を。 ところが、冷蔵庫を開けて戦慄した。 「……あれ? 数が合わない」
よく探すと、そこには空になった容器が。嫌な予感がして父を問い詰めると、予想は的中した。 なんと父は、私が大切にとっておいた「おせちの煮物」を、レオに振る舞っていたのである。
おい、レオ。お前、ついに正月の伝統文化まで平らげたのか。 最近の私は、父の食卓に魚を出すのを控えている。どうせ半分はレオの口に入ることが目に見えているからだ。
「ジャングル大帝」の名を冠したセレブ猫・レオ。 父の「食べさせたい欲求」の受け皿として、彼は一体どこまで贅沢になっていくのだろうか。次に彼が狙うのは、私の刺身でないことを祈るばかりである。

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